ふと意識が浮上する。
目を開けるとそこにはすべすべの肌が広がっており、頭上からはすぅすぅと安らかな寝息が聞こえる。
温かいそこからそぅ、と抜け出し起き上がれば下からむずがるような音がした。
起きてしまったか。
動かずじっと見つめること暫し。
(良かった、まだ寝てるね)
少し体勢を変えただけですぐに夢の中へ帰っていくキバナくんにほっと胸を撫で下ろした。
起こさないようゆっくりゆっくりベッドを降りれば目的はすぐそこにある。
(……やっぱりおおきいなぁ)
床に脱ぎ捨てられたままのキバナくんのパーカー。一度でいいから袖を通してみたくて、でも本人の前ではどうにも恥ずかしくてずっと機会を狙っていた。
それが今日ようやく叶う。
思った通りぼくの手の先まですっぽり覆って見えないし、肩の位置も全然違う。それなのに裾(もはやお尻)のところや胸のところはパツパツで。
(こんなに違うんだ……)
陽が昇始の薄暗い鏡の前で改めて見てみると思った以上に体格差が際立っていた。
まるで服に着られている子どものようで笑えてきてしまう。
声を漏らさないよう咄嗟に袖を口元にあてると嗅ぎ慣れた匂いが鼻を掠めた。
(キバナくんの匂いがする……)
ふわりと香る彼の香水と体臭が混じった匂い。その瞬間、昨晩のことが一気に脳裏を駆け巡った。
(ぼくは朝からなんてことを……っ!)
顔が火照る。耳が熱い。ノドが乾く。
理性と裏腹に奥のほうが勝手に期待をしてしまう。
あっという間に羞恥が込み上げてきて早く脱ごうとパーカーに手をかけた。
「かーぶさん♡」
甘さが多分に出ている声に名を呼ばれ、脱ぎかけた手がピタリと止まる。
「き、キバナくん。おはよう、起こしてしまったかい?」
ぎこちなく振り返れば満面の笑みを浮かべたキバナくんの姿。どうしよう、見られちゃった。自分で着たけどすごく恥ずかしい……!
「おはよカブさん。あんまり可愛いことしてるから起きちゃった♡」
「え」
「だって寝起きにオレのパーカー着てるなんて可愛すぎるでしょ。最高の目覚ましっつーか目の保養っつーか」
言いながら立ち上がりこちらへ歩いてくるキバナくんのおちん……いやもう1人のキバナくんはもう臨戦態勢で。
「き、キバナくん……?もう脱いじゃいたいのだけど……」
「えー?こんなに可愛いカブさんに朝からサービスしてもらっちゃったから。オレもカブさんにお返ししたいなー」
「い、いいよ!結構です!」
逃げる背中はいつの間にか壁に追いやられて逃げられない。
そんなぼくをキバナくんの両手が逃がさないと言わんばかりに顔の横を塞いでしまう。
あれ、これって確か壁ドンとかいうやつじゃ。
「そんな遠慮しないで!昨日よりももっと愛し合いましょうね♡♡」
パーカーは着たままでえっちしーましょ♡
にっこりとそれはそれは綺麗な笑顔で宣うキバナくんは、とても楽しそうにターコイズを細めてぼくを見下ろした。
昨日あれだけシたのにとか、今日は一日ベッドの中かと呆れたものの。
キバナくんを独り占め出来ることに期待と悦びがぼくの中でごぽりと溢れたのだった。
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彼パーカーとはかくありき
初公開日: 2022年04月28日
最終更新日: 2022年04月28日
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