現パロシャーウィリ
大学も研究室に入ると色々と時間が取れなくなるとは聞いていたが、シャーロックは科学実験が趣味であるため理系の学部に進んでいたこともあり研究が大詰めになると数日間実験室に籠る事も珍しくないと言った状況になった。
今回も泊まり込む事三日、その間に愛しい恋人に連絡はしていたものの会う事はかなわず。
なんとか実験を終えて帰宅する時に家に帰ると連絡を入れたが、もはや三徹していたシャーロックにはそれが何時であったか、や誤字脱字があったかどうかなどは確認している余力は無かった。
這う這うの体で帰宅しコンビニで適当に買ったおにぎりを詰め込んで、三日間お風呂に入る事もかなわなかった体をさっぱりと洗い上げると長い髪を乾かす気力もなくバスタオルごとベッドに倒れ込んだ。
そのまま気を失うように眠りについてどれくらいの時間が経っただろう。
玄関の鍵が静かに回されて、扉がそっと開いた。
寒々しい外気と共に音もなく入って来た人影はベッドに倒れているシャーロックを見ると微笑んだ。
もこもことしたアウターに帽子に手袋と完全防備でありながら僅かに覗く金色の髪と暗闇の中でも輝く緋色の瞳。
シャーロックの恋人であるウィリアムは数日ぶりに実験から解放されたシャーロックが家に帰ると連絡をしてから10時間近く経っても連絡用ツールに既読の文字もつかない事から心配して家までやって来たのだ。
案の定、まだ夢の中に居る彼はスウェット姿で布団の上に倒れていて、途中で寒くなって無意識に布団を体に巻き付けたのだろう。
ミノムシのようにベッドの端で丸まっていた。
端に湿気たままのバスタオルが団子になっている事や髪の毛がいつも以上にぼさぼさな事から髪を乾かす余裕もなく力尽きたのだろうと予想してその絡まった長い髪を優しく撫でた。
「お疲れ様、シャーリー」
生まれ変わる前であれば寝落ちをするのはウィリアムの方ばかりだったが、この平和な現世では寝落ちするほど脳を酷使することはほとんどない。
昏々と眠るシャーロックが恐らく夜中のへんな時間に起きるだろうと予想して、まずは帰って来た時のまま放り出された鞄や食べたもののごみ箱に入れる気力もなかったと思われるコンビニのごみを片付ける。
コートなどの防寒具はハンガーを拝借してかけさせてもらう、今日はオーバーサイズの白いニットにスキニージーンズと言ったシンプルな格好だがシャーロックはウィリアムが少しオーバーサイズな物を着ていると興奮する性質らしく彼の家に来るときはなるべくそういった服装を選ぶようにしている。
簡単に片づけをしてから数日家を空けていたのだから冷蔵庫にはろくなものが入っていないだろうと開けてみるが案の定、エナジードリンクとウィリアムが持ち込んだ調味料の数々、そして3個で100円のうどん玉が賞味期限を2日過ぎた状態で虚しく鎮座していた。
ウィリアムの実家は兄が経営する会社が軌道に乗っている事もあり裕福だが、前世の記憶もあり食べられる物班でも食べる主義であるため2日過ぎた賞味期限など気にもならない。
メインにうどんを使おうと決めて買い物袋揶揄って来たばかりの野菜や卵を大きくはない冷蔵庫に入れていった。
シャーロックが済むのは1R築20年のどこにでもある小さな単身者用マンションで、彼の実家を考えればウィリアムのように綺麗なマンションに暮らすことも十分可能だと思うが、兄に対して複雑な思いを持つ彼は自分の稼いだお金で一人暮らしするのだという強い意志の元、得意の頭脳を用いた資金回しで肉体労働を伴わない小遣い稼ぎをして生活をしている。
本気を出せば自分の稼いだお金で超高級マンションに住むことも可能なほどの利益を出せるだろう勘や嗅覚を持っているのにあくまでも日常生活をするのに支障がない程度の収入で満足しているあたりが欲が無いと思う。
あくまでも一人暮らしをするための資金繰りであって贅沢をするのが目的ではないときっぱりと言い放っていた彼らしい。
ちなみに肉体労働を伴わない資金繰りをしているのは彼自身が自分にサービス業などに従事するセンスが無いと自認しているからに他ならないが、ウィリアムは正直おしゃれなカフェや居酒屋で彼が働いてしまうと多くの人が彼の魅力に気づいてしまうため現在の環境に非常に満足している。
ちなみにウィリアムの方も大学生になったのだからとバイトをしようと考えたのだが過保護な兄弟達やシャーロックに止められたため、こちらは小学生相手の家庭教師やオンラインでの数学講師をしている。
それもシャーロックははじめいい顔をしなかったが、数学を教えている時のウィリアムの生き生きとした顔に認めざるを得なくなったというのが本当の所だ。
ウィリアムがオンラインの塾講師をする事で兄弟たちは一人暮らしをするならばセキュリティの高いマンション、それもモリアーティ家の所有するものでないと認めないと条件を出した。バイトか住居かを天秤にかけてウィリアムは高級マンションに住むことを承諾した。
シャーロックからすれば兄弟の心配も最もで、ウィリアムがしっかりとしたセキュリティの家に居る事が安心でもある。
その分、自分の家に遊びに来るときは必ずシャーロックが居る時間にする事、との念押しが入るが。
ウィリアムのような美しい人がこんな無防備なマンションに一人で入っていくところを見られて、万が一の事でもあったらと必死の形相で言い募ったシャーロックにウィリアムは若干引いていたが、彼がそれで安心するなら、と大人しく約束を守っている。
今日もその約束を守ってシャーロックが家に居ると解っていたから足を運んだのだ。
点々と床に落ちている洗濯物を拾って洗濯機に入れていく、洗濯機を回そうか悩んだが恐らくシャーロックが起きればまた洗濯物が出るような事をするのだし、と一先ずはベッドの隅で丸まっているバスタオルを洗濯機に放り込むにとどめた。
ウィリアムがこの家に通うようになってキッチンにものが増えた。
電気鍋は買ったものの中でも上位を占める使用頻度で、今日もまた買ってきた野菜をザクザクと切っては電気鍋に放り込みだしパックと醤油とみりんを入れた味付けでコトコトと煮込む。
うどんはシャーロックが起きてから入れる事として、あとは卵とお椀と、お箸。
何時でも食べられるように準備だけすると、気配に気づいたのか流石に睡眠欲が補われたのかシャーロックがもぞもぞと寝返りをうつ。
「シャーリー?」
自分でも驚くほどに甘い声が出た。
「うぅん……」
三日間に及ぶ徹夜からくる疲労は10時間程度の睡眠では払拭されないのか、彼は向きを変えるとまた寝入ってしまった。
少し寂しさを感じてシャーロックの包まる布団を撫でる。
「シャーリー、起きないと悪戯しちゃうよ?」
布団を少し捲れば濃い彼の匂いが暖かい空気と共に溢れてくる。
数日間会えなかった恋人の香りにウィリアムの下腹がキュンと切なくなった。
「んっ……起きないシャーリーが悪いんだからね」
軽く唇を舐めてウィリアムの手が自分のパンツのボタンにかかる。
風邪をひかないように、と部屋の暖房をONにしてウィリアムはシャーロックの布団の中に潜り込んだ。
電気鍋に再び火が入るのは数時間後になりそうだ。
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白にっと
初公開日: 2022年01月24日
最終更新日: 2022年01月24日
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白にっとでシャーロックを誘惑するウィの話の健全な部分まで