「先生、本を投げるのは良くないぜ。レプリカとはいえ、うるさい奴らはごまんといんだからよ。エキケンとか」
「彼は何に対しても小言が多い男でしょう。今更気にする程ではありません」
何処吹く風で先生が言うと、シンサクはがっくりと肩を落とした。無造作に伸ばしたのを雑に一括りにしている丸眼鏡の男と短い髪をオシャレに整えて香水までつけている男という、まるで真反対の二人だが、どうやら力関係は見目と違い先生の方がよほど強いらしい。先生と呼ばれる程はあるという事だろうかとゲンは考えた。
「でもよ、イチコの教育にだって悪いだろうが」
「イチコは教えるまでもなく本を投げませんが?」
「うん……本投げるの、悪い事だよ」
「ご覧なさい」と先生が自信満々な顔をしたのもつかの間、イチコは言葉を続けた。
「だから……先生、ダメだよ?」
イチコに言われた先生は、暫く口を噤んでイチコの事を見つめたが、イチコも同じように口をへの字に曲げて譲らない姿勢を見て、降参の両手を挙げた。
「……次からは招き猫でも投げますよ」
「それ俺が死ぬだろうが!?」
「ブルくんなら、痛くないから良いよ?」
「そういう問題じゃねぇだろ!そもそも物は投げんなって話で……あーゲン、お前がなんとか言え!」
「えっ」
突然話を振られたゲンは生来の人付き合いの不器用さゆえに口をまごつかせる事しか出来なかったが、イチコに「見て!」と微笑まれて、やっと自然に笑みを返した。
「ブルくん!ブルックリンって名前なんだけど、シンサクがブルくんって呼び出してからはブルくんなんだ」
「へぇ!かわ……可愛い……?可愛い……可愛い……!!」
イチコが抱いているものは、何故かアメリカの地名が冠されたもぐらのようなツチノコのような見た目をしている微妙な可愛さのぬいぐるみであったが、ゲンはなんとか可愛いと言い切った。
「でしょ?私が初めて作ったぬいぐるみなの」
「へー、上手だね」
ゲンの髪が異様に長いポニーテールとはいえ、中学生くらいの背丈の男女が仲睦まじく話す光景を見て、シンサクは震えながら叫んだ。
「お前もマイペースちゃんかよゲンン!!!!」
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サイバー源平合戦2.5話
初公開日: 2021年12月11日
最終更新日: 2021年12月11日
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コメント
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これの幕間。息抜き的な書き物なのでいつもよりは文章量落ちます。