ジンペイがモノレールを降りると、ちょうど向こうからラントが歩いてくるところだった。
「あれ? 会長珍しい、もう帰り?」
ラントの右手に学生鞄を認めて首を傾げるジンペイ。
「ああ、宿舎のボイラーが故障したらしい。給湯器機が使えないので、今日は銭湯だ。遅くなると、風呂に入りそびれるのでな」
そう言うお前は、どうしてここに? と、ラントの目が訴えている。ジンペイは満面の笑みを浮かべてこう答える。
「じゃあ俺も一緒に行く! 会長に会いに来るタイミングバッチリだったな!」
「昔の歌でこういうのあるよな。二人で銭湯に行く歌!」
現地集合にしよう、と提案したラントに対して「迎えに行く!」と答えたジンペイと並んで歩く夕暮れの道。
「銭湯に行く部分は主題では無いと思うが……」
ラントは苦笑する。赤い手拭いをマフラー代わりにする程寒い時期でもないし、ボディソープのボトルがカタカタ言うことも無いけれど。こんな時間に、こんな風に二人連れ立って歩くことは新鮮で。
「そうなの? 風呂屋に行くってとこしか知らない。あ、ねえ、会長の石鹸使っていい?」
「別にかまわないが?」
随分身軽だったからそんな事だろうとは思っていた。理由も聞かない。大方最初から借りるつもりだったのだろう。その程度にラントは思っていたのだが。
「へへっ、今日は会長の匂いで眠れる!」
ラントはキョトンと目を丸くする。
まさに銭湯の目の前に着いたところだった。
「お前……そういう……っ」
何を言い出すのだと呆れて睨みつけるラント。
「あー! 会長、エッチな想像しただろ!? 俺はただ純粋にさぁ……っ、あー……もう……っ」
ジンペイは見る見る頬を赤らめて頭をかきむしる。
「そーいうつもりじゃなかったのに、そんな顔されたら、おかずにするからなっ!?」
ラントはしばし絶句してから「馬鹿」と小さく呟いた。
翌日、二人が同じ匂いをまとっていることを目ざとくフブキに咎められるが、二人口をつぐむばかりだった。
(終)