第6回のお題は「見蕩れる」
 イデアさんとの対戦は、何をしても脳内がフル回転だ。部活の時間を全て使って全力で戦って。終われば心地良い疲労を感じる。少しぼう、とする頭を休めつつ、部活動の最後にするのは片づけだ。今日はチェスの日だったので、丁寧に自分の駒を磨いて仕舞っていく。さすがNRCと言うべきか、ボードゲーム部にあるゲームの類も高価なものが混ざっていたりする。プレミア、という意味でも多いが、このチェスは単純に高価だ。職人の手作りの一品かと察せられる丁寧な仕上がり。皆がそんなことを気にせずに扱うことに、最初は頭がくらりとしたものだ。何とか価値を説いて、今ではある程度丁寧に扱ってくれている。
 そんなことをぼんやり思いながら、駒を磨く手元越しに、本日の勝者に目を向けた。縦に長い体躯を器用に折り曲げて、すらりと長い指先で駒を持ってさらっと拭いてケースへ戻す。一連の所作は特別何かあるわけではない、普通の行動だ。なのに毎度、目を惹かれる。彼が負けた日は機嫌が悪そうなので、あんまり見詰めるとバレそうで避けるのだけれど、彼が勝った日はこうして、少し眺めている。
 負けるのは悔しいが、この時間は好きだ。少し俯いた顔に独特の髪がかかるのも良い。美しいものは美しいと認めて、味わうべきだと思うから、これは疚しいことなどなにもない――はず。
 窓から差す夕陽が彼と反対の色で盤面と指先を照らす。するりと、また一つ、駒を持ち上げる指先。無意識に追えば、ぱちり、瞬きする瞳とぶつかった。
 頭に疑問符を浮かべる彼に違和感を覚えさせないように、自分の駒を持ち上げて、磨く。
「次は勝ちますから」
勝算があるかのように微笑んで、思考に集中しているように手元を見詰める。焦りなんて微塵も見せてはいけない。勝負は始まったばかりなのだ。
 今日はここまでにして単純作業に集中する。下校を示す鐘はもう目の前だから。
タイトル:「My secret war」
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イデアズワンライする
初公開日: 2021年09月19日
最終更新日: 2021年09月19日
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ワンライします。第6回のお題は「見蕩れる」
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