「ジンペイくんって、ラントくんと付き合っているんでしょう? お休みの日とか、何してるの?」
 放課後のFSTの時間だった。YSPクラブの部室。何気ない姫川フブキの質問に、小間や玉田と談笑していた寺刃ジンペイは顔を向ける。
「『何』って、別に……会長は本読んだりしてるし、俺はゲームしたり……?」
 取り立てて特別な事でも無い様子で素直に答える。
 ここY学園では同性のカップルもごく普通に誕生し日常的に見聞きする存在だから、そこに偏見を向ける対象でも無いのだが、姫川からすれば「あのジンペイくんが、あの生徒会長と」というところは興味深いものがあるらしい。
「一緒にどこか、行ったりしないの? ちょっとおしゃれなカフェでデートとか」
 すっかり身を乗り出して食いついている姫川に、小間たちは気まずげな苦笑いを浮かべている。
「そりゃたまにはどこか遊びに行くこともあるけど、特にどこって事も……あ、この前ベロンの新作食玩買いにヨロズマートに一緒に行ったな!」
 ニコっと満面の笑みで応える寺刃。反して姫川の表情は不平に満ち溢れている。
「そういうのじゃなくて! そうじゃなくてこう……二人じゃないとできないような特別なこと、なにかあるでしょ?」
 バンと机上を叩きいささか興奮気味に問い詰める。寺刃はうーんと両手を上げて伸びをすると、そのまま頭の後ろで両手を組んで姫川を見た。
「逆にさ、付き合ってたら会うたび特別なことしなくちゃいけないわけ? それって理由が無いと会えないって事だろ? そんなの、窮屈じゃん」
 姫川の問い掛けに、苛立ちだとかそういった感情を抱くでもなく、ただ純粋に思うまま。それには姫川も言い返す言葉もなくグッと息を詰まらせる。
「何てこと……。ジンペイくんにしては気の利いた答えだわ……」
 それこそ「想定外」とでも言いたげに、得心した様子で姫川は身を引く。
「え⁈ 何でだよ。フブキ、お前俺の事バカだと思ってるだろう?」
 ここに来てようやく心外だと言わんばかりに眉を顰める寺刃。
「そうは言ってないわよ。年相応の子供だとは思うけど」
 不穏な空気に、それまで黙って成り行きを見守っていた小間と玉田が割って入る。
「まあまあ、あ、ほら、そろそろ下校時間だよ?」
「ジンペイくん、ラントくんと約束あるって言ってなかった?」
 それを聞くや否や、寺刃は弾かれたように部室の出入口へと身を躍らせる。
「忘れてた! コマくん、ありがと! じゃあまたな!」
 賑やかな声は引き戸が閉まるのと同時に遠ざかって行く。
(あんまり余計な事しゃべると、会長怒るかな)
 まあいいか、黙ってれば。そんな事を考えながら足を進める。
 話の流れで口を滑らせ結局怒られる羽目になる未来まであとわずか。
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[ジラ]休日
初公開日: 2021年09月04日
最終更新日: 2021年09月04日
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