オクラの下処理をする綺羅くんのシーンから。ちくちくの毛が生えているオクラのがくをていねいに包丁で取っていくなんかいい感じの書き出しがあるといいな。
おおぶりのオクラが手に入って、それを夕飯の菜にしようと包丁でがくを取っている。
だし浸しにする。
「うわ、なんや綺羅ちゃん、ここにおったん」
ラウンジの電気消えとったからワイひとりかと思ったわあ、とヴァンがダイニングのドアを後ろ手に閉めて入ってきた。
反対の手にはスマートフォンがあって、急いで画面をタップするとそれをジーンズの尻ポケット(でいいのか?)にしまうところが見える。直感的に、誰かに電話をかけるところなのだろうなと思った。それを俺がいるところではできないということも。
すぐに次のオクラを手に取ったつもりだったが、おそらくヴァンのスマートフォンを持つ手元に視線をやったことを気づかれている。
「何?」
いつも通りの気さくで人好きのする顔だった。
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この男の秘密を知っていた。
秘密と呼ぶほどのことではないかもしれないし、俺だけが知ることでも、ヴァンが隠したいと思っているわけでもないかもしれないが、確かにあのとき取り繕ったのだと俺は思っている。
忘れ物をして帰ってきた綺羅がラウンジで電話しているヴァンの声を聞く。んーーーーー
ドアを開けて入ったら、ヴァンはビリヤードテーブルに寄りかかって電話をしていた。ちらりとだけ視線をやると、白いキュー・ボールを手で弄んでいる。
俺に気づいたヴァンがなんかうまいかんじにごまかすのを聞きながら階段を上がっていくときに、
ともすれば、ヴァンの持つキュー・ボールが勢いよく投げられて、大きな窓がとんでもない音を立てて割れるところを想像する。
自室に入ったとき、まだびりびりとからだが
充電したままだったタブレット端末をトートに入れ、ラウンジに戻るとすでにヴァンはいなかった。
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「手伝おか?」
「これで終わりだから、いい」
「そう?」
じゃあワイ、今から仕事やねん。今夜遅なるてえーちゃんに言うといて。
「わかった」
出て行くヴァンの後ろ姿みたいな感じ。
ジーンズのポケットに入っているのがいつものスマートフォンではないのを見てから、ぼこぼこと沸騰する鍋におくらをざっと入れた。