じっとりと汗の滲んだ腕が、日射しに焼かれて痛いくらいの快晴だった。それなのに後藤は、棒アイスを囓りながら、蟻を追いかけて日向へ出て行く。後藤とは同じクラスになってからの付き合いなのでまだ四ヶ月程度しか一緒にいないが、その単純な行動パターンはだいたい把握できていた。
 後藤と揃いの棒アイスを囓りつつ、私も後を追う。蟻なんか追いかけて何が楽しいのかわからない。私の存在を確認するようにちょっと振り向いた彼女は、満足そうに笑っていた。
「見てよ、蝉が死んでる」
 ご満悦の理由はこれだ。先週、服に飛んできた蝉のせいで大騒ぎをしてしまい、後藤に散々笑われた。笑いながらも、夏服にしがみついた蝉を取り去ってくれたことには優しさを感じたのに、わざわざそれを持って追いかけてこようとするのは、まあ、後藤だから仕方が無いのかもしれない。
 きっと後藤は、蟻にたかられた死んだ蝉にだって躊躇無く手を伸ばすだろう。そうして人に嫌がられるものを手に入れたら、騒がれるのが嬉しくて欲望のままに振る舞うのだろう。
 やってられないな、とも思うが、わざわざタイミングを合わせてまで一緒に下校しているのは私なので、後藤だけを責めるわけにはいくまい。
 後藤が地面に腕を伸ばした。私は棒に残ったアイスを急いで口に入れた。後藤が脚を伸ばして立ち上がろうとするので、盗塁を目論むランナーのように数歩離れた。私の足音に反応して後藤が振り向く。その笑顔を見たとき、こめかみで粒になっていた汗が一筋流れた。
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