ある日、こんな夢を見た。
 夢を見た当時高校生だった私は、何故か小学校にいて、6年生の教室の隅で昼食をとっていた。
 いじめられていたわけではなく、二人の友達と共に机を自発的に端に動かして食べていた。そして、何らかの作戦会議をしていた。
「信じたくないけど……」
「Mちゃんが、カミサマ……」
「さっき見たけど間違いないよ、しっぽが生えていたから」
何故しっぽがあるとカミサマなのか、そもそもカミサマとは何なのか……今となっては分からない。
 私が携帯を手に取った、次の瞬間だった。
私たちのすぐそばに、小学校時代の同級生M……いや、カミサマが現れた。
「あっ、M!」
「M、カミサマだったんだね……!」
私たちがそう言うと、彼女は笑って答えた。
「そう、大正解!プレゼントとして……みんなの携帯から、赤いレーザービームが出てくるよ!」
「えええっ!」
怪しい笑顔を浮かべながら、両手を広げる彼女。私の手の中の携帯が震えた。
 思わずそれを投げ飛ばす。彼女の足元に落ちるが、彼女は笑みを絶やさない。携帯の画面では、見たことの無いデザインのカウントダウンタイマーがスタートしていた。
「こ、これで大丈夫かな……」
左隣に座っている友達、Yが呟く。携帯の画面は赤く光り始めている。Mの言うことが本当ならば、画面の前にいなければ大丈夫なはずだが……
「いや、逃げた方がいい!」
私はそう判断して、教室を飛び出した。教室の中で駄弁っていた女子数名も後に続くのが足音で分かった。
 私が入ったのは隣の教室だった。5年生の時にお世話になった部屋。生徒たちの多くは6年生の教室のある側の壁から距離をとり、そこを眺めていた。いつの間にか警報音がなり始めていて、警報音が苦手な私の心拍数を上げていく。誰かが非常ベルでも鳴らしたのか、電気の色さえも赤くなり点滅している。6年生の部屋に異常が起こったのは誰が見ても明らかだった。
「ここにいたら大丈夫かな……?」
気がつくと、友達の1人であるEが私の右隣に立っていた。6年生の部屋で向かいに座っていたRも見える位置にいる。Yはどこにいるのだろうか。
 Eが更に壁から離れる。私もそれにつられて下がっていく。5年生の教室の隅、壁から最も遠い場所に背中がついた。
__あと10秒。
 私は、大爆発が起きる可能性があることを悟った。Mの言っていることを信じてもいいとは、到底思えなかった。
 私の名を呼ぶEを置いて、教室から再度飛び出した。とにかくここから離れなければ。すぐ近くの階段を降りる時間も惜しくて、手すりを乗り越えて飛び降りた。両足で着地し、また乗り越えて飛び降りる。手すりの上に乗った時、Rが階段を駆け下りて行くのが見えた。Rだけではない。2つの教室にいた人々が私と同様に勘づいて逃げていく。ただならぬ空気を感じて、下級生も教室を出ていくのが分かった。
 避難の鉄則を完全に無視して、3階から1階まで降りてきた。『押さない・走らない・しゃべらない』というが、生き残るためには走らなければいけないということだってある。今、この時がそうだ。……後から考えてみれば、手すりを使って飛び降りてはいけないというルールはなかったはずだ。
 自転車の鍵を握りしめながら走り、正門の前に止めてあるピンクの自転車に飛び乗った。鍵の解除は素早くできた。背後で響いた爆発音に急かされて、振り返る間もなく踏み込んだ。
 この辺りの地域は傾いているから、南に進むのが最も楽で早い。その時はそんな事を考えていなかったが、私は南を選択した。走って逃げる人々を追い越して、止まっている車も抜かして、次々と道を渡って逃げていった。途中の信号は無視した。東西方向を走っている車はいなかった。その直後、私の先を自転車で行くRが叫んだ。
「もっと遠くに!この爆弾、2kmぐらい逃げないと巻き込まれる!」
「2km!?」
後からすれば2kmなんて携帯だけでは無理なのだが……とにかく私はそれを信じて、ひたすら南に進んでいった。
 最寄り駅よりも1駅南にある駅のあるあたりまでたどり着いた。私の勘ではまだ2km走っていない。そうRに告げるが、私たちはかなり疲れ切っていた。それでも逃げないと死んでしまう。もう一度自転車をこごうとした時。
「Aちゃーん!」
遠くから、私の名が呼ばれた。見知った声。道路の方をちらりと見ると、私の親戚(という設定)の人が車から顔を出していた。
「無事でよかった!僕の家は2km離れてるから、乗りなよ!」
大きく頷いて、自転車を置いてドアを開ける。Rからすれば知らない人に着いていくという状況だが、私の親戚だと述べればすぐに車に乗り込んだ。シートベルトを閉めるのも待たず、車は走り出した。後ろは振り返らなかった。それは、とても怖かったから。助手席に座る(私の親戚という設定の)女性はとても優しくしてくれた。そして、この日は爆心地から4km以上離れた彼女たちの家に泊まるということになった。家に帰るのは危険な上に、恐らく電車も止まっているのでRは帰る手段がない。高校生とはいえ、大人と一緒にいる方が安心感を得られるのは事実なので、私たちは断らなかった。
 私は以前に泊まったことがある(ということになっている)ので、すぐに寝室にたどり着き、我が家のようにくつろいだ。既に日は落ちていて、私たちは疲れきっていたため、かなり早く眠りについた。
 目を覚ますと、私たちは冷静になっていた。結局どのあたりまで巻き込まれたのだろうかと話し合う私たちの脳裏には、教室に残していったYとEの顔が浮かんでいた。途中で振り返ったというRの声は暗い。それらしき人物は見かけなかった、という彼女の証言からして、もう……
 朝食の後、私とRは車に乗って北上した。どこまでやられてしまったのかをこの目で確かめるために。運が良ければ自転車を回収できそうだ、とも考えていた。
 車はすぐに止まった。私たちは車を降りて、数分歩く。
 目の前には、灰と瓦礫になった街が広がっていた。何も言えず、それでいて私は冷静だった。ただ1つ分かったこと、それは、
YとEは、死んでしまった。
 その直後に思いついた、家はどうなったかなどの心配事。それらが私を現実に引き戻した。
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向き
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ある日の夢
初公開日: 2021年04月30日
最終更新日: 2021年04月30日
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コメント
あまりにも強烈だった夢をノベライズ。公開のお試しも兼ねて。所詮夢なので意味が分からないかも。あの文学作品を思い出したのは書き終えたあとです。
クエスト受注
面白そうなので参加してみた。以前に書いた短いやつの続きです。
企画
ミナ
お試しとか色々兼ねて。
企画お試しも兼ねて、ワンライに挑戦。時間が余ったけれど、限界でした。
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6月28日ジェイリドオンリー『ブレンドティーは恋の好機』の新刊になりたい話の執筆RTAです。 これよ…
きさ