寮では食事が出るので任務がない日はそこを利用する。いつも傑と揃って食堂へ向かうのだが、いつまで経っても傑が部屋にこない。もしかして寝てんのかも、と悟は部屋を出た。
何部屋か離れたところが傑の部屋で、小窓からは明かりも見えていた。
「なんだ、いんじゃん」
ノックをしないと怒られるのでコンコンと木製のドアを叩く。返事はなかった。もう一度叩いてもそれは変わらなかった。空腹なこともありイラッとしてしまう。ノブを回すと鍵が開いていた。うっわ不用心。
「すぐるー、ってあれいねぇじゃん」
もぬけの殻だった。先に行かれたのか?と思ったが傑に限ってそういうことはないだろう。ポケットから携帯を取り出し電話を掛ける。プーっと鳴ったあと知らない女の人の声がした。
部屋を出ながら今度はメール画面を開き「どこ」とだけ打ち込んで送った。共同のトイレに入ったとき、探していた傑が鏡の前に立っていた。人が入ってきたことに気づいたのかバッとこちらに顔を向ける。顔でも洗っていたのかタオルを持っていた。
「なに、うんこでもしてた?」
「いや…」
「?」
何やら歯切れが悪い。タオルで覆ったせいで声も聞こえにくい。悟が近づくと何故か後ろに下がった。避けられているように思えてしまう。
「飯行かねーの?」
「…先行ってていいよ」
私はあとで行く、と続けた。せっかく落ち合ったのだから一緒に行けばいいのに意味がわからない。
「行こーぜ」
「ちょ、」
腕を引っ張ると、ぱたたっとなにか落ちた音がした。見るとそれは赤くて、出処を見る。
「鼻血?」
「…見るな」
両方の鼻から血がダラダラ出ていた。余程のことがない限りここまで出ることはないだろう。昨日まで任務続きだったが今日は特になかったはずだが。
「なんかあった?」
「ぶつけた、だけだから気にしないでくれ」
「なんで?」
「寝ぼけてたんだ…そしたら柱に思い切りぶつかった。それだけで恥ずかしいのに鼻血が止まらなくなった。さっきまで廊下拭いてたんだけど、それでもまだ止まらないから鏡見にきた」
「はーなるほどな。医務室行こうぜ」
そう提案すると傑は渋った。
「恥ずかしいんだけど」
「寝ぼけて鼻血ブーしてるから?」
「全部言うな」
「でもそれ結構やばくね?タオル真っ赤じゃん」
「うん、気分も悪くなってきた」
確かに顔色もいつもより悪かった。
「付いてってやるから早く止めてもらおうぜ。俺もう腹減りすぎて死ぬ」
「…うん」