じりじりと日差しが照らす。
そのせいで体のどこからも汗が噴き出した。
今私は、学校のプールにいる。
ただ一人ではない、私のほかにもう一人いる。
それは偶然私と一緒にいたら親しみやすい体育の男性教師に運悪く捕まってしまったクラスメイトの彼である。
可哀想に、放課後に忘れ物取りに来ただけだったのにね。
さっき言った通り私たちは学校のプールにいる。
もう梅雨が明けて何日か経った。
本来ならば体育委員がやることなのにこの馬鹿教師は頼むのを忘れてしまったらしい。
そこで偶然学校にいた私たちに仕事を押し付けてきたらしい。
許さないぞ......私たちはこのあと二人で寄り道してアイスを食べようと思っていたのに。
成績上げてやる、の言葉になぜ私はつられてしまったのだろう。
彼の方は成績なんてとっくに優秀なのだろうに。
「そっちはどう?私全然終わらなそうなんだけど。」
「こっちもまだまだ。終わる気がしないよ。」
お互いワイシャツの所々が濡れている。
彼に関しては長いズボンを捲って濡れないようにしている。
普段体育でも見ることのない足が濡れている。
その光景に私は見慣れなくて息をのむ。
私はスカートをもとから折っているので濡れる心配もないのだけれど。
デッキブラシを投げ出して一度プールサイドに上がる。
立つのもめんどくさくて縁に腰掛ければ濡れるよ、だなんていわれた。
別に気にしない。
それで特に困ることもないし。
彼の方は半分諦めたような顔ではぁ、と言っていたけど無視した。
彼はまじめなようでせっせと仕事をしている。
偉いなぁ、あいつは。
私もちょっと休憩してからまたやろうとデッキブラシを手に取る。
ちょっぴりぬめぬめとする感覚が気持ち悪い。
さっさと終わらせてしまおうと擦る手を速めた。
「ほら、手伝うから。さっさと終わらせちゃお。」
半分こ、と言っていたのに自分の持ち場が終わったらしい彼はこちらの手伝いまでしてくれるらしい。
ありがたい限りである。
まあ、そこから掃除が終わるまでは早いもので。
あっという間に綺麗になったプールの真ん中で背伸びをする。
先程まであったぬめりはなくなり、足元にはホースから流している水がある。
冷たくて心地のいいものだ。
ちゃぷちゃぷと足踏みをしていればこちらにむかって水をかけてくる輩がいた。
「あっ、いま私に水かけたでしょ!!」
「しーらない!まっ、だからって仕返ししなくてもいいじゃん!」
「おらホースの水でぬれろ!!!」
ホースの出口を塞いで狭くすれば広い範囲に水がばらまかれる。
だんだんと彼が濡れていくが、私もちょっと濡れていた。
逃げるようにプールサイドへ向かい、蛇口を絞められたことで私たちのじゃれあいは終わってしまった。
近くにある排水溝はごぼごぼと音を立てながら水を吸い込んでいる。
ちぇーと言いながら自分もプールサイドに上がれば彼から何かを手渡された。
広げてみればそれは男子用のニットベストで、はてなを頭の上に浮かべればさっさと着ろとおしかりを受けてしまった。
いまだにわからないまま着ようとすればワイシャツが濡れていろいろと透けているのが目に入る。
こいつはそれを見ないようにしていたと......?
一言感謝を述べて即座に服を着る。
汗拭きシートでうなじなどを拭いた後、彼とプールを去る。
微妙な空気感が私たちの間に流れる。
あのさ、と沈黙を破ったのは彼の方であった。
「あのさ。それ、明日返してくれればいいから。その、うん。じゃあほら、っコンビニ行こ。」
そう言って手を引っ張られる。
ちょっぴり赤くなっていた顔には触れないようについていく。
コンビニにつけば何のアイスにしようと思っていれば彼がおごると言い出してソーダ味の一袋に二個入っているアイスを手に取った。
お金を払ったらしい彼は袋を開けて一つを私に手渡してくれる。
「そんな、申し訳ないよ。手伝わせたり、ベスト借りたりしてるのにそれに加えて奢ってもらうなんてさ。」
すたすたとコンビニの外へと歩いていく彼の腕を掴む。
私の言葉を聞いた彼はほんの少し驚いた顔をしてからまた優しい表情になる。
目線を合わせるようにかがまれて、顔が近くなる。
「そりゃ、好きな人に優しくしたくなっちゃうのは当然でしょ。」
頭を撫でてからほら行くよ、と急かされる。
「ちょ、ちょっと待ってよ!それ、ほんと!?」
私たちの、ほんの一瞬だけの水色の青春。