「もしも過去に戻れるとしたら、承太郎さんはどうしますか?」
「……康一君。バタフライ・エフェクトを知っているかい」
「え、ああ、はい。確か、蝶の羽ばたきが嵐を起こすように、過去で起こった些細な事象が未来を大きく変えてしまうこと……でしたっけ」
「概ね正しい。康一君。君にはそのリスクを負ってまで、変えたいような過去があるのかい」
「えッ?! それは、う~ん。どうかな~……。結局のところ、今が一番幸せかもしれません。仗助君や億泰君がいて、町は平和になって、承太郎さんだってこうしてお茶に誘ってくれる。悲しいことは沢山あったけど、それをなかったことにすることで消えてしまう今もあるんだろうし……」
「素晴らしい答えだな。君らしい。恐らくこの町で共に戦った誰もがそう答えるだろう。……私も同じ答えだよ、と言いたいところなんだがな」
「……承太郎さんには、あるんですか。どんな犠牲を払ってでも変えたい過去が」
「……あるさ」
 命と引き換えにしてでも救いたい人間がかつていた。
 その死に対する冒涜だと分かっていても、時折夢に見る。彼が今でも、自分の隣で笑う、そんな夢を。
「ほら、いい加減に出ろ。お母様が来ているぞ」
「承太郎……ッ」
 目が覚めると、檻の中にいた。
 檻を隔てて母と警官が自分を見ている。
 檻に入れられるようなことをした記憶はない。
 今すぐにでも出ようと上体を起こすと、黒い学ランの裾が目についた。襟から鎖が音を立てて滑り落ちる。
 この懐かしい学ランは、もう随分昔に脱いだきり箪笥の肥やしになっていたはずだ。
 何かがおかしい。
 そういえば、この状況にも見覚えがある。
「承太郎。檻から出るんじゃ」
 暗闇からじじいが現れる。
「じじい……。これは、どうなってやがる。俺は何をしてここにいる」
「horry shit! あまりの恐怖で気が違っちまったのか」
「無理もないことでしょう。貴方だって、酷く動揺していた」
「そうだったかのォ~~~」
 母さんやじじいが若すぎるとか、疑問はいくらでもあった。
 しかしそれ以上に
「テメエ、誰だ」
「おお、紹介がまだじゃったな。彼はブラジルの友人。モハメド・アブドゥルじゃ」
「何言って……新手のスタンド使いか? 人の記憶を盗み見、あまつさえ戦友の名を騙るとは……良い趣味とは言えねーぜ」
 スタープラチナを出し、アヴドゥルの偽物に殴りかかる。
 拳が触れるより一瞬早く、大きな炎が上がった。
 見かけ倒しの炎は全く俺を傷つけない。
 しかしそのことで逆に俺は確信した。
 このモハメド・アブドゥルは本物だ。
「……これで良いですね、ジョースターさん。彼を檻から出しました」
「……何故、本気で攻撃してこなかった」
 アヴドゥルは静かに微笑むと、俺の記憶と寸分違わぬ回答をしてみせたのだった。
「行ってらっしゃいのキスよ」
「…………」
 初めて花京院と俺が出会う日。
 これがスタンド使いの仕業でも、夢でも、もう何でも構わない。
 もう一度あの旅の続きが出来るなら
 もう一度花京院の隣に立てるなら
 俺はどんな犠牲だって払える。
 神社を通り抜け、石畳の階段を降りようとしたとき、美しい緑色の帯が、自分の足に絡みつくのが見えた。
 ハイエロファントグリーン。懐かしい友人、花京院典明のスタンドだ。
 明らかに攻撃の意図を持って俺の足に巻き付いてくる。
 無駄に怪我をするのは正直なところ嫌だが……バタフライ・エフェクトだ。ここで下手に怪我を回避して、この後の展開が大きく変わっても困る。
 俺は少し深呼吸をすると、階段を一歩降りた。
 瞬間、ハイエロファントグリーンの触脚がきらめき、俺の左足を撫で切った。
 鋭い痛みに足を取られ、記憶通り石段を踏み外す。
「君、左足を怪我したようだが……。このハンカチを使うと良い」
 階段の下でうずくまったままの俺を見て、無事に花京院が接触して来た。
 差し出されたハンカチは緑色の模様があしらわれた新品だ。
 俺に渡すために用意したのかと思うと、悪くない気分になる。
「ありがとうよ。……待て、お前、見ない顔だが……」
 見ない顔、等と言いながら笑いださないよう必死だった。
 俺ほどこいつを知っている奴もいないというのに。
 とにかく受け答えは順調。
 その後の花京院との戦闘、肉の芽摘出もぬかりなく、記憶のある限り同じ行動を辿った。
 花京院がまた俺の隣で笑って、戦っている。
 俺は死んでしまったのではないかと錯覚する。
 もう死んでいるから、念願叶って花京院と再会できたのではないか?
 しかし怪我をすればちゃんと痛いし、あまりにも俺の記憶と変化がなさすぎる。
 過去に戻ったと考えたほうが良いようなことが何度も起きていた。
 
 ……いつだって、楽しい時間というものはあっという間に過ぎる。
 「日が落ちかけている。今DIOと戦うのは危険じゃ」
 「俺は反対だぜ!! このまま朝が来るまで逃げ回るなんてことできねぇッ!!」
 「承太郎ッ!! 君の意見を聞こうッ!」
 もしも、もしもここで行動を変えれば、花京院は死なずにすむのではないか。
 どうするべきか。
 1.「二手に分かれるのはだめだ。ポルナレフを追う」
 2.「ポルナレフは追いながらヤツと闘う。おれたちは逃げながらヤツと闘う。つまり、ハサミ討ちの形になるな……」
 1.
 ポルナレフを追って市内に入る。
 人が逃げてくる方向へ走る。 
 人の波にさらわれ、花京院とじじいの姿が消える。
 人混みの向こうに、DIOに縊り上げられるポルナレフの顔が見えた。
 「「ポルナレフッッ!!!」」
 思わず出た声が誰かと重なる。
 瞬きの瞬間、じじいに聞いていたハイエロファントグリーンの結界が当たり一面に張り巡らされ、花京院が人混みの上をかけていった。
 ハイエロファントグリーンの触脚の上を走り抜ける花京院。
 「まて花京院ッッ!!」
 必死の声も、はるか先を走る花京院には届かない。
 この距離では世界を使っても間に合わない……!!
 一気に血の気が遠のいていくのを感じる。
 DIOが花京院の姿を見て、笑っている。
 ヤツの口元が動くのが見える。
 「ばかなやつ」
 
 その唇の動きと同時に世界の動きが止まる。
 DIOが花京院に近づき、拳を振り上げ――
 「花京院ーーーーーーーーーッッ!!!!!!」
 花京院の体が彼方へ吹っ飛び、それを追うように血しぶきが弧を描く。
 ハイエロファントグリーンは少しも美しさを損なわぬまま、ハラハラとあたり一面に降り注いだ。
1.2.合流?
 その後のことは、もうよく覚えていない。
 気が付くと俺はDIOが砂になるのを見ていた。
 あの場所に戻ると、花京院の亡骸が横たわっていた。
 赤色の髪が、朝日に照らされて燃えるように光る。
 何か、声をかけたかったはずだった。
 言葉は喉の奥でひりついて、音になることはなかった。
 花京院の体を抱く。
 自分よりも細い体。
 
 「花京院……」
 ようやく、それだけ言うことが出来た。
 DIOにさえ出会わなければ。花京院はこんな残酷な運命に巻き込まれることもなく、普通に生きて、普通に恋をして、普通に幸せになっていただろう。
 奪われたんだ。
 
 「……」
 涙が静かに流れ、心が冷えていく。
  
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44:06
雲雀
もうやだこんなん悲しすぎるやろ
44:39
雲雀
私のコメントはいずこへ・・・・・
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向き
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ゲームにするやつ書く
初公開日: 2021年03月08日
最終更新日: 2021年03月08日
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コメント
承花のノベルゲ作りたいなどと……
この一文で何事かわからない方はどうか閲覧をお控えください。
ごめんなさい!!
推しを痛めつける
刀…腐です。くにちょぎです。酷い目に遭わせるのでご注意です。
雲雀
京極堂、審神者になる
書いてたり悩んでたり。京極堂さんが審神者になるというタイトルまんまな話です。 よろしくお願いします。…
雲雀
2026/07/08
お試してきすとらいぶ。へしあた。
兎喜(とき)