語彙力消失問題
文書くの超久々なのでgdgdですが......
トロッコ問題ネタ
「カーム、あのモーモーミルク美味しそうじゃないか?」
カレディラは相棒のカームにいつもより楽しそうに話しかけていた。白いスカーフを身につけて、ウキウキとポケモンセンターではしゃぐカレディラは今、シンオウ地方のムロタウンに訪れていた。因みに、白いスカーフは民家のおばあちゃんが旅の土産にとくれたもので、カレディラは首回りの寒さが凌げると大喜びだった。
...話は戻るが、ポケモンセンターの端っこで売っていたモーモーミルクはなんと本場ジョウトからの直輸入品らしく、鮮度が非常にいいそうでカレディラは買った瞬間パックにストローをぶっ刺し、ちゅうちゅうとすごい勢いで吸い始めた。酪農家だというミルク売りのおじさんはいい飲みっぷりだ!と感激し、もう一本おまけしてくれた。
カレディラは珍しいものが沢山置いてあるポケモンセンターに夢中だったが、カームに
「今日何しにきたか覚えてる?」
とでも言いたげに裾を引っ張られた事をきっかけに我に帰った。
ふと思えばカレディラは退屈しのぎがてら、カントーの都会から脱却し小さな孤島の自然を味わうべくムロタウンに来たのであって、土産物をいっぱい買いに来たわけではなかった。実際金はそこまで持ってきておらず、これ以上買うと帰りのカントーへの便に乗れないという状況だった。
「やべ、私とした事があまりに面白いものが多すぎてつい金を使いすぎちゃった... ポケモンバトルでもして金稼ぐ?」
さらに土産を買うべくバトルをしようとするカレディラだったが、カームはやんわりと気乗りしない旨を伝え断った。
民家が立ち並び、潮風が吹くムロタウンはカントーとは違い、排気ガス臭いわけでもなく爽やかな空気だった。カレディラはカームを連れて沿岸を歩いていた。ふと横目で見ると、水ポケモンを主に使ったバトルを水上で行っているのが見える。反対に陸ではポケモンセンター周りに人が集まり、わいわいと老若男女が楽しそうに話している。
「カントーもこれぐらい田舎みたいな雰囲気があったらいいのにね。」
カレディラはそう溢した。カームは共感の意なのか、コクっと頷く。
ジジジ......
唐突に電磁音が耳に届いた。横で行われているバトルの音かと振り向くが、そこでは電気技も電気ポケモンも登場していない。
ジジジ......
その音は少しずつ自分たちへ近づいて来ている気がした。ギュ、とカームはカレディラのスカーフの裾を摘んだ。異変を感じたのか、カームは少し震えていた。瞬間、とてつもない気配を後ろに感じた。瞬間、自分たちを余裕で覆う程の大きな裂け目に為す術もなく吸い込まれた。
いつのまにか橋の上に立っていた。
腰に下げていたモンスターボールもいつの間にやらなくなっている。そうだ、カームはと辺りを見回すが、周りは山や丘に覆われておりその姿はどこにも見当たらない。そこにあるのは閉鎖的で見たこともない景色だった。
のしのしと音がした。振り向くと、ふくよかな体をした大男がこちらへ歩いて来ていた。
「すみまs...」
カレディラは話しかけようとしたが、その男は全てを無視してカレディラの目の前に立ち塞がり、ため息をついた。どうやらこちらには目もくれていないようで、橋の低めの手すりに体をかけていた。
ガガガガ...
数分経つとそんな金属同士が擦れ合うような不快な音が聞こえてきた。ふと後ろを振り返ると、5人ほどの作業員が線路の点検をしているようだった。ここで初めてカレディラは下の土地が線路であることを認識した。これまでもそこに土地はあったのだがどうにも頭がモヤにかかった様で、認識できなかったと言った方が正しい。
「これ、もし前から電車走ってきたらどうなるのかな、カーム...あ、いないんだった。」
相棒がいないと言うのになぜかカレディラの頭は冷静だった。ここからどうやって抜け出すか、それを考えた方がいいと頭では分かっていながらこの不思議な世界に浸っていたい、カレディラはそう感じていた。
ボーッと回らない頭にゴトゴトと音が聞こえてきた。ふと前を見ると最近話題となった無人で操縦まで人工知能がしてくれるという電車が一両だけかなりのスピードで走っていた。最初はここにも電車が走っているんだなあと、そんな呑気な事を考えていた。しかし、良く考えてみれば線路は一本しか見当たらなかった。となると、どうしても先程の作業員と衝突してしまうだろう。作業員がもう仕事を終わり去っているのではと希望を持って後ろを振り返ったが、そこには5人が線路にきれいに並んで砂利の量を調節していた。このままでは彼らが轢かれるのは時間の問題だ。そこで頭を過った一つの考えがあった。目の前にいる大男を落とせば電車は止まるのでは無いかと。電車は一両編成、無人。そして速度を重視した軽量型。しかし、かなりのスピードがあるため、ヒョロヒョロの作業員の3人程は少なくとも助からないだろう。電車はあと10秒もすれば橋の下を通りかかる。大男はこちらのことが眼中に無い様子なので突き落とす事は簡単だ。そう考えてしまったカレディラの頭にもはや倫理と言うものはなく、ただ被害の大小のみがこびりついていた。気がつけばカレディラは男を橋から突き落としていた。
ギィィィィ!
音を立てて電車は止まった。カレディラはホッとしたのも束の間、多大なる罪悪感が押し寄せてきた。作業員は何もなかったかの様にこちらには目を向けず作業を続けている。目下には大男の轢死死体が落ちている。そこに自分が殺したのだと言う実感はあまり無かった。否、心の奥底で認めたく無いと言い張ってるのかもしれないが。久々の修羅場に精神疲労からかクラっとする。直後、視界は暗転した。
「面白いねぇ」
パルキアはそうハピナスに語りかけた。
「数千年前からずっとそうだ。人間は面白い。たまにこうやって遊びたくなるのも仕方あるまい。」
ハピナスは何もできない自分を悔やんでいた。
大きな裂け目に飲み込まれ、気付けば自分の主人が人を殺す様を見せつけられているのだ。
「君の主人は今は人殺しだ。でも目線を変えれば5人の作業員を救った英雄となる。」
しかし、罪のない人間を殺したのは事実だ。ハピナスはカレディラが罪の無い人を殺す、所謂犯罪者となる事を、一面ではそう見えてしまう事を心から嘆いていた。自分がいたら止められたのに... あまりに慣れない場所なせいか、ハピナスの頭には主人の事しかあらず、もはや5人の作業員などどうでもよかった。カレディラが人を殺す場面を見た事がない訳ではなかったが、それは相手から吹っ掛けられたためであって、他でもない自分が生きる為に殺害したのであった。そのため、罪の無い人を殺したと言う部分だけが頭に残って離れないのかもしれない。
「そう気にやむで無い。あの大男も電車も作業員も私が作り上げた創造だ。」
ハピナスはそれを聞いてもまだ気分は晴れなかった。
気づけば彼女らは元の場所へ戻っていた。空はすっかり赤く染まり、夕暮れ時を人々に告げていた。
「なんか疲れたね」
カレディラはカームにそう呟いた。カームはまた巻き直したスカーフの裾を引っ張った。
「帰ろっか。」
ドッと押し寄せる精神疲労にクラクラしながらカレディラは元来た道を戻っていた。カームはカレディラに同情しながら主人に続いた。
おしまい(脳死)