あなたが一日16時間の起床人生を諦めて、永久凍土の下で冬眠し続ける進化を選んでから、そろそろ千年の月日が経とうとしていた。
生きることの生臭さは、あなたが起きていた千年前からいまもそう変わっていない気がするけれど、友達が冬眠してしまうことの寂しさは、多少痛みの程度も変わったりしたのかな。
あなたのために用意された世界ではなかった。
あなたが泣きながら最後に残した言葉は、結局はその通りだったのかもしれない。もちろんこの世界は、あなたのために作られたわけではないし、私のために作られたわけでもない。
でも誰かのために生きることだけはできるんだって、あなたが起きてる間に言ってあげられたら良かったなって。これは10日目くらいにはもう思ってたよ。あなたが冬眠を始めてから。
南極の永久凍土は、今年もまた厚みを増したってニュースでやってたな。
なんと今年は驚きの2ミリ。温暖化も進んでるのこのご時世に大健闘。
これが千年も続けば、大体2メートルくらいの厚さ増加というわけで。改めて考えてみると、すごい時間の経過だよね。千年って。
私一人が、たとえ悲しみに打ちひしがれて立ち尽くしているだけでも、すっぽりと覆われてしまうほどの氷の厚み。
そしてたぶん、私の足元にはもちろんあなたが横たわっているの。例の忌々しいカプセルの内側で。
春はきっともう来ないよ。
千年待ってみたけど、やっぱり相変わらず人類は喧嘩ばかりしてるし、人は他人を傷つけずに生きる生き方以外の生存方法を見つけられていないみたい。
だからあなたが眠ってやり過ごそうとした彼らは、結局いまもまだあなたの眠る頭上に漂い続けたまま、あなたが目覚めるのをいまかいまかと待ち構えている。
あなたが再び、心の最も柔らかい場所を傷つけられるその日を、彼らは待ちわびている。
……ねぇ、もし聞こえてるなら夢見心地のままでいいから、答えて欲しいな。
どうしてあなたは、私だけを置いて氷の向こう側に行ってしまったの?