お題:教えて 悪戯
 俺の手元を見て、あれ、と声を上げたのはデュースだった。
「クローバー先輩がスマホにステッカーなんて、珍しいですね」
「俺が貼ると思うか?」
「どー見てもケイト先輩っしょそれ。ですよね? トレイ先輩」
「ああ。流石エースは察しがいいな」
 ひょうきんな顔がついたクラブのマークは、ケイトが持っているスマホケースに描かれたキャラクターの仲間らしい。
「それ流行ってますもんねえ。オレにもくれねえかなあ」
「くれたというか……気付いたら、あいつが勝手に貼ってたんだけどな」
「はは、ケイト先輩やりそ~」
 適当に微笑んでその場はやり過ごしたが、俺はケイトに対してそんな印象を抱いていなかった。あいつは人との距離を詰めるのが上手いが、ある程度近付いたところで、さりげなく一線を引くのも忘れない男だ。例えば誕生日のプレゼントだって、残る物を渡さない。食べ物はもちろん、新商品だからとそれらしく渡すケア用品だって、結局使ってなくなれば捨てるような日常使いの物だ。ポムフィオーレ寮生でもなければ思いつかないようなチョイスは、予想外で喜ばれこそすれ、捨てる頃には持ち主もケイトから貰ったことなど忘れているだろう。
 違和感に気付いたのは、貸した教科書への落書きだった。いま部屋にあるクラブの形をしたクッションだって、もともと二人部屋のときにケイトが買った物だった。トランプのスートでペアを作るなら、組み合わせは大抵スペードとハート、クラブとダイヤだ。ダイヤが欲しかったんだけどセットで売られていたから。オレが持っていても仕方がないから。その場では納得していた答えも、思い返せばただの言い訳にしか聞こえない。
 散らかり始めた部屋を片付けていると、落ちていたヘアピンを見つける。先日、二人で勉強会をしたときにでも落としたのだろう。果たして落とした、のだろうか。少しずつ、俺の周りにケイトの痕跡が残っていく。お前はそんな男じゃないって、俺は知っているんだ。嫌だとは思っていないさ。ただ、お前がなにを考えているのか、教えてくれたらうれしい。
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20201206♦♣ワンライ
初公開日: 2020年12月06日
最終更新日: 2020年12月06日
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お題:教えて 悪戯