恐怖は、思ったよりも近くにある。
明らかにそこに「いる」なんてことはあまりない。しかしながら、そこには漠然と何かが「ある」のみ。
暗い路地裏、寂れたシャッター街、夜の学校、雑草まみれの廃屋。そんなあからさまなところじゃない。あなたが想像しうる全ての場所に、彼らは漂う。彼らに「場所」という概念はなく、彼らに「時間」という概念はなく、彼らに「個人」という概念はない。
彼らはあなたになりたがっている。あなたと同じになりたがっている。右から、左から、背後から。
放課後、部活終わり、真冬。昨日そんな文章を掲示板で見かけたのを思い出して、背筋に悪寒が走った。体育館にはもう誰もいない。私一人が、後片付けに勤しむのみである。仲間の名誉のために言わせてもらうと、私は決して嫌がらせなどで片付けをしているわけではなく、個人的に居残って自主練をしたために、一人で片付けを行うはめになっているだけだ。
バッシュを脱いで、上履きに履き替える。今の時期はユニフォームを着替えてしまうと、せっかく温まった服を放棄することになるので、あえてそのまま帰る。一応ウィンドブレーカーも持ってきた。寒さに関しては大丈夫。
荷物をまとめて、体育館に背を向けた瞬間、背後になんとなく視線を感じた気がした。
「疲れてんのかな。昨日あんなモノ見なきゃよかった」
空元気で独り言を言いながら、できるだけ早歩きで職員室へ向かう。中学生にもなって、存在すら不確かな連中にビビってしまうのは少々カッコ悪いと思いつつも、今は明かりと人の気配が恋しかった。