相手が自分のどこを好きか当てられないと出られない部屋に閉じ込められた円鬼
さっきまでグラウンドで練習していたはずだった。だけどふと気が付いたら鬼道と2人真っ白な部屋の中にいて
「……此処は?俺たちは今練習をしていたはずだが」
「そう、だよな……?」
広さは俺の部屋と変わらないくらいで、窓はない。そして目の前にはドアが1つ。鍵がかかってるのか押しても引いても開く気がしない
……そこまで確認して俺は何日か前に聞いた不思議な話を思い出した
「……こないだ吹雪が、染岡と2人でこんな部屋に閉じ込められたって言ってたんだよな」
「!、過去形と言うことは2人は出られたんだな?」
「うん、ドアに書いてある指示の通りにしたら出られた、って」
ドアに貼られた白い紙にはなにも書いてない。指示って何のことだろと思ったら、裏に何か書いてある
「えーっと……一緒に閉じ込められた相手が自分のどこを好きなのか当てられるまで出られない部屋……!?」
「?!……吹雪と染岡も同じ内容だったのか?」
「……や、いや……詳しいことは聞いてないんだよな、そんなの信じてなかったし。ただ、指示の通りにするまで何をどうしてもドアは開かなかったって言ってた、けど」
「……壁を壊して出られないか試してみるのは」
俺がサッカーボールを抱えてるのを見て鬼道が言うけど
「吹雪たちも試したらしいんだよな。で、ワイバーンブリザードでも壁を撃ち抜けなかったって言ってたから……俺たちじゃどう頑張ってもムリなんじゃないかなって」
2人で撃つならイナズマ1号か鬼道のツインブーストなんだけど、ワイバーンブリザードの威力には遠くおよぶ気がしない
「その指示に従う他は無いということか」
「……鬼道は俺のどこを好きなんだ?」
「!、いや、直接聞いて良いものなのか?」
「え?だめ?」
「……俺は、──────」
口をぱくぱくしてた鬼道が難しい顔をする
「なんの力が働いているのかはわからないが、ズルは出来ないようだな」
「そっかあ……」
「……お前は、俺の……目が、好きだろう。事あるごとにゴーグルを外したがるくせに、人前で外すのは嫌がるものな」
自信たっぷりに鬼道が言った直後に、部屋の中でファンファーレが響いて恥ずかしいことこの上ない。直接言ったことなんかないのにバレバレっていや好きなとこなんだからバレてたって良いんだけど
「合ってたか、当然だな。……だがドアは開かないようだ。お前の答えも揃って初めて開くということか」
「ええー……鬼道が俺のどこを好きか……?」
正直今でも、俺たちが付き合ってるのが不思議でなんないときがある。鬼道は俺の、どこを好きになってくれたんだろ
「諦めがわるいとこ。好きってちゃんと言うとこ。サッカーバカなとこ……」
「……どうやら一番を当てられなければ開かないようだな。どれも間違ってはないんだが」
聞いてる鬼道もだんだんと顔が真っ赤になってってんだけど、自分の魅力みたいなのを自己アピールしてるみたいでうわこれ滅茶苦茶恥ずかしいな
「ええ……俺に他になに取り柄があるって言うんだよ……」
自慢じゃないけど勉強出来ないし、豪炎寺みたいに格好良くなんかないし
全然思い付かなくて頭を抱えてたら、鬼道が何かちょっと考えてハッとした顔で俺を見た
うん?右手をぱーにして。左手でその手の平を指差して次に俺を指差すけどそれが?
「……手?俺の」
自分の手に目を向けた瞬間にさっきより豪華なファンファーレが鳴り響いて。え、うそだろ今のが答えって
「……俺より少し大きくて、特訓や試合で酷使されたことで少し皮膚の厚くなったその、ゴールを守るキーパーの手で触れられるのが好きなんだ」
ガサガサしてて少しゴツい自覚はあったからどっちかって言ったらコンプレックスだったのに。鬼道が好きだって言うのを聞くと急に誇らしいものに思えてくる
「……って言うか直接答えを言うのはダメだったのにジェスチャーは良いってどういう基準なんだろうな?」
「ダメもとだったんだがな。……お前に任せていたら何時までも答えが出なさそうで」
「……そうかも。そっか、鬼道はこの手が好きなのか」
「お前の努力の結晶そのものだろう」
違うか?って当然のことのように言ってくれるのがなんだかとてもたまらない
「お前のそういうさらっとなんでもないことみたいに俺のやってきた全部を肯定してくれるとこすげー好き」
「……お前のその好意でさえも真っ直ぐ素直なところが好ましいとも」
ふわって笑って俺の手を取って、ほっぺを挟むように引き寄せられて
ゴーグル越しの真っ赤な目がつぶられるぎりぎりまで俺から視線を逸らされないのが、ああ本当に大好きだなって
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