千五百秋
流れる、秋の空気を吸っている。
肺がじ、っと冷えるような、冬を目前にした匂いがする。息はまだ白くはならない。スマホを確認して、目の前のカフェに入った。一際目立つ金の頭の、ビスクドールのような見目麗しい少女ーもとい青年が、奥の席で退屈そうにしている。
「待った?」
「別に、待ってないです」
椅子を引いて向かいに腰掛ける。ホットのカフェオレを一杯頼んだ。コートを脱いで椅子の背にかける。店内BGMのクラシック音楽がちょうど一曲終わって、次の曲が流れ出した。
「好きなんですか?」
「何が?」
「この音楽」
今、嬉しそうな顔しました、と言われて、思わずへ、と声が漏れた。
「よく分かるね」
「分かりやすいので」
よく、もう少し気持ちを表情に出したほうがいいって言われるんだけどな、と言えばそうなんですか?と小首を傾げる。変わらないその癖に、少し唇が緩んだ。
「先輩とはどう?」
「まあまあです」
「そう」
運ばれてきたカフェオレに角砂糖を一つ。スプーンでかき回してから口をつけると、あなたは?と問われた。
「ん?……まぁ、まあまあかな」
「そうですか」
最近忙しそうですもんね、と言うので、ああ、確かにそうだねと返す。特殊ナントカ訓練月間だとかで、しばらくは会えないかもしれない、とこの間会った時に言われたことを思い出した。
「まぁ、うちの先輩が忙しそうなのはいつものことですけど」
「確かに。大文字先輩、学園にいた頃からそうだったもんね」
「ええ」
まぁ、でも、とりあえずはあと四年ですよ、と伊吹は可愛らしいパフェをつつく。
「何が?」
「秘密です」
ふぅん、と相槌を打ってカフェオレをまた嚥下した