10青磁色
それでも、僕は、祈り、永遠の半分
それでも、僕は/悠紗
ここに一つ、約束を立てよう。
一紗さんに、ドラマの仕事がきた。永遠の時を生きる吸血鬼が、人間の女性に出会って恋をしてしまう切ない話。身体や顔の美しさはもちろん、色気を感じさせる、どこか謎めいた独特のオーラと、その、どこまでも見透かしてしまうような瞳がキャスティングの決め手だった、と監督が語っているインタビューを読んで、その道のプロはやはり目のつけどころが違うのだな、とぼんやりと思った。
「……彼女と一緒に生きたい」
うっすらと涙を浮かべて、祈りを捧げるように天を仰ぐ姿に、あいつ、今後演技の仕事増えるだろうな、と玲司さんや孝明さんが言っていた。泣いているところは見たことがなかったから、何だか目のやり場に困るというか、むず痒かった。
終盤、彼と愛する人は結ばれた。結ばれたけれど、女性は老いて、やがて亡くなった。悲しそうな、けれど満ち足りた表情で、彼は一人静かに彼女への永遠の愛を誓って、物語は終わった。
彼であって彼でないその横顔を画面越しに見ながら俺はどうでもいいようなことをずっと考えていた。好きという気持ちに、永遠はあるか。答えはノーだ。過去、今、未来を通じて、時間を超越して存在することが永遠で、だけれど俺たちは、いつかは死んで土に還る。どうしたって人は時の流れに逆らうことはできないし、未来永劫の愛は誓えない。
「一紗さん」
「あ?」
「ドラマ見ました」
「おう」
「一紗さんは、不死ってどう思いますか?」
「どう、ねぇ」
憧れはしねぇな、と一紗さんは遠くを見るような目で言った。彼には、彼の演じた、今もどこかで一人で生きている吸血鬼が見えているのかもしれなかった。
永遠はない。ならば、と思う。ならば、俺は永遠の半分を誓おう。この先ずっとは無理でも、今までずっとを捧げよう。神さまなんていう存在がこの世界を創って、そこに命が生まれて、人間ができて、俺たちの先祖が出会った。そうして気の遠くなるような奇跡を重ねて、俺とあなたはこの世に生を受けて、出会って、恋をした。今日までの歴史ずっと、俺があなたを愛するためにあったんだって、そう言ったらあなたは笑うだろうか。それとも、驚いたような顔をして、それから泣きそうな顔をして一言馬鹿って言うだろうか。
「これから帰る。部屋の鍵開けとけ」
手元のスマホが音を立てた。簡潔なメッセージにはい、と返して早速鍵を開けに立つ。永遠の半分の延長線上にある今日の、二人きりで過ごす夜。ドアの鍵を開けて、窓のカーテンは閉めて彼を待つ。ねえ、一紗さん、好きですよ。時計の秒針が俺たちの有限な時を刻む。幸せという言葉が、もしも一瞬だけ言語から解放されて耳で拾えるようになったら、屹度この針の音をしているんだろう。
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