「まもなくゴールドソーサーフェスティバルが開催でーす! ……おねーさんも良かったらきてね!」
ウルダハのルビーロード国際市場を通りかかった時に元気よく宣伝していた人からチラシを受け取った。どんな催しがあるのかと内容を確認すると、なんとあのコンチネンタル・サーカスが出張でやってくると書いてあるではないか!
以前、守護天節にて仮装パーティに参加したことがあった。仮装と言ってもクオリティはとても高く、まるで本物と比べても見分けがつかない程の変身が出来ると大盛況であったことを思い出した。
チラシを握りしめた私はある人物に相談すべく、リンクシェルを鳴らした。
『スピネル、久しぶりね。どうしちゃったの? そんなに慌てて』
リンクシェルから可憐な声が返ってきた。冒険者仲間であり、友人でもあるルビィだ。彼女とはよくお茶を飲みながら恋の相談をしていた。
そう、私は今、恋をしているのだ。その相手とは、彼方では水晶公と呼ばれ、暁の新入りとなったミコッテ族の青年、グ・ラハ・ティアだ。
第一世界で水晶公に恋をしてから未だに想いを告げられずにいる。彼は私を「オレのいちばんの英雄」と呼び、慕ってくれている。この関係を壊すのが怖くてなかなか一歩が進められない。
そんなモヤモヤした悩みをいつも聞いてくれていたのが、ルビィだった。彼女なら、きっとこのお願いを聞いてくれる。そう確信して先程受け取ったチラシについて彼女に話した。
『ははーん。あの仮装パーティが開催されるのね……。てことは、彼に変身して欲しいってとこかな?』
「せ、正解だよ……。その、こ、告白の練習をしようかと……ね」
こちらが説明する前に言い当てられ、気恥ずかしくなりながらもお願いすると、快く快諾して貰えた。早速と日程を合わせて現地で落ち合う約束を取り付けてから通話を切った。どのように彼へ告げるか、と 頭の中に思い描きながら過ごしたためにすっかり失念していた。いつも彼女に相談していた時に必ず「もう告白しろ」と言われていたことを。
「守護天節……ね。ちょっとイタズラでもしちゃおうかな」
そして、彼女が案外イタズラ好きだということを。
笑みを深めたルビィは、テレポを唱えて宙に浮いた。
約束の日。
ルビィからリンクシェルで遅れると連絡が入った。
『ごめんスピネル! すぐに行くから、先に入ってて!』
仕方なく先に