驚いて上を向くまつげがきれいだった。
くろぐろと長いそれは見惚れる間もなく伏せられる。瞬きひとつを経て、シルバーグレーの瞳は問題文をせわしなく追い始めた。何のって?さっき返却されたばかりの小テストだ。それも、自分にしてはものすごく高い点数の。
今回は特に難しいと評判になっていたから、まさか駆け寄ってまで見せた紙切れがそのテストだとは思わなかったのだろう。しっかり確認を終えたクルーウェル先生はもう一度こちらへ視線を向けた。花のほころぶような顔。オーバーな仕草でもって肩を叩かれる。赤い革手袋が派手な音を立てた。
ガッシガッシと頭を撫でられるのがどうにも幸福で、咳き込むみたいに笑う。先生も微笑んでいた。テストでどんなにいい点を取るより、そっちの方がよっぽど嬉しい。力強く撫でられて引きつる髪の感触でさえ、ふわふわの気持ちを増大させるだけだった。(しかも、先生は撫でたあと、乱れた髪を梳いて直してくれる!これがいっとう幸せだった)
頑張ってよかったなあ、と漏れ出た言葉に、クルーウェル先生は目を細める。
「そうだろう。知識はお前の宝になる」
息が止まるような心地だった。柔らかくあっても芯の通った視線。先生はきっと、今までも同じように生きてきたのだと感じた。彼の知らないところを、ベール一枚分めくって見たような気がして、不意に頭の後ろが熱を持つ。誰にだってこの歩みを阻まれないでほしいと祈るように手を握った。このひとがずっと、こうして笑っていてくれれば嬉しいと。
この美しいひとが永遠であればいいと、そう思った。