誰かから無償の愛を一心に受けるようなお姫様には最初からなれないし、愛を知らないオレ達が誰かを愛することも救ってあげることも出来ないだろう。そんなことはわかってる。
だからせめて、一緒に人生を歩む人くらい自分の手で選びたかった。
お伽噺の12時に終わる舞踏会のような、ひどく愚かででも少し愛おしいあの時間を、思い出だとは言いたくなかった。
___
 AM6:29 目覚まし時計が鳴り始める直前のカチッというスイッチの入る音でケイトは起きる。けたましくなるそれを慣れた手つきで止めると、うんっと背伸びをした。遮光カーテン時の隙間から差し込んでくる朝日は本格的に春の訪れを感じさせる。
 キッチンに入り目分量で大体一人分の水を電子ケトルに入れると、ケイトは顔を洗うためにバスルームへと向かった。洗面台の前に立って前髪をピンで止める。少し考えてから蛇口を右に捻った。まだ水で顔を洗うのには寒すぎる。脇の引き出しを開けて新しいタオルを一枚引っ張り出して柔軟剤の微かな香りに顔をうずめた。
 湯が温まったことを伝える音を聞きながらキッチンへ向かう。マグカップにフィルターを重ねたドリッパーをのせた。店で出そうか迷っている豆をミルで挽くと上品で少し癖のある匂いがふんわりと香る。うん、ありかもしれない。そのままドリッパーに一杯分入れて湯を注ぐと鼻を掠める程度だった匂いがキッチン全体へと広がっていく。ケイトはこの時間が案外嫌いではなかった。
 そのままマグカップを片手に充電器に挿したままだったスマホのホーム画面を開いてソファへと沈んだ。
 今日なんか予定入ってたけ?あー確か都会の方から魔法医術師がくるとかって言ってたな。この町についに診療所ができて、オレと同年代だから仲良くしてあげてほしいって町長直々にお話をいただいた覚えがある。
 仲良くしろって結局、気にかけてこの町から出ていかないようにしろってことでしょ。そのくらいのオブラートじゃ包まない方がマシだろう。
 そうケイトは苦笑気味に眉を下げながらコーヒーを啜る。まあ、コンビニに行くにも車を出さなきゃいけない、カラオケもショッピングモールも全部山を越えなきゃいけない。この街のにくる若者が「こんなに田舎だと思わなかった」と出て行く理由がわからなくもなかった。
 てか魔法医術師ねえ…。まあ隣町までいかないと医者にもかかれないしね〜。
 ケイトはふと浮かんだその顔を打ち消すように小さく頭を振る。今、何してるんだろうね。
 切り捨てたはずの思い出の切れ端がズキンと悲鳴をあげたような気がした。
 知りたいなんて思ってない。そもそも連絡を先に断ったのはケイトの方だ。もう二度と会うつもりはないし、今更見せられる顔もない。
 でももし今日くるのがあの子だったらどうする?この現状を見てキミはどんな顔をするのだろうか。考えてしまう。
 キミはその大きくて澄んだ瞳でオレの所業を見つめ、そのよく通る声で断罪するのだろうか。かつての暴君の姿を脳裏に浮かべる。俺は断罪されることを望んでいるのだろうか。それって結構ウケるな。
 もう一度会いたいと思ってしまったけれども、かといってどうして会いたいのかはわからなかった。
 ただ今のこの生活を彼にだけは見られたくないと思った。あの子に、本気で拒絶されて、否定されてしまったらオレは耐えられない、と思う。
 学生時代のオレは彼に認めてもらえるように、それなりの立ち位置を築いてきたつもりだった。だから隣で、いや一歩上に立ったとこで何食わぬ顔をしてあの子を可愛がることができていた。
じゃあ、今はどうだ。決して見れたもんじゃ、見せられたもんじゃないと思う。きっとあの子は今のオレを見て軽蔑まではしなくとも、それなりに顔をしかめると思うし。
 それでも、今ここにオレがいるのはオレがオレなりに、低いところではあるけれどの必死にあがいてきた結果だ。
 それを彼に、彼だけには否定されたくなかった。
 思えばオレはずっと怖かった。あの小さな男の子にオレを否定されることが。
 その瞳に見つめられると真実を見透かされているような気がしたし、だけど彼だけは本当の『オレ』自身を見てくれているような気がした。だから。彼にだけはオレをずっと認めて欲しかった。
 だけどオレは同時に彼に同情されるくらいならどこぞの人魚姫よろしく海に飛び込んで死んだ方がマシだと思っている。妥協して、同情して、そんなあの子をオレは見たくない。同情されるくらいなら非難の眼差しを浴びた方が、自死をした方がよっぽどマシだ。まあオレは人魚じゃないから泡にもならないしただの醜い水死体が揚げられるだけだけど。
 まあだから、つまりオレはあの子には会いたくないのだ。どちらにしろきっとオレが思っているようなハッピートゥルーエンドなんてこないし。
 そもそもそれもこれも全部オレの頭の中だけの話なんだけどね。きっと彼は今頃魔法大学付属病院かなんかで働いているだろう。とっくのとうに縁を切ったオレのことなんて忘れてしまってのうのうと幸せに暮らしてもらっていないと困るのだ、オレが。
 ケイトは冷めきったコーヒーを一気に胃に流し込むと、今日の段取りを考えながらシンクへと向かった。
______
 空気の入れ替えのために窓を開ける。カーテンがはためくのを横目にテーブルを拭いた。温かみの残る茶色い木目のテーブルは閉店する飲食店から格安で譲ってもらったもので決してケイトの趣味ではなかった。
 有線の音楽だけが流れる一人の店内はひどく静かに感じる。そんなはずは無いのに時計の秒針の音が頭の中まで響いてくる。チクタクとせわしなく進む針に急かされているような気分になって家で一人でいる時よりもこういう時間の方がずっと、孤独を感じてしまう。
 どんなに人がいたとしてもきっとオレは一人で立つしかないんだろう。これから先もこうやってずっと生きていくんだろうな。そんなことばかりが脳裏を駆けめぐった。
 こんな思い卒業と同時に捨てたはずだった。オレは今の人生を楽しんでいるし、寂しくもない。それなのにこんなおセンチな気分にさせられているのは今朝思い出した彼のせいだろうな。
 もう過去に囚われるのはやめた方がいいんだろうね。それができたら苦労はしていないんだけど。
  こうやってぐるぐると考えても仕方がない。まだ開店時間には少し早いけれど店を開けようとケイトは立ち上がった。
 そのときだった。ドアベルが有線の音を打ち破ってチリンと揺れた。
「すみませ〜んまだ空いてないんですよ、って……?…は?」
 ドアを開いた男は頭の上の飛び出たひと束の毛をピンとたて、アイスグレーの瞳を零れそうなくらいに見開いた。ビクッと体を震わすとそのままドアは閉まっていった。
「えっいやマジで?」
 その男はケイトのかつての後輩であるリドル・ローズハートという男に限りなく似ていた。否、彼そのものであるように見えた。
 ドアが再び、今度は恐る恐るとでも言うようにゆっくりと開いた。中を伺うアイスグレーの瞳をした男はまるで何かの間違いであって欲しいと願うような様子だった。
 男は店内にいる人間が本当にケイトであることを認めるような表情を見せたあと、ムッと眉を顰めた。
 ケイトは学生以来に喉が痛くなるほどの大声を出して叫び、そのままその場にうずくまる。
 「なんで」とか「どうして」とか、口からはありとあらゆる驚きを表す語彙がブツブツと垂れ流されていた。
「…ケイト。ボクは仮にも初対面かもしれない人間の前でそういう、訳のわからないことをするのやめたほうがいいと思う」
 先にこの状況の中口を開いたのは男の方だった。その声にはどこか呆れの色を含んでいる。
「いやだってどう考えてもリドルくんじゃん!!!なんでここいんの!!てかなんっでそんな平然としてるわけ!?てかもしかしてオレがここにいること知ってたとか言っちゃう?」
「いや、知らなかったけれど、人間って自分より動揺している人間が目の前にいると案外動じないでいられるものだね」
 新しい知見を得たとばかりに興味深げに頷くその姿はリドルそのものだった。いやそれだけじゃない。その特徴的なハート型の触覚に深みがかかった赤色の髪も、まろい頬もかつての面影を残したままだった。
 でもリドルくんの声ってこんなんだっけ。もっとなんだろう。なんて言えばいいのかわかんないけど。でもリドルくんが昔、人間は声から順番に人のことを忘れていくって言ってたしね。
 ケイトは蛇口のように流れるとりとめのない思考を放置していた。いわゆる現実逃避だった。
  だから脳死していった「とりあえず入んなよ」できちんと店に入ってきたリドルが小さな、推定幼稚園児ぐらいの子供を連れているのには気付かなかった。
_______
「落ち着いたかい?」
 リドルは紅茶を1口すするとティーカップを置いてそう聞いた。それはまるでここの店主よりも店主然とした風貌だった。
 落ち着いてみると娘ちゃんはリドルくんによく似ている。艶やかな赤い髪もその利発そうにキュッとじられた唇も。だけれども瞳だけはどこか暖かさの残る、例えるならこのティーカップに残る紅茶みたいな色をしていた。
 これがリドルくんが愛した女の人の面影かと思うと少しだけ変な心地がしたけれど、きっと優しい人だったのだろうな、と思う。
 お似合いだったんだろうな。よかったなとなぜか他人事なのに安心した。
「取り敢えず、今度この町にくる医者っていうのがリドルくんで、リドルくんをこの町に誘ったのは町長で、リドルくんのお祖父さんと町長は古い友達ってことであってる?」
「簡潔に言うとそうなるね」
 とりあえず午前の開店を諦めたケイトは二人とテーブルを囲んで現状を整理していた。
「それで町長が家と簡単な診療所を用意しておいてくれるという話だったのだけれど…」
  うわなんか嫌な予感する。
「診療所のことばっか考えてたら家のこと忘れてたとかそういうオチ?」
  リドルくんはなぜ分かったのかいとでも言いたげな様子で目を開いた。ホント町長そういうとこある。
「ああ。ここの店主が力になってくれるだろうって住所渡されたからここへ来たんだ」
 あーハイハイハイやっぱね。オレのとこにはな〜んの連絡もきてないですけどね。世の中は報連相でまわってんのしらないのかなホント。
「あ〜うちなんか一軒家なんだけど使ってない部屋いっぱいあるからしばらくくる?掃除もしてないし家具もないけど」
「そもそも家具は転移魔法を使う予定だったから大丈夫だよ。部屋だけ貸して貰えるなら恩に着る」
「それは全然大丈夫だよ〜」
  そう笑うとリドルくんは安心みたいにほっと息を吐いた。もっと昔だったら怒ってた気がするのにね。
  それに、もっと詮索されると思った。なんでオレがここにいるのかとか。リドルくんも大人になったっていうことなのかな。
  オレが想定していた最悪の遭遇にはならなくて安心していたはずなのにどこか落ち着かないというか、むず痒がった。
「ねえねえパパ、このおじさんもケイトって言うの?」
 会話が一段落したことを察したのか、リドルの娘が口を開いた。先ほどまで手もちぶたさとばかりにスプーンでくるくるとミルクをかき混ぜていた様子と一変してどこか楽しそうだった。俯きがちに伏せられていた瞳はキラキラと輝き頬はどことなく紅潮している。
 え?まっていまこの子なんて言った?おじさ、いやおじさんって言われてることもびっくりしたけどいや問題はそっちじゃなくてさ?え今「おじさんも」って言ったよね?「も」って、マジ?うーん聞き間違い?あーそれともうん、そうだよねわかる。助詞って難しいよね〜「が」と「は」と「も」ってアレなんなんだろうね〜。人生33年目のおじさんでも適当に話してると間違えちゃうからしょうがないよね。
 ケイトは目に見えて動揺していた。この光景には既視感がありすぎるような気すらしていた。しかし、一点だけ違ったところがある。
 祈るように見つめた先のリドルの顔はケイトよりも随分と青ざめていた。
「は?マッジで言ってんのリドルくん」
 何でもないよとばかりに笑うその表情は傍目から見ても随分とひきつっていた。この子NRCにいる時から十分すぎるくらいやばい子だったけどさ、マッジでやばいじゃんほんとあたまおかしいんじゃないの?
 まあだけど自分よりも動揺している人間がいると案外大丈夫だと言うさっきの発言は本当らしく、オレは脳内で叫んでいるとはいえどこか冷静だった。曖昧に笑みを作って頷くと娘ちゃんはその小さな顔をクシャりと歪めた。
「えーおじさんケイトとお揃いだねぇ」
 えいや普通の神経してたら自分の娘に元彼の名前つけなくない?
「えーお揃いなの?嬉しいな。あとおじさんって言われるとさ、ちょっとアレだからうーんと、けーくんって呼んでくれない?」
「いいよ!」
「あっちに本とかあるんだよね。ちょっとオレ今急にキミのパパとお話ししなきゃいけないことが「ケイトはね、キミじゃなくてケイトだよ」
 これがリドルくんの子供か。この親にしてこの子ありってこういうことを言うんだね。
「あーごめんね。ケイトちゃん。ケイトちゃんのパパとお話ししないといけないことができたから、あっちで待っててもらえないかな?」
「うんわかった〜」
 再び少女はにパーっと笑顔を作ると椅子を降りて、ケイトが指差していた本棚の方に向かっていく。
 素直なだけこちらの方がよっぽどマシだった。
「何か申しびらきは?」
 リドルの瞳は珍しく、死んだ魚のようだった。
「いや、あの、これは何と言うか」
「ふーん、歴代1に厳格だったと言われてるハーツラビュル元寮長が言い訳するんだ?」
「うう…。ああもう。」
 リドルは耳にかけていた髪をぐしゃりと崩す。
「うーん、いや別にないことはないよ。ほらかつての恩人の名前を〜とかはよく言うしね。確かオレもなんか爺さんだったか婆さんだったかの恩人から貰ってるよ。だけどさ、まあこれはあくまでもオレの中の倫理観だからリドルくんがどう思っているかは知らないけどさ、一人娘に高校時代の元カレの名前をつけるの相当どうかしてると思うよ。いくらリドルくんが頭ぽやぽやだとしても」
けーくんドン引き。そうケイトが言い放つとリドルは返す言葉もなかったのか頭を抱えて机に伏した。が、そのあと少しの時間が経ってからむくりと起き上がった。
「いやね、ボクがききたいのだけれど、キミとボクはそもそも恋人関係にあったのかい?」
「うっわこわ」
 え認めたんじゃないの?何でそんなさあ、「そういえば昨日の夕食は何食べたっけ?」みたいな、「そういえばキミの誕生日はいつだったっけ?」みたいなあっさり塩味世間話風だしみたいなテンションでそんなこと聞いてくるわけ?え、俺の一方的な勘違いでした〜自惚れ恥ずかし〜みたいなそんな、さ?
「ボクはケイトに好意を伝えたし、ケイトもボクに好意を伝えてくれていたけれども、ボク達がそもそも恋人になろうだとか付き合おうだとかそう言う話をした記憶は少なくともボクにはないと思ってね」
「まっっってリドルくんマジでいってる?あんなにベタベタしてたのに?じゃあリドルくんは、雨の日に傘に隠れて初めて唇にキスした時も、リドルくんの部屋に夜によんでくれてお泊まりしながらプラネタリウム見た時も、オレが誕生日にペアリング渡した時もなに?オレのこと恋人だと思ってないのにやってたってこと?えそれ逆にオレが超やばいやつみたいに聞こえない?まってオレ恋人じゃない男のためにあんなに眠れない夜を過ごしたの?ってかリドルくんは逆に恋人でもない人間に唇へのキスを許したり、夜中に部屋に招き入れたりしちゃうの?当時のオレがバカみたいにチキン野郎だったからいいもののリドルくんホント女の子みたいに可愛かったんだから気をつけた方がいいよ。食べられちゃう」
「相手がケイトだっったからそのままにしていたんだ。キミじゃなきゃそんな危ないことをこのボクがするわけないだろう。ボクのことをなんだとお思いだい?」
「貞操観念ガバゆる三歳児以下。」
「は?」
 あーもうほんとリドルくんのこう言うところが嫌だ。そうやってキョトンとした顔をして、まるで「自分は何も間違ったことをしていません。いかにも心外です」みたいな顔でオレに当時の全責任を押し付けるのはやめていただきたい。まあ確かにオレの方が先輩だっから訴えられるならオレの方だとは思うよ?思うんだけどさあ。
  まあでもなんかリドルくんってこんな感じの子だったよね。言葉の裏の裏を読もうとするオレと、額面通りにしか受け取れないリドルくんで会話を成立させようとすることの方が間違っている。ホントにね。
「リドルくん、これはずっといってるけどさ。マジで他人のこと信用しすぎない方がいいよ。これは人生の先輩からの助言」
「キミとボクの人生の経験は一年しか変わらないだろう」
 その呆れたような声に、オレの思いは多分一生通じないんだと悟った。キミはホント、なんかそういう子だよ。
「あーもういいやうん、はい。そうだね〜」
  こめかみに寄りそうなシワを人差し指と中指で伸ばしながら笑みをつくった。リドルくんはなんだか不服そうな顔をしている。だからなんでだよ。
「うち来るんでしょ?もう来る?」
「ここから近いのかい?」
「繋がってるよ〜。駐車スペース余ってるからどっか停めてるなら持ってきちゃった方がいいと思う」
「分かった」
  リドルくんは椅子から立ち上がって長椅子に座ってなにか読んでいるケイトちゃんの方へ向かうと目線を合わせるように膝をおった。
  あ〜ちゃんとパパしてるんだなと思った。リドルくんはあの頃みたいに子供じゃなくて、ちゃんと親であの小さな女の子の父親なのだなと思った。
「じゃ、オレ部屋ぱぱっとだけ片付けとくから、帰ってきたら電話して。番号変わってないよね?」
「ありがとう。変わっていないよ」
 もう何年もたっているのに、未だに消したはずのリドルくんの番号を覚えてるのほんとやめたいなと思った。
━━━━━━━━━━━━━━━
改ページ
  16歳のケイト・ダイヤモンドにとって後輩として入ってきたリドル・ローズハートは異質な存在だった。
  友人であったトレイの幼馴染だと紹介されたから表面上仲良くしていたが、正直トレイくんコレと仲良いの趣味悪いな〜と思っていた。まあ、トレイくんメンヘラホイホイそうだし仕方ないな、と。
  2週間で前寮長に決闘を挑み、自分の力を使って高圧的に寮を運営していこうとするリドルはケイトの目から見ると明らかに要領が悪かった。ハーツラビュル寮生なんていかにルールの目をくぐり抜けて楽して行くかだとケイトは考えていた。だから怒られない範囲は適当に〜がモットーの前寮長の方針がそれなりに好きだったし、ルールを守る人たちのことを否定する気は無いけど巻き込まれるのは勘弁願いたかった。
  キッチリカッチリやっても上手くいかないのなんて世の中の常識だし、それよりもっと柔軟に懐柔していくべきだ。だから、そのまっくすぐすぎるくらいまっすぐな瞳が苦手だった。
  自分の主張を正しいと曲げないその姿はとてつもなく滑稽で、だけれどもそれはケイトが捨てたくなくて捨ててしまったものだったのだと思う。
  トレイを挟んで付かず離れずの距離で関わってきた2年間。トレイとケイトの間はそれこそ友人だったり、親友だったりという言葉があてはまったのだと思う。トレイとリドルの間にはきっと昔馴染みとか幼馴染とかがはいる。
  じゃあオレ達の関係性ってなんだったんだろうね、とケイトは思う。多分先輩後輩みたいなありきたりな間柄が入っていたのだろうか。
  そんな中でリドルはオーバーブロットを起こした。リドルとケイトが出会ってから2年がたった、ケイトが3年の秋を迎えた頃だった。
   ケイトはなぜだか胸の奥がカアッと燃え上がる心地がした。あの真っ直ぐさを潔白を誰かが妨げて汚、してしまうのはなぜだか許せなかった。許したくなかった。  許してしまったら、リドルが変わってしまったら、ケイトはこの先どう生きれば良いのだろうかとさえ思ってしまった。ただの先輩後輩だったのに。
  だから、なにか名前のある関係になりたかった。リドル・ローズハートという一人の人間の人格の中でどこか一部分でもいいから、揺るがせられる逆に言えば支えられる。そんな存在になりたいと願ってしまった。
  だから、面倒臭いことになるなんてわかってたのに、勢いで好きだと伝えてしまった
Latest / 296:24
文字サイズ
王子様にもヒーローにもなれなかったから、せめてガラスの靴がなくてもキミを見つけたいと願った
初公開日: 2020年09月27日
最終更新日: 2020年10月21日
ブックマーク
スキ!
チャットコメント表示
お誕生日の文
リドルくん生誕のケイリドを書きます
汐折
日常の一コマ。
降ってきた情景諸々を書き留めるだけの場所。読む際は小文字推奨でどうぞ。 小話に消化出来そうな物は拾…
藤宮
【修正作業】冒険者たち04
身体はこども頭脳は大人の恋愛要素なしの二次小説。5年前のものの修正作業。 続きはpixivにて。 h…
PUM
【修正作業】冒険者たち03
身体はこども頭脳は大人の恋愛要素なしの二次小説。5年前のものの修正作業。 続きはpixivにて。 h…
PUM