アッと言う暇もなかった。
クルーウェルのよく手入れされた白黒の頭髪は風に吹かれた花のように散り、それに見惚れるよりも先に液体が吹き飛ぶ。脳漿と血液、それから砕けた頭骨と、かけらのような皮膚であった。
学園に迷い込んできた獰猛なモンスターが校舎の至る所へ衝突し、嵐と紛うほどの咆哮でもって己の居場所を示しながら人気のない場所を求めている、その最中の出来事だ。
このナイトレイブンカレッジの教師であり、防衛魔法の授業を請け負うこともあるデイヴィス・クルーウェルがモンスター退治に駆り出されるのは必然。そしてまた、気の立った孤独なモンスターが誰も彼も構わず攻撃するのも、必然であった。
文字通り、声の一つも発する隙はない。知性の低い獣がやたらに放った衝撃波が、たまたまクルーウェルの頭を直撃しただけ。本当に、ただそれだけだ。
誰もが息を呑。グロテスクで衝撃的なワンシーン。
トレードマークとも言える毛皮のコートを靡かせながら、彼がゆっくりと倒れていった、その永遠のような一瞬。やにわに、その完璧な肢体が停止した。
ギュルル、と音を立て、空間が捻じ曲がっていく。時間が、歪められていく。
ツイステッドワンダーランドの中でも、このナイトレイブンカレッジに集まる生徒たちの年齢層はおおむね低い。彼らがこの存在を知っているかはまた別の話であるが、生徒たちの警護へ回っていた教師、学外への連絡を担っていた教師、学園への被害を抑えんとしていた教師たちは皆、まるで映像の巻き戻しのようだと思い至った。
「......報告書を、書かなければな」
全くの無傷。『ご禁制の遡行魔法』で事なきを得たクルーウェルは、彼のその特徴的な教鞭を構え直し、不敵に微笑んだ。
その後の一方的な制圧戦に関しては、もはや語るまでもない話である。
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初公開日: 2020年09月26日
最終更新日: 2020年09月26日
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