「僕、悪い子ですね」
徐に呟いた若紫の髪の彼、兵庫県の揺神は普段の真面目そうな表情を不安そうに崩した
この関係も、今日こうして合っているのも全部秘密、誰にもバレてはいけない関係
そんな関係を続けていることに思うところがあるのか、目を泳がせている
嘘もつけなさそうな彼に、色素の薄い髪をしたもう一人の青年、滋賀県の揺神は顔色一つ変えずに言葉を返す
「じゃあもうやめる?」
「えっ…」
驚いたように顔を上げた兵庫、それを見た滋賀は困ったような顔を浮かべた
「冗談です、すみません」
お互い黙ってしまったため、月の明るい夜、部屋は静まり返り、時計が時を刻む音だけが響いていた
だが少ししてその静寂は破られた
「滋賀さんって、透明になって消えちゃいそうですよね」
「夜の海とか、春の桜吹雪とかと一緒にすっと消えちゃいそうな…」
淡々と言葉をこぼす彼の表情はうつむいていてよく見えなかった
「じゃあ試してみます?海、連れてってくださいよ、僕のところにはないから」
「え、嫌ですよ、本当に消えたらどうするんですかもっと一緒にいたいですし、あの人に殺されるんですが…」
「置いていったりはしませんよ、消えるときは強引にでも一緒に連れていきますからね」
「嘘ついたら一生恨みますからね」
一瞬で空気が少し明るくなり、海に向かう準備をし始めていた
「手、繋いどきます?」
「え?」
夜に溶けていった上ずった声に、顔を上げると驚いた顔をしていた滋賀、普段触れ合うことをしない兵庫に驚いたのだろう
だが兵庫も驚かれたことに驚いていた
いつの間にか波打ち際を歩いていた足は止まっていて
波の音だけが夜に吸い込まれていた
「こうすれば消えることはなくなります、それにもう夜で人もいないですし」
「嫌ですか?」
「てっきり僕と手を繋いだりするの嫌なのかと思ってた、違うんですね」
「あ、いや、どうしたらいいか分かんなくて」
ようやく自分の言った言葉がどういうことかを理解したのか顔を赤く染め、
月明かりの差し込む暗い海に走っていくと服が濡れるのも構わずにどんどん水の中に入っていった
後を追うように滋賀も走っていくとすぐに追いついて腕を掴み、引き止めた
突然後ろに引っ張られたためバランスを崩すが引っ張った張本人の腕の中に収まった
「っと、大丈夫ですか?」
「兵庫さんが先に行ってどうするんですか」
「滋賀さん、このまま僕と一緒になりません?」
「え?」
「僕悪い子なんで、我儘なんですよ、だからいっそこのまま透明になっちゃえって」
「そうすればも隠す必要もないし、ずっと一緒です、悪い話じゃないでしょう?」
黙り込んだ滋賀の顔を覗き込むようにいたずらを思いついたような子供のような声で問いかけた
それでも黙ったままだったが、無言のまま口づけた
時間にしてはほんの一瞬だが、体感では何分にも感じられた
口を離すと、ちゃんと耳を澄まさないと波にかき消されてしまうぐらいの小さな声で先程の問いかけの返事をした
「いいですよ、そのかわり、後悔とかはなしですよ」
「一生、僕のそばを離れないで」
返ってきた返答に満足したのか「じゃあ行きましょうか」と言って更に深い方へと進んでいった
しっかりと手を握ったふたりはもう一度口づけて、でも今度は離すことなく真っ暗な海の底に消えていった
「なあ京都、なんで止めんかった」
「……」
「弟みたいなもんって言ってたんは自分ちゃうんか」
電話越しに聞こえてきた声は少しだけ震えていた
兵庫と似たような髪の彼は、一枚の写真を眺めたまま、一言も発することなくただうつむいていた
繋がれたままの電話、そこから聞こえてきたは、ようやく口を開いた彼は小さく言葉を紡いだ
「置いていかんといて」
大切な仲間をふたり同時に失った二人は、静かに涙をこぼしていた
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123:31
ななし@f7e533
止めなかった→止めんかった(疑問形なら止めんかったん)の方が関西弁っぽくなりますよ~!
124:08
月片夏月
ありがとうございます!関東民なので助かります…
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向き
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悪い子は透明に
初公開日: 2020年09月21日
最終更新日: 2020年09月22日
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コメント
47の滋兵です