「高糖度警報発令中!」
台詞「そんなの知らなかった」
 休日の昼下がり。村田は駅前の最近できたお洒落なカフェで、ぽつねんと一人でカフェモカを啜っていた。
「早く来すぎたかなぁ……」
 ぼそりと呟いて小さくため息をつく。十分前には既にここに座ってカフェモカを飲んでいたから、頼む時間やらを合わせると十五分は確実にここにいるということになる。
 この店の看板商品のカフェモカは、思ったよりも甘ったるくて、味が口にこびりついた。子供の頃は好きだったのだが、昔の味覚と変わってしまったのだろうか。
 残っていた最後の一口を一気に煽り、口直しにコーヒーでも頼もうかと店内を見回すと、窓の外に見慣れた立ち姿を見つけた。
「冨岡!」
 店の入り口から声をかけると、冨岡もきょろきょろと辺りを見回し、村田に気づいた。
「どこにいたんだ?」
「どこにって、この店の中にいたんだけど?」
 当たり前のように言う村田に冨岡は驚きを隠せていなかった。
「俺は、ずっと外で……」
「うっそだろお前、ずっと俺たち別のところで待ち合わせしてたのかよ」
 村田は店に入りながら、外を指さす冨岡を見てこれ以上ないほどに爆笑していた。
「はー、最高だわ」
 笑いも収まり改めて二人で注文口へ並ぶ。
「冨岡、どうする?」
「なにがあるか分からないんだが……」
 上の看板を見ながら首を傾げる冨岡。そうこうしているうちにすぐに順番が回ってきた。
「俺はコーヒー頼むけど……冨岡〜?」
「片仮名が難しすぎてわからない……」
 怪訝そうに眉間に皺を寄せメニューを見つめる冨岡。それを見兼ねた店員さんが「当店のオススメはカフェモカとなっております」とにっこり笑う。
 村田は心の中で「あれがどうなったらオススメなんだか……」と悪態をつくが、冨岡はふんふんと頷いている。
「なら、カフェモカに……」
「いや、コーヒー二つでお願いします」
 遮るようにコーヒーを注文する。
 本当感謝しろよ?
「少々お待ち下さい」
 百点のスマイルで店員さんは奥に掃けていく。
「カフェモカは嫌いだったか?」
 不思議そうな顔で村田の顔を覗き込む冨岡。
「さっきカフェモカ飲んだんだけど、甘すぎてあんまオススメできなかったんだよ……というか、俺が嫌いかどうかって関係ないだろ」
「匂い……とか?」
 冨岡が考え込むような仕草を見せるものだから、焦って否定する。
「もし嫌いでも多分そのくらい大丈夫だって」
「そうか。なら良かった」
 そっとコーヒーを受け取りクスリと笑って席へついた。
 ——と、ここまで来たが、誰がこれをデートだと思うだろうか。
 付き合い始めて約四ヶ月。お互い慣れてきたのか、距離感が前よりは縮まった。それはいい。ただ、恋人同士の距離感じゃないだろ!!!お察しの通り、キスも軽いのを数回とかしかしてないんだぞ?!中学生か?俺達は!今どき中学生でももっとお盛んだわ……
 カフェモカとは打って変わって苦めのコーヒーを啜りつつ、静かにキレる村田。もちろん顔には出していない。
「どうした?村田。何かあったのか」
 何故か気付かれるが。
 「なんでもない」と笑えば引き下がってはくれたが、なぜバレたのかすごく気になる。顔には出てないはずなのに。
 でも、今日こそは絶対に一歩先へ進んでやるんだ!
 実は、村田はこの直前に、友人たちにどうすべきか相談に乗ってもらっていたのだ。
 因みに結論は「チキらない」だった。多分相談する人員を間違えたと思う。
 昔から度胸だけはあった。気持ちの問題だったから、自分で何とかできた。その経験と自信を活かして!頑張れ俺!
 しかし腹は括っても何をいえばいいのか分からない。よって、ド直球で聞くしかない。
 ようやく話の切れ間を見つけた村田は、思い切って声を出した。
「な、なぁ」
 気合を入れすぎたのか、思っていたより大きな声が出た。
「?」
「あ、のさぁ……俺達って付き、合ってるんだよな……?」
 恐る恐る話題を切り出す。冨岡は、きょとんと不思議そうな顔をする。
「付き合ってなかったのか?」
 すこし混乱したのか、質問に質問で返してきた。
「いや、そういう訳じゃないんだけど……ほ、ほら、俺達あんま恋人っぽいことしてねえじゃん?そんで……ちょっと……」
「悪い、あまり表に出すと迷惑かと思って控えていたのだが、それでかえって不安にさせていたとは思わなかった」
「へ……?」
 ぽかんと冨岡のそれはそれは綺麗な顔を凝視する。
「村田、俺はお前に今すぐにでも触りたい」
 いつもと変わらぬ表情を変えず当たり前のように言う。それに村田は一気にぽっと顔を赤らめる。
「はぁ?!」
「そうやって照れるのもすごく可愛い」
 村田の頭は既にショート寸前だ。
「お前そういうキャラだっけ?」
「俺はただ思ってることを言っただけだ」
 相変わらず飄々としている冨岡。それに気圧され、村田はもう何も言えなくなっていた。
「そ、そうなのか……」
「キスだってもっとしたい。もちろんその先も」
「村田の魅力なら一生話せる」
 ムフフと笑う冨岡に村田は頭を抱えた。
「そんなの知らなかった!つか知りたくなかった!」
「本当か?」
「んあー嘘!だけど!」
 顔は既に茹でダコもびっくりなほど真っ赤に染まっていた。それを見てふっと冨岡が笑う。それを見て村田はついに突っ伏し、うぅと唸る。
「あーもう!甘いのはカフェモカだけでよかった!」
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まみ
軌道修正が無理やり過ぎて泣いちゃいそう()
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向き
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ぎゅむらワンライ
初公開日: 2020年09月19日
最終更新日: 2020年09月20日
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