秋の原に私たちは佇んでいる。
阿求と私と。二人で佇むのはとても気持ちがいい。
「小鈴?あんたそんなに楽しそうにしているのね」
「だってねえ、とても楽しいじゃない。こんな大きな野原が出てくるなんて面白いじゃない」
幻想郷では見ることの出来ないススキ野原は私たちを圧倒させる。なんて素晴らしいのか。なんて、美しいものだと感じさせる。
「あーあ、阿求はこれを覚えてられるんだもんね。羨ましいなあ」
「覚えていることは悪いことじゃないけれど、辛いことも全部覚えているのよ」
阿求は私の隣に立って笑った。それがどことなく悲しそうで。悪いこと言ったかな、なんて思ったりする。けど私はそれを知ることは出来なくて。でも寄り添うことは出来るのかな。
「ねえ、あんたはさ……いや、なんでもない」
「言いなさいよ」
笑って凄むように言われたので怯んでしまう。でも言うことなん出来なくてさ。私は笑って流してしまう。
そう言って私たちはススキ野原を歩いていく。ススキをかき分け、歩いていく。
するとぽつんと案山子がひとつ立っていた。
「なんであんなところに立ってるのかしら」
「知らないわよ」
私が阿求に聞くとあっさりと言われてしまった。ちぇっ、薄情者。
「阿求の頭で考えてよー」
「あのねえ小鈴。私は覚えてられるだけで新しいことは考えないと分からないの。無茶ぶりしないでくれるかしら」
「えーケチ。いいじゃんかー」
酷いなあ。なんてことを思った。
案山子はよく見るととてもボロボロになっていて。長年使われた形跡のようなものがあるのだろう。誰かが愛情を持っていたのかな。捨てられたのなら付喪神になってもおかしくないけれど。
「付喪神、じゃないんだねえ。あの唐傘お化けみたいなのかと思ったんだけど」
顎に手を当てて私は考えた。ううん、どうしてなんだろう。ススキ野原に案山子を立てる必要されるのかな。
「さあね。妖怪になっていなければそうなのよ。それでいいんじゃないの」
まあそうだけど。どことなく違和感はあったけれどその場から離れることにした。
私たちはまた歩き出す。
そうして疲れた頃に一つ洞窟を見つけた。
「あ、あそこ、出口じゃない?」
「はあ、はあ……長いこと歩いたね、帰れるならそれでいいんだけど」
うううんと私は伸びをする。さ、行こうと私は阿求に手を伸ばす。阿求は私の手を取って洞窟へと歩き出した。
こつ、こつ、と音が響く。二人分の音は響き渡る。
「なんか薄暗いね……」
「そりゃ洞窟だもの。暗いわよ」
なんか阿求に言われてばっかだな。まあいいか。
薄暗い中を歩いて、奥に光があるのを見つけた。あ、と私は阿求の手を離して走り出す。
阿求は私に手を振っていた。
「……阿求?」
「私はここから動けないの。一人で帰ってね」
「え、なんで?あんた一緒だったじゃない……」
「ほら」
トンと、私の背を押されて私は洞窟の奥へと……
*
はっと目が覚めた。
あれ、夢……?あんなにリアルな夢なんて無かったはずなのに。
「なんだったんだろう……ううん」
ムクリと店番の机から起き上がる。CLOSEにしようと思い、立ち上がる。
店口の戸に手をかけて前を見ると案山子が立っていた。
「うわあああああ!?」
驚いて尻もちを着いてしまった。
……痛かった。理不尽すぎだと思う……
痛い腰を上げて案山子を殴り付けた。
痛い!