多分都合のいい女だと思う。
女の人なんて選び放題、ましてや掛かる声の方が多いのではないかという憶測はあながち間違いでは無いと思っている。
平々凡々とした人生しか送ってこなかった私には、巡り会うことの無い人だ。
ぎらついていて、危うくて、それでも心に少し近づくと同じ人間なんだと思い知らされる。よく分からないままに、時を過ごして3ヶ月が経った。
『お夕飯簡単なものだけ作り置きしてます』
そうメモを残して自宅に帰るには少し遅い時計を見つめて、欠伸をひとつ。
お風呂も入ってしまった、でも天谷奴さんが帰るにはもう暫く時間がかかりそうだ。
帰ってきて、おかえりと声をかけることに慣れたのが少し怖くて早々に寝室の広いベッドへ身体を投げた。
次に目が覚めた時にはすっかり朝で、ベッドの温もりは特に変わらず家主の戻りは無かったのかと少し考えた。
リビングへ重い足取りで向かうと、メモの裏書に太いマジックで愛してると書かれた殴り書きの返事、そしてシンクに置かれた空のお皿たち。あぁ、きっとこういう所がまた私を人でなくさせてしまうのだろう。優しく抱くだけで充分幸せな時間を味わえたのに。
ゆるく上がる口角を抑えられずに、ざあざあと泡を流す水音に鼻歌が漏れる。
あまり望ませないでほしいのに、心はまだだと手を伸ばしている。