♧「貴方にとって有益と思われる情報は出せませんよ。イデアさんにせっつかれて書いたあれだけが大津波の顛末ですから。」
 それに随分と時間が経ってしまいましたし。そアズールは人間界において人魚に属するものだったとは思えないほど優雅な所作で紅茶を口に運ぶ。どうやら手土産にと持ってきた夜空梨のタルトレットはお気に召したらしい。僅かに上がった口角にホッと息を吐くと、柔らかに微笑んだ。
「良いんだ。俺は人魚について知らないし、それに君たちという存在に興味があるんだ。」
「とんだ変わり者ですね。流石イデアさんのお知り合いなだけはあります。」
 本の中に知り合いの名前があったし、共通の話題として出てくるのは仕方のないことだとは思っていたがまさかアズールから振られるとは思っていなかった。
「あいつと一緒にするのは止めてくれ。」
「どうして?同じ智天使でしょう?」
 確かにイデアは同じ智天使の階級にいる知り合いのような友人のような存在だ。けれど、過去の記録を求めるトレイとは違い、イデアが求めるのは先の未来だ。未来にある様々な可能性という智を求めている。人間の最先端を求めるのがイデアの在り方だ。
「あいつは変わり種だよ。懐古的な俺とは違う。」
「何も変わりませんよ。知りたいことを知ろうとする貴方たちはよく似ている。」
 大きな翼をはためかせて飛ぶ先が電子の海か天界の空かという違いなだけだとアズールが笑う。トレイにはその違いが大きなものに見えているが、まだきっとその在り方を理解できていないからそう見えているのだろう。
「それで?何が知りたいんですか?知識欲旺盛な天使さん?」
「好きな食べ物とか。」
「おや。」
「3人で遊んだ話とか…まあつまりは何でもいいんだ。俺が知らないことを教えてくれれば。その結果が大津波の行動なんだと俺が勝手に判断するから。」
 トレイたちにとって友人や知り合いというのは括りとして存在するだけのものだ。いくつかのカテゴリーに分けられ、いつか感情が芽生えた時に上手く作用できるように選ばれた友人。階級が変わるごとに増える知り合い。そういったもの。だからそこまで思い出と呼ばれるものはない。
 ケイトと出会ったのだって1200年ほど前だが、ケイトという存在をトレイという個が認識したのはそれから600年後くらいだ。トレイに感情が芽生えたのはもっと後のことだし、だからこそ友人との在り方も何もよくわかっていない。アズールを助けに行った2人の人魚の行動がそもそも理解できないのだ。
「やはり変わってますよ。貴方。」
「俺はこれでも智天使としては普通なんだが…。」
「天使としては普通でも心あるものとしては変わってるんですよ。」
 まあいいでしょう。そう言って話し始めた、人魚たちの生活風景。3人で行った場所。人間にいたずらした話。そのどれもがトレイには輝いているように思えた。
 アズールの話し方はうまくて、時間も忘れて聞き入ってしまった。そのせいだろう、トレイとアズールのほかに1人、観客が増えていることさえ気が付かなかった。
 「ばぁ♡」
「…うん?ええ、と…君は、」
 愉しそうにニコニコと笑いながらトレイの紅茶を奪って飲む彼にトレイは目を瞬かせた。
「知ってるんでしょ?オレたちのこと調べてたんだからさー?」
「……フロイド、か。」
「せいかーい!」
 双子の人魚であるはずの彼。その片割れであるジェイドはいまだ果の孤島に幽閉されている。それは悲しいことなのだろう。けれどトレイにその感情難しいものだ。
 悲しいもさみしいもトレイにはよくわからない。知りたいと思うが、それをどうすることもできない。
「…フロイド、君にも教えて欲しい。君たちのことを。」
「えー、ヤダ。だってアズールもう説明したんでしょー?」
 フロイドはどこからともなく椅子を取り出してテーブルを囲む。トレイから奪った紅茶はそのままに、テーブルに置かれた茶菓子へと手が伸ばされた。
「オレはそんなに説明とくいじゃねーんだよね。そ〜いうのはジェイドかアズールがしてくれてたし。」
ねます!!!ありがとうございましたー!
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右トレをのんびり書く
初公開日: 2020年09月05日
最終更新日: 2020年09月05日
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おねむりクロトレと天使ぱろジェイトレはたぶん書きます