溶けたアイスが手首を伝うのを横目に見る。直前まで固形だった白い液体を赤い舌が掬っていくが、行く道は枝分れをしていて追い付いていない。それでも気が付かないように舐め取っていくタイガに対して夏の暑さで思考が止まってしまう。
「……タイガきゅんお行儀悪い」
「うるへぇ」
なんとか絞り出した声で咎めると、手に持ったままでいたアイスの棒を奪い取った。あ、とタイガは一瞬だけ間抜けな表情をしたがすぐに悪態が返ってくる。可愛げの無い所が可愛いけど、こういう時ぐらい感謝しても良いのになぁ。まぁ夜とか室内で二人きりの時は甘えてくれることが多いし、所謂ツンデレみたいな態度に何度も心を射抜かれてるのだけど。
「おれっち手を繋ぎたいからさ、はやくそれどうにかしてよ」
「なんだそれ」
「コイビトと手を繋ぎたいって思うのは普通でしょ?」
「……べたべたしてんだろ」
最初に伝えた言葉は間違いないのだけど、これを更に指摘すると機嫌を損ねてしまうからあえて俺がしたい、ということを伝えながら開いた手でタイガの手を握る。おねだりにも似た言動にタイガは何かと弱い。
しかし受け入れられると思っていた手はすぐに振りほどかれてしまった。視線が俺から何度か外されて動いてるところを見ると、口にしたものが理由ではないのが分かる。それに突き放すようなその口調をしているけど、不機嫌というよりも困ったようなもので予想通りな反応だと言っても良いのではないだろうか。
緩みそうな口元を抑えるようにしていると、タイガが持っていたアイスが俺の手にも落ちる。やってしまった、というよりは案外時間がかかったな、と思う。さっきのタイガがしていたように伝っていくアイスを舐めながらタイガの方へと視線を向けると、顔を真っ赤にさせて口をパクパクさせていた。
「これならお揃いでしょ」
「ば、馬鹿じゃねぇの!?」
「タイガきゅんよりは頭良いけどね」
「そういうことじゃねぇ!」
溶けているアイスを差し出してあげると大きな口で簡単に食べきってしまう。手元に残った棒にはあたりの文字。夏のアイスは小さな幸せを何度も運んでくれるなぁ、なんて考える。そして僅かにまだベタついている手でタイガの手をもう一度とると小さく肩が跳ねたが、呆れたように溜息をつかれてしまった。それでも繋いだ手は今度こそ振り払われずに、ぎゅっと握り返された。
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20200904カケタイ
初公開日: 2020年09月05日
最終更新日: 2020年09月05日
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「溶けたアイスが手首を伝う」~「繋いだ手は今度こそ振り払われずに、ぎゅっと握り返された」