放課後の教室なんてベタすぎる舞台だなと思う。
それでも俺は彼を待っている。約束をしたわけでもないんだけど、放課後ここに来ることは知っているから。
台本を片手に教室の机の間を抜けていく。
今日は机を動かしたくなかったんだ。塞げる逃げ道は潰しておくに限る。
ここにいる言い訳はいくらでも用意できる。机を動かさない理由もどれだけ用意してあげようか?
教室に誰かが近づいてくるのがわかる。それが彼だというのも。ガラッと開いた扉から覗いたのは待ち人。
「青ちゃんまた教室いんの?部室は?」
「ちょっと集中して台本読みたくて。台詞を変えたいんだけど台本を作った子にどう言おうか迷ってて」
もっともらしいことを言いながら困った顔をする。
いつも通り笑って話をしてるけど、俺が近づくたびに少し距離をとってるのはわかる。けど、そっちにいっちゃダメだよ。ほら、逃げ道がなくなった。
「青ちゃんさ、なんか変じゃない?」
俺もそう思うけど、触れてみたくなったんだ。好奇心なのか好意なのか万への想いをきちんと整理した自分がどうなるのか知りたかった。自分を懸想している相手の表情をみてみたいと思った。強面なんて言われている疾風ならなおさら見てみたかったんだ。
「たしかに変かもね。疾風のこと抱きしめたいって思ってるから」
疾風はまだ俺が万のことを懸想していると思ってる。だから余計混乱していると思う。
そのほうがいい。きっともう二度と見ることの出来ない表情をしてくれる。
抱きしめてキスをしたらどんな顔をするんだろう。触れるだけじゃなく、舌を入れてみたらどんなふうになるんだろう。
きっと混乱しながらも全部受け止めてくれる。
最後にはちゃんと好きだって伝えるけど今は戸惑ってる疾風の顔がもっと見たい。
戸惑ってる疾風がなんだかかわいい。
「抱きしめて、いい?」
戸惑いながらもいいよって両手を広げてくれる疾風は優しい。きっと俺にだけみせてくれる優しさ。俺もその優しさを持ってるから知ってるよ。
抱きしめるだけで突き放されないようにわざと普段開けていないシャツのボタンをあけて、いつもよりさらに下の位置から見上げる。疾風ってこういうベタなのに弱いでしょ。
だきしめるというよりも疾風の胸に体を寄せてただくっつく。心臓が跳ねるのがわかって楽しい。
このままキスしたらとうなるんだろう。背中にまわすはずだった両手は疾風の頬を掴んでいた。
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踊らされて
初公開日: 2020年08月15日
最終更新日: 2020年08月15日
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とあるイラストを見て滾った