今日も1日の全てを終えて
二人で一緒にベッドに入る。
奥に実弥、次いで玄弥がベッドを軋ませる。
少し暑くなってきた今の時期に合わせて、
薄手にした掛け布団を被り、体を深くベッドに沈み込ませる。
「玄弥、もっとこっちに寄れぇ」
「ん、」
向き合っていた体が引き寄せられる。
目の前にはお互いの顔が。
「ふふ、」
「んだぁ?」
「兄ちゃんて、童顔だよね」
「はぁ?」
「可愛い」
そう言って実弥の顔を両手で包み込む玄弥
「今更すぎねぇか?」
「自覚あったんだな」
「そりゃおめぇ、何遍もお前の弟に間違えられっからよぉ。」
「いっつもショックうけてるよね」
「うるせぇ」
包み込む手の中で、悪態をつきつつも笑う実弥。
玄弥はそのまま実弥の長い睫毛を瞼からなぞり上げる。
「こんなおっきい猫目してるからだよ」
「それを言うならおめぇだってうまそうな目ぇしてるじゃねぇか」
実弥も玄弥の顔に手を添わせ、涙袋をなぞる
「うまそうってなんだよ」
綺麗なアーモンドの形をした目が、柔らかく細められる
「俺にしかわかんねぇかもなぁ」
愛しいその目が己を映してくれることが、どんなに尊いことか、実弥は知っていた。
玄弥のこの瞳の価値を知っているのは、自分しかいないと、そうあればいいと、願い続けて。
「なにそれ」
咎めるようでいて、そうでない声音が
耳に落ち着く。
「ほら、もう寝っからあっち向けぇ」
「なんだよー向き合って寝るの嫌なのかよー」
「このまま抱きしめたらおめぇ息できねぇだろ」
「んふ、窒息しちゃうね」
「だぁらほら、」
「はーい」
いひひ、と笑いながら大好きな瞳は反対を向いてしまう。
「でもさ、」
「あぁ?」
「寝てる間に、いつの間にか死んじゃってるのも、いいかもね」
「おい物騒なこと言ってんじゃねぇよ」
実弥は玄弥を抱きしめる力を強くする
「ん、......だってさ」
「続けんのか」
玄弥は抱きしめる実弥の手をギュッと握りしめて
「だって、大好きな兄ちゃんに、こうして抱きしめられながら、いつの間にか死んでましたーって、これ以上ないくらいの良い終わり方だと思うんだよね」
「バカか、んなわけがあるかよぉ」
実弥は抱きしめるだけでなく、玄弥の体を囲うように体をゆるく曲げ、足を絡みつかせる
「えー、そうかな、俺はそれであの世へ行ったとして、幸せだったな、って思えるよ」
「んなくだらねぇことですぐ死んでんな。つかもうやめだ、んな話し」
手の代わりに、玄弥の首筋に顔を埋めて、
何も聞こえないよう、玄弥の皮膚に耳を押し付ける。
片方のガラ空きの実弥の耳に、玄弥が手を這わせ
「うん、そうだね、もう寝よう」
そう言って、優しく塞いだ。
静かに響いていた二つの呼吸音は、
次第に深くなる夜に、境界をなくして
緩やかに溶け込んでいった。
夜を超えて、朝日が昇る頃。
この愛しい人は目を覚ますだろう。
新しく一日の始まりを迎えた時、彼の見るもの、聴くものが全て、幸せなものばかりでありますよう、脅かすものがありませんよう、そう、毎日願っている。
そして、どうかその瞳がその耳が、いつまでも自分に向けられていますように。
そう、願ってもいる。
「「(おやすみ)」」
「(玄弥)」  「(兄ちゃん)」
寝ている間のしばしの別れ。
そしてまた明日一番に会いましょう。
一番大好きな人。
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寝る前の実玄
初公開日: 2020年08月13日
最終更新日: 2020年08月13日
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ベッドに入って寝るまでの二人