灼熱とはよく言ったものだと思う。長い梅雨をじっと我慢し続けた太陽が、これでもかと笑みを浮かべ、外気をぐっと温めている。
少し会わないうちに伸びた髪が、いつもならふわりと風に揺れるのに、額にぴったりくっつく。汗の粒が、首筋を伝い、ゆっくりと背中へ流れていった。一連の動きに、なぜか目が離せなくてじっと見つめてしまう。
「なんですか?」
「……いえ、なんでも」
まさか、見ていました、とは言えなくて曖昧にした。そう言っている間にも、滑らかな輪郭を沿うように、また一粒、引力に従う。
「それにしても暑いですね」
光の強さに大きな瞳を細めながら、鏑木さんが空を見上げる。白い肌を赤く染め、うんざりしたように呟いた。
「暑いのは苦手ですか?」
「夏自体は嫌いではないですが、この気温は……」
この会話を聞いても、日差しは弱まることを知らない。
久しぶりに鏑木さんと一緒に帰ることができ、心がふわふわとしている。この浮遊感は、2人で帰っていることだけが理由ではない。
「鏑木さん、お誕生日もうすぐですよね」
8月に入り、鏑木さんの誕生日が近づいていた。年に一度の特別な日、出来ることなら2人で過ごせたらいいなと思う。
「そうですね、もうそんな時期になりますね」
「……当日のご予定って」
意を決して恐る恐る訊いてみる。鏑木さんは、頭の中を探るように斜め上に目線を移した。
「奏さまのご自宅でパーティー、その後私の家でもありますね」
「……ですよね」
分かってはいたけれど、ギッチリと詰められた予定に、わたしが入る隙は1ミリも無さそうだ。
「あなたが一緒に過ごしてくださるんですか?」
空を見上げていた澄んだ瞳がわたしを映す。
「そう思ったんですけど……」
さすがに、付き合って間もないわたしが、朱雀さんや鏑木さんのご家族の中に入るのは図々しい。部外者だと思われてもおかしくない。
「わかりました」
突然、鏑木さんがにっこりと笑みを浮かべわたしを見つめながら言った。言いたいことがわからず、首を傾げる。
「……というと?」
「当日はあなたと過ごします。パーティーは前日でも次の日でも変わりませんから」
さらっとすごいことを話している気がする。焦るわたしを横目に、鏑木さんは楽しそうに笑っている。
「え、キャンセルするってことですか?そんな急に変更してご迷惑になるんじゃ……」
鏑木さんのために、たくさんの人たちが時間をかけて準備しているだろうに、わたし一人のためにそんなこと許されるのだろうか。
「わたしと過ごす日をずらしたほうが……」
すると鏑木さんは足を止め、わたしと向き合った。わずかに眉をひそめ、声を低くする。
「それでは意味が無いでしょう?……私は、あなたと、二人で、誕生日を過ごしたいんです」
言葉を強調させるように区切って
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向き
前日譚
初公開日: 2020年08月12日
最終更新日: 2020年08月22日
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プリロワ 鏑木元×ヒロイン
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