30日CPチャレンジ 普独 9日目
友達とみんなで遊ぶ Hanging out with friends
++++
「友達、なぁ……」
 お題を見た兄さんが、めんどくさそうに言った。お題、と言うのは、俺と兄さんが今チャレンジしている《30 Day OTP Challenge LIST!!!!》(30日チャレンジ)のことだ。恋人になったのに恋人になりきれない俺と兄さんが、兄弟から恋人になるための区切りとして挑戦しているものだ。一日一題。何某かによってあらかじめ決められているそれに、俺と兄さんは挑戦していた。
「友達、って……俺様一人楽しすぎるしなー」
 兄さんが困った様子で頭を掻く。一人楽しすぎる? あんなに人気者なのに?
「イタリアと日本では駄目なのか?」
「それはヴェストの友人だろ?」
 ちなみにこれは昨夜の会話だ。お題を見た兄さんが「フライングだけど」と言ってお題を教えてくれた。相手のあることなので、事前に連絡が必要だと思ったのだという。
 今回のお題が、ちょうど日曜日に当たるもので良かった。一日一題。今回は「友達とみんなで遊ぶ」だ。規則性のないそれらには、平日と休日の区別がない。毎日お題をこなしていこうと思うと、無理があるものも出てくるかもしれない。
「じゃあ、フランスかスペインを誘うか?」
「あいつらは悪友だぜ?」
「悪友は友達だろう」
 そう言うと、兄さんは不思議そうに目を瞬かせた。兄さんの交友関係はよく分からない。
「じゃあ、オーストリーー」
「却下」
 すったもんだの結果、イタリアと日本と一緒に遊ぶことにした。
「プロイセン君がいるだなんて、めずらしいですね」
 日本が微笑みながら言う。昨日の今日で日本と遊べるか心配だったが、ちょうど出張だかなんだかでヨーロッパに来ていたという。人のことは言えないが、日本は働き過ぎだと思う。
「少し、な。……駄目だっただろうか?」
「いえ。師匠にお会いできて嬉しいですよ」
 にこっ、と日本が笑う。兄さんが後ろで小さく「ケセッ」と笑い声を溢した。
「タテマエ、かー?」
「違いますよ」
 ふふふ、ケセケセ、と笑いあう日本と兄さんが、目で何か会話をしている。日本と兄さんの交流は、俺が幼いころからのものだ。そのため二人で仲良くしているのを時々目にする。ゲームの話だったり、昔の話だったり。俺はその中に入れないので、少し寂しい……と思ったりはしていないぞ。断じて。
 ちなみに、イタリアはまだやってこない。集合時間ちょうどに来るとは思っていなかったが……やっぱりか。
 はぁ、と俺は大きくため息をついた。
「イタリアはいつになったら時間を守るようになるんだ?」
「まあ、お国柄ですからね」
「日本。甘やかすのは良くないぞ」
「すみません」
 悪びれない表情で日本が言う。
 ふむ。イタリアが来ないのならばどうしようか。
 今日はイタリアに国内を案内してもらう予定だ。イタリア国には何度も足を踏み入れたことはあるが、数年経つと街並みも変わっている。土地勘のない俺たちが勝手に歩き回るのも良くないだろう。
 スマートフォンをちらりと見るが、イタリアからの連絡は入っていない。
「イタリアが来るまで、お茶でもして待つか」
「ええ、そうしましょう」
「兄さんもそれで良いか?」
「おう!」
 そういうことになった。
 結論から言うと、喫茶店に入ったのは間違いだったかもしれない。
 隣に座る兄さんと、正面に座る日本が、昔話に花を咲かせている。
「あン時の日本、ドイツ語へたくそだったよなー」
「慣れない発音だったのですから、仕方がないでしょう」
 そう言いながらも、日本は楽しそうだ。兄さんだってそうだ。楽しそうに会話をしているが、俺はその《あン時》を知らない。
「今は言えるか?」
「言えますよ。――Sternhimmel」
「おっ、完璧だな!」
 普段世界会議に出ない兄さんからすれば、久し振りに日本に会えたことが嬉しいのだろう。気持ちはよく分かる。……分かるが。
 もやもやもや。
 心の奥に何かが溜まる。兄さん、貴方の弟は貴方の隣にいるぞ?
 イタリアのお菓子、アマレッティを一つ放り込む。直径二センチ程度の球体のそれは、俺の口の中であっけないほどに容易く崩れた。アーモンドの香りが口いっぱいに広がる。美味いはずなのに、そのアーモンドの香りすらなんだか苛立たしく感じた。
 いかん、いかん。
 友人と兄の会話に嫉妬するなど、良くないことだ。
 俺は気持ちを静めようと、エスプレッソを口に含んだ。苦い。まるで俺の心のようだった。
 友人と兄の会話に嫉妬をしてはいけない。
 分かっている。けれど……
 ――兄さんは俺の恋人なのに。
 そんなことを言えるはずもなく、俺はもう一つアマレッティを口に放り込んだ。
 イタリアが姿を現したのは、時計の針が一周してからだった。イタリアにしてはむしろ早いほうだろう。
「チャオー!」
 陽気に挨拶をするイタリアの頭を小突く。
「痛っ! 痛いよドイツー!」
「遅れるときは連絡しろと、何度言ったら分かるんだ」
「だってぇ。良いお天気だなぁって思ってたら気持ち良くなって寝ちゃってたんだよー」
 俺は再びイタリアの頭に拳を振り下ろした。
「痛っ!」
「まあまあ、ドイツさん。それくらいにして」
「イタリアちゃん、チャオー!」
 俺を宥める日本の隣で、兄さんがイタリアに声を掛ける。大げさな身振りで、全力で手を振り、もはや叫んでいると言っても過言でないほどの大声でイタリアのことを呼ぶ。
「イタリアちゃんは今日も可愛いなー! 俺様今日イタリアちゃんと会えるの楽しみにしてたんだぜ!」
「ドイツ、許してよー。お詫びに素敵な場所案内するからさ!」
「うおおおお、イタリアちゃん、楽しみだぜー!」
 前から気になっていたのだが、イタリアはどうして兄さんのことを無視するのだろう。気になりつつもずっと聞けていない。多分これからも聞くことはない気がする。
「それじゃあ、しゅっぱーつ!」
 マイペースなイタリアの号令で、徒歩観光が始まった。
 結論から言うと、イタリアを待ったのは間違いだったのかもしれない。ただひたすら、兄さんがうるさかった。
 兄さんがうるさいのはいつもだが、今日は特にうるさかった。ことあるごとに「イタリアちゃん」「イタリアちゃん」と声を掛けては華麗にスルーされている。……めげないのだろうか。
 自国だけあって、イタリアの案内は素晴らしかった。自分だけなら入らないような路地裏や、隠れた名所などを教えてくれる。その中にはローマ帝国が活躍した時代のものもあって、テンションが上がってしまったのは内緒だ。
「それでねー、ここが俺のとっておき!」
 数歩先を駆けていたイタリアが、振り返って両手を広げる。俺たちが今居るのは、小高い丘の上だ。そこから見る景色は、夕陽に照らされてとても美しいものだった。
「ほぅ……」
 思わずため息が漏れる。眼下に見える家々が、夕陽に照らされて赤く染まっている。旅行のガイド本には載っていない場所だ。イタリアに連れて来てもらって良かった。
 そう思うのに、どうしてか俺の心は晴れなかった。イタリアの傍で笑う兄さんの姿と、先ほどの、日本と楽しそうに笑う兄さんの姿が脳裏から離れない。
 俺は一体どうしてしまったのだろう。
 兄さんと一緒にイタリアと日本と遊ぶだなんて、これが初めてじゃない。イタリアに絡む兄さんを見るのはいつものことだったし、日本と昔話をしている兄さんだって今までに何度も見ている。その時はむしろ、昔の兄さんの話が聞けるのが楽しくて俺だって積極的に兄さんと日本の会話を楽しんでいたはずだ。
 ちくり、と胸の奥が痛む。
「ドイツさん? どうされました?」
「いや……大丈夫だ」
 これが恋人になるということなのだろうか。もしそうだとしたら、恋人になるというのは良いことだけではないのかもしれない。俺の中にこんなに醜い感情があるだなんてこと、俺は今まで知らなかった。
 俺の心臓は脈打つたびにチクリチクリと痛んで、悲しみを訴えてきた。今日はきっと眠れないだろうな、と俺は思った。
 結論から言うと、《30 Day OTP Challenge LIST!!!!》(30日チャレンジ)に挑戦したのは間違いだったのかもしれない。
3462文字 58分
カット
Latest / 58:55
カットモードOFF
12:18
いわし
わああああハートありがとうございます!!!
12:50
おくすりさん
お邪魔してます!🥰🥰
13:11
いわし
わああああおくすりさんありがとうございます! ゆっくりしていってくださいー٩(ˊᗜˋ*)و!
19:06
おくすりさん
ひっルートヴィッヒさん可愛いですうわあああ(返信はお気になさらず!本当に大丈夫です!)
58:12
いわし
完成しましたありがとうございましたー٩(ˊᗜˋ*)و
58:26
いわし
おくすりさん、コメント嬉しかったですありがとうございましたー!
チャットコメント
文字サイズ
向き
チャットコメント通知
30日 CPチャレンジ 普独 9日目
初公開日: 2020年08月10日
最終更新日: 2020年08月10日
ブックマーク
スキ!
コメント