「えっと、カーマちゃんと、その、お付き合いをさせていただくことに、なりました!」
「それはそれは。お慶び申し上げます。」
 つい大仰に祝ってしまったが、それは本心から出た言葉だった。
 ありがとう、と照れ臭そうに笑顔を浮かべる”マスター”は年若い少年だ。信綱には不可解だったが、何の因果かあのように陰気な神を見初め、紆余曲折あってようやっと結ばれたのだった。
 少年の初心な笑顔に、こちらまで顔がほころぶようだ。実際の信綱の頬の肉が動くことはなかったが。
八つ当たりやら暇つぶしやらで体を弄ばれる日々も、正式にお役御免かと思うと晴れ晴れしい。被害を減らすためにも、信綱は全身全霊をかけて藤丸の恋をバックアップしたわけだが、この恋の成就のために伏せてあった事実を思い出した。
「…下世話な話ではありますが、閨事も既に…?」
 ぶわっと顔を真っ赤にする少年に直截な物言いを申し訳なくなったが、小さく頷いたのを見て、信綱の杞憂は全て晴れたのだった。
 もうあんなものの相手をせずに済む。
 この解放感(ここ違うよなー)によって、知恵伊豆ともあろう男が口を滑らせる。
「では、後日軟膏などお持ち致します。新しい物がまだあったはず。あれは長大なばかりで思いやりに欠けるところがあるでしょう。魔術師殿が尻を痛めて職務に差し支えるなどあってはなりませぬからな」
「え?」
 ぽかんと口を開けた少年を見て信綱は己の失言を悟。
 そこからの彼の行動は早かった。まずは両手を付き低頭する。
「之は拙者の早合点に御座いまする。お聞き流しくださりませ。用向きは以上に御座いましょうか。拙者は所用ができましたのでこれにて」
 吐き出される言葉も淀みない。
 藤丸が声を出すより早く、部屋を退出する。
 普段は楚々と歩く廊下も、全身の煮えたぎる血をそのまま表したかのような跳躍で駆けていく。ある部屋の前で泊ったかと思えば、抜刀し構えた。
「カーマ様ご在室であられるでしょうか疾く戸を開けよ」
「あなたのそんな早口聞いたことないんですけど!? 絶対開けませんよ!」
 咄嗟の判断を誤りがちな愛の神は、居留守を使うことはできなかったが、扉を開けないだけマシであった。舌打ちをしても信綱はまだ止まらない。
「誰かある!」
「はっ」
 影もなかったはずの廊下に赤毛の少年が現れる。信綱は刀を鞘に戻し、なにやら彼に耳打ちしてすぐ去っていった。
「カーマ様、信綱殿に何かなさったのですか?」
 赤毛の少年――風魔小太郎は、存外親しげに話しかけてくる。カーマとしても、このカルデアは長く居たい場所だ。まだむず痒い感覚ではあるが、恋人、恋人ができたのである。
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原稿を書きたい
初公開日: 2020年08月08日
最終更新日: 2020年08月08日
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コメント
「遠くへ行きたい」のニュアンス
親子サンドイッチの受け伊~多分完成しない ごめんね~
えふじおイマガワ親子×伊さんのお話だよ。3年以上文を完成させていないので、これも完結までいかない可…
R-18
ぬーのぶ