「……ここは……?」
『何だ、眠そうな顔だな。レイシフト酔いってヤツでもなさそうだが。眠いならまだ寝とけ。だが、起きてる理由があるなら寝るな。……聞こえてるか?』
「……………………………」
『ったく何なんだ。俺は忠告したからな。』
『パツシィさん、どうかしたの?あ、×××さま。おはようございます。……?×××さま?』
『どうしたも何も、その調子だ。変なものでも喰ったのか、
変な歌でも聴いたのか。』
『お歌?』
『……ああ。おまえの故郷に、歌はあったんだったかな。』
『はい。お歌は、七つありました。御使いのお歌が四つと、巨人のお歌が三つ。わたし、御使いの二つ目のお歌が好きで―――そ、そんな事より!×××さまの事です!寝台で休ませてあげるのが……それとも、お薬……?』
『或いは医者に診せるかだ。』
『いしゃ?』
『この辺りに詳しいヤツは……お、アイツがいたか。おーい!アーシャ!こっちだ、こっち!馬も来い!』
『えと……おはよう、ございます……?あっ、おにいちゃん……どうしたの……?おなかいたい……?』
『馬、と。馬と私を呼んだのはどなたですか?ええまあ、呂布は馬の如き巨躯の将ではありますが。私はアーシャ殿と父君を乗せて、朝の清涼な空気の中を駆けなくてはならぬ身。ですので失礼しますよ。さ、アーシャ殿。我が背に。』
『で、でも、おにいちゃん、元気なさそう―――』
『ん……おや。確かに顔色は良くないようですね。』
『そうよね、やっぱり!どうしたらいいのかしら……』
『どうもこうもありますまい。この御仁、どうやら歌を聴いているようですし。』
『やっぱりそれか。』
「…………」
『×××さま?だいじょうぶ?』
『聞こえてないんじゃないのか。歌を聞いちまってるんなら、どうにもならん。こいつ次第だ。』
ーーー
『バイタルもフィジカルも基準値クリア、っと。んー、キミってば、呆れるくらいに健康優良児だねえ。でも、無理はしてるよね。どうかな。バイタル、肉体面の負荷はじっくり観測できるけど、問題は精神面。メンタルさ。これもある程度はね、脳波測定やら、脈拍血圧の計測なんかで見える事もあるけど。……キミ。問診をやり過ごす方法とか、本能的に理解してない?そりゃあ、何度も何度も同じ事をしてれば分かるかもだけど、ダメだからね。いいかい?×××。キミは、私たちのためにテストで満点を取らなきゃいけない訳じゃない。キミは、自分自身のために、テストでありのままに失敗しておくべきなんだ。ん?……でも代わりがいない?そうだね。そういう事情もあるにはある。それでも、さ。私たちに―――心配と、対処ぐらいはさせてくれよ。それぐらいならいいだろ?』
「は い」
『……ありがとう。』
ーーー
『あの二人だよ、あの二人。いつからあんなに仲良くなってたんだろうなあ。まるで大学―――いや、ハイスクールかな。自分が研究機関にいる事を忘れそうになるよ。ああ、悪い意味で言ってるんじゃないぞ。良い意味でさ。俺のやってる仕事自体は地味なもんだが、ああいう……可能性ある若者たちの姿を見ると、な。思うところもあるっていうか……いや、いや違うからな。変な意味じゃないんだぞ。多分、故郷に年の離れた妹がいるせいだ。あの二人を見てると、自然と感傷的になるのは。―――おっと。噂をすればだ。俺が話してたことは言うなよ、じゃあな!言うなよ!いいな!』
『あ、先輩!おはようございます。』
『おはよう、×××。……?何だか、随分と顔色が良くないようだけど。基地の外にでも出たの?』
『先輩、本当に……真っ青です。尋常ではない状態に見えます!』
『そんなに―――?』
『は、はい!普段の先輩とまったく違います!危険な状態と思われます!すぐにドクターのところへ行きましょう!』
「ドクター」
『■■■■■です!オフェリアさん、ひとまず鎮静の魔術を……!』
『分かったわ。動かないでね、×××。』
ーーー
「新所長?」
『新所長?何だねそれは。私は、時計塔から派遣された歴とした査問官だが?困るよシオン君。部下の教育は徹底してもらわないと。』
「じゃあ、所長は……」
『君たちの所長は君たちの所長だろう。というか……もしかして所長更迭?ほんとに?元ロードともあろう人物を更迭とか、ど、どんなキテレツ組織を査問に来たのだ私は……!い、いや。いやいやいや。そんなハズはない。よく見ればこの若者、顔色がヘンではないか!どうみてもまともではないぞ―――』
『あら、本当に。これはいけません。至急治療が必要かと。ドクター。ドクター!お休みのところすみませんが、急患です!』
『■■■■■■■■■。■■■■■■■■■■■■■■■。■■■■■■■■■、■■■■■■■■■。■■■■■■■■■。■■■■■■■■■。■■■■■■■■■。×××君。』
「あなたが、ドクター?」
ーーー
―――たぶん ゆめを みた。
―――いない はずの ひとたち が いた。
―――うタ。
―――うた が キ こ エ ル。
『おまえの魂はおまえだけのものだ。』
―――でも この ゆめ。
―――いない はずの ひとたち が いる。
―――いるん だよ。
―――もっと はなしたい。
―――みんなと。
―――もっと いっしょ に いたい。
***
『おはようございます。藤丸立香様。』
静まり返無機質なアナウンスにふと、顔を上げた。あれ、ここはカルデアだろうか。自分はいつの間にカルデアに帰還したのだろうか。…帰還?何処から?辺りを見回して首を傾げた。普段見慣れている桃色の髪の少女が傍にいないのも不気味さを増長している原因の一つだろうか。
『藤丸立香様。貴方は敗北者です。』
不気味さに気を取られて反応が僅かに遅れてしまった。“敗北者”とはどういうことだろうか。再び首を傾げたものの、質問を受け付ける時間は無いようで無機質なアナウンスが淡々と真実を突き付ける。
『敗北者にはあるゲームに参加していただきます。ゲームのルールはいたってシンプルです。あなたの味方は僅か数騎。何騎いるか分からないその味方と共にその他大勢の敵となったサーヴァントの方々を全員殺す。それが達成されればあなたの勝利となります。逆にあなたが死んでしまった場合はゲームオーバー。あの世界に未来はありません。説明は以上です。―――では、健闘を祈ります。』
情報の洪水。溺れてしまいそうなその波から顔を出す間もなく、廊下の端から人影が現れた。特徴的な黒い外套にお面。指揮棒を携えてこちらに向かってくるそのサーヴァントには見覚えがあった。『味方は数騎。敵はその他大勢。』さっきのアナウンスが再び脳内で響き、最早祈る様に声を絞り出して彼の名を舌に乗せた。
「サリエリ…。」
彼はピクリと反応を示した。その一瞬で姿が変わった。第二再臨の姿である。ヒトとしての表情が窺えるはずのその姿で、サリエリが浮かばせていたのは苦悶の表情であった。その表情を更に歪めた。祈る様に言葉を紡ぎ、彼が叫んだ。それは、ある意味自分の甘さを、絶望を突き付けられたのと同義だった。
「マスター!令呪を使え。私は君に殺されなければならない、でなければきっと私は君を殺すだろう!」
姿が再び変化した。ゴッドリープ!と叫び、怒り狂う第三再臨のサリエリにはもう、疑う余地はなかった。彼は、敵だ。自分の命を狙うモノ。殺さなければならない相手。心は決まらない。けれど、殺されることだけは嫌だった。あのアナウンスは自分の死はあの世界の終わりだと言った。その因果関係についてはよく分からなかったけれど、自分の死が良くないこと、本来あってはならないことだということだけは分かった。ならば、動かなければならない。
「令呪を以て命ずる!俺の味方がいるなら…誰でもいい、助けてくれ!」
赤い光が瞬いて、消えた。即座に響く金属音。大して重い音ではなかったその音が再び聞こえることはなく。その音の主は自分の前に立ち、剣を構え、自分を守るように立っていた。
「あああああああもう!なんで俺なんか呼ぶんだよ!もっと他に誰かいただろこのアホ!」
この悲鳴じみた叫びがなければ、素直にかっこいいと思えたのに。そこが彼の魅力(?)でもあるような気がした。戦力的には心許ないかもしれない。けれど、あの海を共に駆け抜けた彼が味方であることは自分にとって大きな救いだった。名前を呼ぼうとして、遮られた。俺が勝てるわけないだろ、と叫びながら手を引かれて走り出す。…いやいや、まさかの逃走ですか。イアソンさん。
真っ直ぐだったり、ゆるくカーブしていたりする奇妙な廊下をただただ駆け抜ける。後ろからは相も変わらずサリエリの叫びが聞こえてくる。イアソンの舌打ちが聞こえる。迎え撃とうと、彼が足を止めた瞬間声が聞こえた。走ることを促した声の主が影から姿を現したサリエリに弓を射かけた。サリエリの叫びは最早半狂乱といっていいもので、彼の恨むゴッドリープと自分の区別すらついていない様だった。
「我は死だ…我は神に愛されしものを殺すのだ!《至高の神よ、我を憐れみたまえ》!」
げ、ど頭上から声が響く。イアソンが自分の手を一層強く引いて背中に隠す。その途端、緑色のマントが翻り、聞き慣れた詠唱を口にした。自分に背を向けた彼の標的はサリエリで、それは暗に自分の味方だということを示していた。
「弔いの木よ、牙を研げ。《祈りの弓》」
大きな毒の樹がサリエリをその宝具の奏でる音ごと呑み込んだ。樹が枯れ果てた跡には僅かに漂う光の粒子だけが残っており、サリエリが消滅したことを物語っていた。緑色のマントの彼とイアソンに思わず抱き着いた。普段嫌がるイアソンも今回ばかりは明確な拒絶を口にせず、そんな二人にほんの少し救われたのだった。
Latest / 128:46
01:26
夏越 /トーヤ
お酒が入ってるのであんまり打つの早くないです
24:45
夏越 /トーヤ
まさかのお酒飲みきった…
チャットコメント
文字サイズ
題名未定 not腐
初公開日: 2020年08月07日
最終更新日: 2020年08月09日
ブックマーク
スキ!
チャットコメント表示
FGOの二次創作なんですけどBL表現ありません。というか大抵誰かがひどい目に合う…かも。
敵と味方が入り混じったカルデアで生き残る話。多分。
明るくないですがそれでもいい方だけどうぞ。
ノープランです。
ヘクマン原稿作業(R-18)
ヘクマンSS本原稿作業です。ゲームしたりTwitterしながら1時か2時までやってます。話が完成した…
夏越 /トーヤ
すていほーむタグのにしようかと思っているやつの途中経過
途中までは書いてるけど、なかなか進まないから、ちょっと気分転換兼ねて……
美夜
原稿作成
支部にあげているDC×とうらぶのクロスオーバー作品の作成
れんしょ