――なぁ
――大丈夫か?
ぼんやりと、声だけが聞こえた。どうにか目を開けると、誰かがこちらを覗きこんでいる。
なんと答えたのか、よくは覚えていない。その後いろいろと話をした気もするが、それも朧げだった。
次に気が付いたときには、家人が世話をしてくれていた。
どちらかというと親しくしていた者だったので、こちらを見て微笑んでくれたのを覚えている。
夢で少年を見たと話すと、柔らかな笑みのままで家人は言った。
「それは…座敷童かもしれませんねぇ」
座敷童。
宿る家に富や繁栄を齎すが、彼らが去るとその家は忽(たちま)ち禍(わざわい)に見舞われるという物怪らしい。
――家には結界が張ってあるのだからわるいものは入ってこられないはず。
幼心にそう考え、戯れに放たれたのであろう家人の言葉を受け入れた。そもそも夢なのだから真に受けるのもおかしな話だが、夢であっても他人に気にかけてもらえたということが嬉しかったのである。
あれはいつのことだったろう。
いつかまた遇うこともあるだろうかと思っていたら、彼はひょっこり現れたのだ。
夢の中、ではない。――驚いて己の頬を抓って確かめもした。あれは夢ではなかった。
さも古くからの友人のように彼は私と接した。見れば、私とそう歳も変わりないようにみえた。…だというのに、私は自然と兄に接するように応対していた。奇妙だと思ったが、自然とそうなってしまうのだから直しようがなかった。
彼はいつも神出鬼没だった。
けれどよくよく思い返せば、誰かと一緒に居るときには決して姿を見せないのだった。
いつも彼は、なにかとこちらを気にかけてくれた。それに甘えてほんの少しだけ愚痴を漏らしたこともある。
決して口を挟まず頷くばかりだったが、聞いてくれる者がいるだけでも随分と気が楽になったのを覚えている。
あれはいつのことだったろう。
もっと身体が丈夫であれば、家の為に働けるのに――と言ったとき、彼は突拍子もないことを言った。
――
色々あって少年と仲良くなった銀翅さん、「もっとからだが丈夫になったら、兄さまのことだって手伝えるのに」とぽろっと望みを言ってしまい、
それを聞いた少年に「手伝ってやってもいいが、その代わり俺の望みも聞いてくれ」と言われ、何かと問うと、「お前の身体をどうこうするには、お前の身体に入らなきゃならない。そこで、だ。お前の眠っている間、お前の身体を好きに使ってもいいなら手伝ってやる」
それくらいお安い御用だとなり、それ以来少年は現れなくなる
結局少年が何かというと、ガネさんの兄で贄にされた少年で、なぜ自分は死ななければならなかったのかを知りたいと願いみくちゃんの手伝いで蛇神寄りの存在にされていたただのお化け(蛇神は銀翅さんの家的には善神なので結界には引っかからない)。
赤子ではなく少年の姿で現れるのも、みくちゃんの配下になって妖怪として生かされているから。
少年はたぶん家をちょっと恨んでいるので、銀翅さんの身体を自分のものにできたらいいなーと思っている。でもなんか病がちで可哀想な奴だなーとちょっとずつ情が移り始めてて迷ってる。
銀翅さんの身体を借りた少年とガネさんの邂逅とかあったらいいなー
名前を名乗った瞬間に青年ガネさんが顔色を変えたらいいなー
ガネさんは恨まれててうっかり殺されかけたらいいなー
ガネさんがいろいろ説き伏せて納得した少年が往生して、でも水神が一時期体に入っていた影響で銀翅さんの病が不治になるといいなー
Latest / 56:15