一番上の兄がしつこく僕に絡んでくる。構わなくても、気にせずに纏わりついてきて、鬱陶しい。
「なあ! なあ、俺のチョロ松ぅ」
 あ、これを言い出したら構うまで止めないな。でも、僕だってやりたい事が山盛りある。ニャーちゃんのライブDVDを見返したり、先日読了したラノベを頭から読み直して伏線再確認したり。あと、求人情報を眺めたり。
 だから、兄さんを構ってばかりいれないんだ。
「暑いし邪魔だよ、おそ松兄さん」
 座る僕に後ろから抱きついてるおそ松兄さんを振り落として立ち上がる。呆然と見上げる兄の目が、なんだか泣きそうだ。
「チョロ松、酷くない? なんでそんなに冷たいのよ」
 酷いかな? いつも通りの対応だと思うけど。おそ松兄さんみたいに、僕は家でベタベタしたりしない。TPOをわきまえてるつもりだ。
「おそ松兄さんこそ、今日は競馬とか行かないのかよ」
 一応、少しだけ会話を交わしてみる。気持ちは来週末のイベントで頒布予定だったお気に入りサークルの新刊へ飛んでるけども。
「チョロ松が一緒に行ってくれるなら、行ってもいいかなあ」
「競馬場行くまでが暑いし」
「じゃあ、パチンコ屋に涼みに行くのは?」
 それなら涼しいかな。家から近いし。と、頷きかけて気がついた。
「って、なんで一緒に行く話になってんだよ」
 こいつに流されるのは止めようって思ってるんだ。毎回毎回振り回されるこちらの身にもなってほしい。
「だって、チョロ松は俺のじゃん?」
「そうだとしても、一緒に行くかどうかは別だろ。お前のイコール、所有物ってわけじゃないからね」
 そこは履き違えないでほしい。僕は僕で、おそ松といつも一緒ってわけじゃない。子供の頃とは違うんだから。
「つまんないの。チョロ松が一緒に出掛けなきゃ、デートになんないじゃん」
「え? デートのお誘い……だったの?」
 僕の言葉にぷくりと頬を膨らませた。おそ松兄さんの、こういう仕草は子供じみてて、可愛い。いや、成人男性ニートが可愛くてもなんの得もないけどね、うん。
「さっきから、そのつもりで声かけてるのに、チョロ松全然こっち向かないじゃん」
「デートならデートって言ってくれれば」
 二、三歩進んで出てたDVDを片付ける。求人情報誌は丸めてゴミ箱へ突っ込んだ。財布をリュックから引っ張り出して中身を確認する。パチくらいなら打てるかな。
 出掛ける準備が出来たから、おそ松兄さんへ視線を投げた。
 あれ? まだふくれっ面をしている。
「なに? 出掛けないの?」
「俺のチョロ松なのに冷たいし、現金だし」
 ゴロゴロと子供のように転がって駄々を捏ね始めた。
「ワガママ言うなよ。それも含めてお前のチョロ松だろ?」
「そうだけどさあ! もっと俺に優しくても良いと思うんだ! お兄ちゃんは」
「はいはい」
 腕を掴んで体を起こさせる。尻をパンっと引っぱたいて気合いを入れてやって、ついでに財布を持ってるかも確認した。たまに、わざとなのか財布置いてくるんだよ。ほとんど入ってないこともあるけど。
「もっと優しくして」
「面倒だなあ、僕のおそ松は」
 そう言ってやると、にししと笑って鼻の下を擦った。単純な奴め。
カット
Latest / 55:31
カットモードOFF
文字サイズ
向き
チャットコメント通知
俺のチョロ松
初公開日: 2020年08月01日
最終更新日: 2020年08月01日
ブックマーク
スキ!
コメント
8月1日は俺チョロ記念日なので