監督生は毒を盛る 後編を書いていきます。
メモいっぱいしてるのでお見苦しいですが、よければ見張っていてもらえると助かります。
おお…画像貼れる…
ほとんどトレイパイセンがしゃべってる… 最初にちゃんとトレイ先輩だって言っとかないとこれ誰だか分かんないぞ…
サイエンス部の活動が終わった後、俺はルークと共にスカラビア寮にやってきた。
監督生が今日はスカラビアで宴があるので早めに切り上げると言っていた。やけに嬉しそうにしていたから、何か特別な事でもあるのか?と聞いたら生意気にも秘密だと答えた。そんな風に言われると、余計に気になる性分だ。
スカラビア寮の談話室には多くの寮生でにぎわっていた。
宴もたけなわといった雰囲気だが、監督生の姿が見当たらない。ついでに、カリムとジャミルもいないようだった。
寮生に声をかけようとしたところで、突然箒に乗ったジャミルが談話室に飛び込んできた。抱えているのは、ぐったりした様子のカリムだった。
「副寮長!どうしたんですか!?」
「寮長……!!血まみれじゃないですか……!!早く治療を!!」
「俺の部屋から薬箱を取ってこい!!」
ジャミルが焦った様子で寮生に指示をする。
そのジャミルとカリムの様子を見て、違和感を覚える。
「あれは……監督生が作っていた、血糊?」
「その通りだね、薔薇の騎士。こちらに彼が見えないということは」
ルークがするりとバルコニーへ進み出る。
「やあ、見つけたよ。彼は砂の海の真ん中で孤独に打ちひしがれているようだ」
「よく見えるな……俺には遠すぎて全く見えない」
「彼の騎士として、私が迎えに行こう。薔薇の騎士はこちらの収拾任せても?」
「ああ」
みな、随分と動転しているようだった。
「ジャミル、それよく見せてくれないか?」
「トレイ・クローバー!?お前、何故ここにいる……!!」
今にも噛みつかんばかりの勢いだった。
俺は敵意がないことを掌で示して
「落ち着け。それ、多分血糊だぞ」
そう指摘すると、ジャミルははっとしてカリムの服を脱がせる。
そっと近づいてその肌を見ると、濡れてはいるものの出血している部分は見られず、傷口も見当たらない。
「あいつは何故、こんなことを……」
「体が冷えているな……誰か、タオルと布団を持ってきてくれないか」
その言葉を聞いて寮生が何人か、ぱたぱたと駆けていった。
「ジャミル、何があったんだ?その様子を見るに、ユウが何かしたんだろ?」
「……はい。カリムと監督生が、絨毯に乗って夜の散歩に出かけたのですが、そこで……。!!」
ジャミルが突然、カリムの口を無理やり開ける。
「どうした?」
「口内……いや、飲み込んでいるなら胃の洗浄も」
ジャミルの中指がカリムの唇、そして舌へと触れる。そして驚いたことに、指についているであろう唾液を自らの舌で、味を確かめるように舐めた。
「毒の気配は……ないな」
「おい、ジャミル?」
「監督生が、カリムに何か飲ませていたようだったので。……カリムは昔から命を狙われることも多く、俺の作った料理以外は口にしないんです」
ジャミルは額に手を当て体温を確認し、首元に指をあて脈を測る。
「ああ、なるほど……。そういえば、ユウはずっと眠り薬を調合していたな」
その様子を見て思い出した。
彼女が
「眠り薬?毒じゃない、ってのはそういう意味か。……監督生は、眠り薬を飲ませた後、カリムに刃物で切りかかったんです。そのまま二人とも落下して、……とっさにカリムが水魔法で落下の衝撃を防いだようなんですが」
「なんだそれ。心中でもするつもりだったのか?」
自分で言っておいてなんだが、彼女がそんなことをするとも思えない。なんというか、生命力にあふれているのだ。
「一方的に殺害しようとしていたのだと思いました。でも、殺すふりをしただけだったのでしょうか?」
「本人に問いただしたほうが早そうだな」
「そうですね。トレイ先輩、監督生を連れてきてはくれませんか。恐らく、まだ砂丘の方にいると思うんですが」
「さっきルークが迎えに行ったから、そろそろ帰ってくるんじゃないか」
その後しばらく、カリムの様子を見て過ごした。
どうにも目が覚める様子はなく、無理やり起こすのもとなって、静かに寝かせることにした。確かに、監督生は眠り薬の研究を独自に行っているようだった。そのアドバイスを何度かしたことがある。
その効果が如実に表れているのであれば、彼女の想定通りというわけだろうか。そもそも、他人に使うのだとは思っていなかった。最近眠れないからと言っていたのだ。
「やあ、みんな揃っているようだ」
ルークと監督生が箒にまたがり、談話室のバルコニーへとやってきた。
待っていたとばかりに険しい表情でジャミルが一歩前に出る。監督生は挑発するような笑顔だった。
「ルーク先輩、そいつの身柄を引き渡してもらえますか」
「おやおや、まるで犯人を追い詰める刑事のようだ」
「聞かなければいけないことがあるんです」
「いいですよ、私でよければ。なんでも答えます」
芝居がかったしぐさで、自己を開示するように両手を広げる。こちらとしても、確かめたいことはいくつかあった。
「ユウ、まず確認したいんだが。カリムについていたのはユウが作っていた血糊だろう?」
「ええ。私が作ったものです」
「睡眠薬も作っていたよな?」
「はい。私がカリムさんに飲ませました。今はぐっすり眠っている頃ではないですか?」
「ああ。よく眠っていたな」
やはり、自分が飲むというのは嘘だったのか。さらりとためらいもなく嘘を吐かれたことに警戒のレベルを多少上げる。
「お前の目的は何なんだ」
問いかけられた監督生はジャミルをじっと見つめる。
そんなことも分からないのかと。まるで訴えかけているように。
ふと、口元に笑みを浮かべる。
「ドッキリですよ。騙されましたか?」
茶目っ気たっぷりに、にこにこと笑顔を浮かべて「第二弾成功です。いえーい」なんてピースサインを作っている。
「ドッキリ?あれが?」
「そうです。私が刺客かと思ってびっくりしたでしょう?」
くるりと、両手を広げ少女のように一回転する。
「カリムさんが殺されてしまうんじゃないかって、びっくりしたでしょう?」
その物騒な物言いに、得体のしれないものを感じる。
「ねえ、どうなんですか、ジャミル先輩?」
悪趣味な悪戯を仕掛けた子供のように語る彼は、16歳の少年のはずだ。
「ドッキリ……だと?だからといってやって良いことと悪いことがあるだろ!カリムを危険にさらしたんだぞ!」
「はは、あーっはっはっはっは!あはははははははは!!」
彼女は、ふっと吹き出して、嘲るように笑う。その異様な雰囲気に他の誰一人笑わない。
「その通りですね。ええ、やって良いことと悪いことがあります。ご迷惑おかけしてすみませんでした」
そのまま、腰を折って頭を下げた。
ジャミルは眉根を寄せたままこぶしを握っている。
「お邪魔してすみませんでした。オンボロ寮に帰ります」
「送っていくよ」
ルークが軽く手を挙げる。
「俺も行こう」
これじゃ、終われない。
「どちらでも、よいのですが」
歩きながら彼女はそう切り出した。
「魔法の絨毯を置きっぱなしにしてきたので、明日回収してきてもらえませんか」
「それは構わないが、その前に詳しい話を聞かせてもらわないとな」
「ドッキリですよ。先ほども言いましたけど」
「何故そんなものを仕掛けようと?スカラビアの寮生全員が心配していたぞ」
多少、めんどくさそうな顔を監督生がしている。
「納得、してくれませんか」
「しないことに決めたからな」
リドルがオーバーブロットしたのは、俺が干渉を避けたからだ。だからもう、それはやめた。
後悔するぐらいなら、干渉することにした。
「先輩、変わりましたね。」
ユウが口元に笑みを浮かべているのが見えた。
「ルーク先輩も……ですか?」
「もちろんだとも!」
「分かりました。お二人を巻き込んでしまいましたし、オンボロ寮でよければゆっくりお話ししましょう」
監督生が住まいとしているこの寮にも談話室はある。
お茶を入れて向かい合わせに座ると、開口一番に彼はこういった。
「私はカリムさんを救いたいんです」
その目は真剣だった。
突拍子もないその言に、ルークが詳細を訪ねる。
「彼は、どこかケガでもしているのかな?」
「いいえ。しいて言えば、心に」
「心?」
ぎしりとソファのスプリングをきしませて、ユウが居住まいを正す。
「ウィンターホリデーのことは聞いていますか?」
「軽くは。スカラビアで問題があったと」
「ジャミル先輩がカリムさんの従者をしていることは知っていますよね。ウィンターホリデーでは、ジャミル先輩はカリムさんを操り寮長から追放しようとした挙句失敗し、吹っ切れてこれまでの鬱憤を全部カリムさんにぶつけたんです」
アジーム家の名前は知っていた。世界に名を轟かせる商家だ。
寮長であるカリムに、副寮長であるジャミルが使えているのも知っていた。同じ副寮長として面識もある。
そのジャミルが、そんなことになっていたとは。(上での描写修正すること)
「そしてカリムさんはそのすべてを許しました」
この学校では珍しいタイプの善人。だけどどこか抜け目がないカリムは、やはり少し変わっているようだ。あの調子だと、恨み言も言っていないのではないか。
「おお……なんというか、すごいな」
「すごくなんて、ないですよ。あの人はきっと、もう誰のことも信用できなくなったんです。あのままだと、本当に人間じゃなくなりますよ」
人間じゃなくなる。
ユウは、どうやら本気でそう思っているようだった。
俺にはしても、そこまでのことなのだろうかと思ってしまう。
あのカリムが……?
「……ちょっと大げさなんじゃないか?」
「大げさではありません!あなたはリドル先輩に何も学ばなかったのですか!?」
バン!と、テーブルに手をついて、身を乗り出して声を荒げる。
普段大人しい彼が激昂するところを初めて見た。
「!!……すまない」
「失礼しました」
すとんとソファに座り直し、こほんと咳ばらいをする。
「それで私は、ジャミル先輩に2回ドッキリをしかけました」
監督生が2本指を立てる。
「まず1回目。実行したのは私ではなくカリムさんです。バルコニーの手すりの上に立って、ジャミルさんの目の前で飛び降りました。もちろん、下には魔法の絨毯がいて、ちゃんと受け止めました。それでカリムさんがジャミル先輩を夜の散歩に誘うんです。吊り橋効果で少しは素直になるかなと思って」
「ジャミル先輩は、あんなに大切なカリムさんを嫌いだなんだというんです。だからちゃんと本心を理解してほしいんです。……でも、ジャミル先輩が拒否したので、私が代わりにカリムさんと散歩に出かけました。私はそこで、カリムさんを説得することにしました」
「カリムさんは、カリム・アルアジームという立場を、能力を、その存在を周りの人間に利用されます。心無い人間たちにボロボロにされるぐらいなら、私があの人の下で、守ります」
※トレイ先輩もルーク先輩もカリムくんのユニ魔法の内容は知らないはず
魔法の絨毯についてトレイは知っている(ルークは分からない)
同じこと繰り返している気がするのであとで削る
「まあ、本人に拒否されたんですけど」
「説得に失敗したので、2回目のドッキリを仕掛けます。後ろからジャミル先輩がついてきていたことは知っていましたから。カリムさんに毒を飲ませて、ナイフで切りかかって一緒に落下しました」
「通常の人間にとっては毒です。薬とは、毒ですよ。適切な用量を守らないといけません。その用量を超えて彼に飲ませました。カリムさんは、昔から毒を飲まされたりしていたので多少耐性がついているのです」
「ナイフで切りかかったのは、ジャミル先輩に私が刺客だとはっきり示すためです。毒を飲ませるだけでは、遠目には何をしているか分からないでしょうから」
「ジャミル先輩がしている行為は、カリムさんを危険にさらし、そのうち本人が死んでしまうようなことであることを思い知ってほしかったのです。そして、カリムさんを失うことが、ジャミル先輩にとってどれだけのことなのか、理解してもらいたいのです。失ってからでは、遅いですから」
「それで君がそのようなケガをするのは、私としては不本意だがね」
「ルーク先輩……。黙っていてくださいと言ったのに」
「ケガをしているのか?」
「……先ほど落下したと言いましたが、私はカリムさんのクッションになって、まあ死んでもいいと思っていました。そのつもりで、絨毯を切り裂いたのですから。でもカリムさんが魔法で水のクッションを作ってくれて。だから、その時点ではほとんどケガもなかったです。そのあと」
「ちょっと待て。それは聞き捨てならないぞ」
「はあ」
「お前は、カリムを救いたいと言ったが、俺はお前をどうにかしたいと思う。そんな無茶をして、挙句の果てに死んでもいい?お前の周りの人間は、お前を心配しないと思うのか?けがをしているのなら先に手当てをさせろ」
「お断りします」
トレイがユウの手を取る
「やめてください。セクハラで訴えますよ」
「セクハラって……手当てをするだけだ。男同士なんだから、それぐらい問題にはならないだろう?」
「えっ」
「トレイくん……君は彼女が女性であると気づいていなかったのかい?」
「えっ!?」
「……とっくにバレているものと思っていましたけど」
「いや、女性的ではあると思っていたが、そういう生徒は多いし……ユウもそのタイプかと……。何か理由があるのか?」
「この治安が悪いNRCで女生徒がひとりって余計に絡まれそうじゃないですか。その対策なだけです。寮長と教諭方にはバレていますし。ルーク先輩には、私が髪を切ろうとしていた時に見つかって、その時に」
「副寮長クラスであればほぼ全員にバレていると思っていたのですけど……特に男っぽく振舞っているわけではなかったですし。とにかく、これでセクハラで訴えるというのも理解していただけましたか?手当は自分でしますのでお気になさらず。大したことはありません」
「……本当に大丈夫なんだな?」
「はい」
「分かった」
「ありがとうございます。えっと、それで……絨毯から落ちたところまででしたね。ジャミル先輩が駆け付けて、カリムさんを手当てするために寮に飛んで帰って、ルーク先輩が迎えに来てくれたという顛末です」
「」
落ちは?
■ルークが迎えに来たシーン
砂の海にひとりぽっちで取り残されてしまったトリックスター。
最初は眠ってしまっているのかと思った。
遠目から見たら、そのように見えたのだ。
そして、近づくにつれ、私はスピードを上げた。
いつもは抜け目のないその瞳で熱い視線を交わすが、どうやら今夜はそうではないらしい。
好機。
そう、彼女は大変に弱っている様子だったのだ。
湿り気の残る砂に、彼女の吐しゃ物。眠っているのかと思っていたが、意識はあるようで私が隣に立った時にうっすらと瞼を開いた。
「ああ、ルーク先輩。ごきげんよう」
「ごきげんよう、トリックスター。君を迎えに上がったよ」
彼女はのそりと起き上がる。
「助かります。寮まで遠いので、くたびれてしまって」
「なるほど。それならば私の箒に乗っていくといい」
「ありがとうございます。では、お言葉に甘えて」
彼女が立ち上がりかけたところを、ひょいとすくい上げる。彼女が一瞬、きゅっと眉根を寄せる姿を私は見逃さなかった。
「先輩。何を?」
「こうでもしないと箒の上では危ないだろう?落っこちてしまうよ。それとも」
彼女の黄金の瞳に近づいて
「落っこちたからそうなってしまったのかい?」
つつ、と彼女の脇腹を指でなぞる。
「ちょ、げほっ。う……」
彼女は胸を押さえて、軽くこちらをにらむ。
「分かっててやってますよね。……っくしゅ、うっ……」
「そういえば、ずぶ濡れだけど何があったんだい?水遊びをするにはまだ少し早いのではないかな」
「……カリムさんが、絨毯から落っこちた時に水魔法でクッションを作ってくれたんです。だから……」
実践魔法のひとつ、服を乾燥させる魔法。
「服は乾いたかな」
「はい。ありがとうございます。……寒かったので、助かりました」
「セモア!」
ついでに制服をかける。
「そこまでしていただかなくても。……あの、言わないでもらえますか」
「何をだい?」
「傷のこと……他の人たちに。弱みを握られたくないので」
「ウィ。君は気高い孤高の獣だ。お望み通り、私から口外はしない」
「助かります。それで……あの、この態勢しんどいので降ろしてもらっていいですか?」
そういうと彼女は私の背後に回り服を掴む。
「あ、これ結構した見えるんですね」
「高いところは苦手かな?」
「下が見えると、怖いです。絨毯みたいに下が見えなければ平気なんですけど」
「なるほど。それではこうするのはどうかな?」
彼女をひょいと抱え上げる。脇から腹にかけてが痛むのだろう。咳をしたあとに顔をゆがめていたので、肋骨にひびが入っているといったところか。
彼女に負担がかからないよう、幼い子供を抱き上げるような形で抱え上げる。
「あの、これはさすがに」
「あまり君に負担をかけると寮についたときに他の人にもばれてしまうのではないかな?」
「……それもそうですね。では、お言葉に甘えます」
そう言って彼女は背中に腕を回す。近づいたことで、かなり呼吸を浅くしていることが感じ取れた。
本当は一直線で彼女の住まう寮まで送り届けたかったが、彼女の希望なので仕方がない。黄金の君の様子も気になるのだろう。
■2話
「帰ってください」
「風邪を引いているんです。あなたに移すとカリムさんにも移してしまうでしょう。だからさっさと帰ってください」
「オンボロ寮にまともに薬なんかないだろう。大人しく看病されろ」
「結構だと言って、っくしゅん!げほ、げほ……う、ぅ……」
「おい!」
監督生が腹を押さえて倒れる。ジャミルがベッドまで運ぶ。
「っは、何、やってるん、ですか」
「熱さましと炎症を抑える薬を調合してきたから飲め」
「飲みま、せん、けほっ、げほげほ」
「飲まないと口移しで飲ませるぞ。お前が昨日カリムにしたみたいにな」
「あなたは最低、ですね」
「最低だろうと何といわれようと、飲んでもらうぞ。カリムが起きてお前が臥せっていると知ったらその方が厄介だ」
「……私、飲めません。それ、飲むと余計に悪化するので」
「そんなに信用ならないと?」
「違います。私、アレルギー体質で、特に薬に反応してしまうんです。元の世界でも、たびたび死にかけたので、できれば、やめてください」
あなたが殺したいほど私を憎んでいるのでしたら別ですけど、とぼそりと呟くのが聞こえた。
その言葉は、これまでの憎まれ口とは違い、懇願のようだった。
「……殺したいほど憎んでいるわけじゃない。そもそも、昨日のお前は何だったんだ。死にたいのか?」
「死ぬかな、とは思いましたけど、積極的に死にたいわけではないですよ。方法があるのなら、元の世界に帰りたいですし。先輩に蹴り殺されるかとは思いましたけど」
そういえば、昨日動けなくするために強く蹴ったのだった。
「……悪かった。腫れているのか?見せてみろ、手当てする」
「手当のしようがないから結構です、ってさっき言ったじゃないですか……」
ジャミル、監督生の服を脱がせる。
「変態。訴えますよ」
「自分がしたことの不始末くらい自分でつける」
「はっ……う」
笑ったと思ったら腹を押さえている。
「何がおかしいんだ」
赤く腫れている。内出血をしているように見える。痛み止めは、処方できない。
「先輩は、本当に自分を省みた方がいいです、よ。あと、カリムさんに、感謝してください」
「なんでカリムに感謝しなきゃならないんだ」
「それが分からないうちは、自分で始末をつけるなんて、言わない方がいいです」
多少むかついたので、額に置くために濡らしたタオルを腹に乗せる。
「!? げほっ、げほっ……び、っくりするじゃ、ないですか」
「じゃあその減らず口を閉じるんだな」
「……もう帰ってください。できることがないって、わかったでしょう。私も痛みと熱で、そんなに余裕がないんですよ」
「食事は?」
「はい?」
「だから食事はとったのかと聞いているんだ」
「……いいえ」
「少し待っていろ」
ジャミ、料理タイム。ヨーグルトライスとジンジャーレモンティー
↑ヨーグルトライスで本当にいいのか…?でも監督生この状態だと温かいもの食べれないだろうしなあ…
昨日口に含んだ眠り薬のせいで口の中荒れてる
「いいです、ってば」
「言っただろう。カリムが起きた時にお前が倒れていたら、あいつが心配して結局ここまで来ることになるんだ」
「……わかりましたよ。それ、お米ですか?あんまり食欲ないんですけど」
「熱砂の国では風邪を引いたときに食べるんだ。さっぱりしているから、食欲がなくても食べやすい。ほら、口を開けろ」
監督生、スプーンでよそわれたごはんを一口食べる。飲み込んでから
「普通ですね」
「作ってもらっておいて、いい度胸だな」
「私は素直なので、カリムさんみたいにジャミル先輩を褒めちぎったりしないだけですよ」
いちいちイラっとする言い回しだ。
「もう一口」
食べて飲み込んだ後、むせている監督生。腹を押さえている。
「つまらせたのか!?茶を……」
監督生がカップを受け取って飲む。一息つく。
「……ショウガ、ですか」
「ああ。ショウガとレモンだ。汗がよく出るから風邪が治りやすい」
「どうも。残りはそこに置いていてください。あとで食べますから」
「分かった。他にしてほしいことは?」
「ないです」
「汗をかいているが、体を拭くぐらいはできるが?」
「あなた、デリカシーとか考えないんですか?私これでもか弱い女生徒なんですけど」
「ああ、普段あまりにも勇ましいからな。失礼した」
「最低です。人間として最低」
「ほら、うつ伏せになって背中を見せろ」
「……そうすると、肺が圧迫されるので嫌です」
「肺?」
「多分あばらとかにひびが入っているんです。あなたに蹴られたおかげで。咳やくしゃみをすると痛むんですよ」
「……じゃあ起き上がってくれ。それなら平気だろう」
しぶしぶ監督生が起き上がって背中を見せる。
「……お願いします」
ジャミル、背中を拭き始める。
「先輩は、カリムさんのこと嫌いなんですか」
「そうだと言ってるだろ」
「殺したいほど、憎んでいるんですか」
「……そうは、言っていない」
「でも、いなくなってほしいんですよね」
「……」
「いい案があるんです」
「私があなたの代わりを務めますよ」
「従者交代。いいと思いません?このNRCにいる間だけでも、うまくやれると思うんです」
「何を馬鹿なこと言っているんだ」
「いいじゃないですか。だってあなたは解放されたかったのでしょう?カリムさんを操り、寮生を騙してでもあなたは現状を変えたかったのでしょう?カリムさんがいなくなればいいって、ずっと思っていたのでしょう?だから私がそれをかなえてやると言っているのです」
「……何が条件だ」
「あなたが、カリムさんの目の届かないところで、平和に幸せに生きることです」
拍子抜けした
「……は?何故それが条件になる。お前にとって得が何一つないじゃないか」
「私はあなたが目障りですから。あなたがいなくなれば清々しますし、私がカリムさんを独り占めできます」
羨ましいだろう、という表情で痛みで脂汗を垂らしながらこっちを見ている。
別に羨ましくなどない。
「お前はカリムの何になりたいんだ」
「そうですね。お嫁さん、でいかがでしょう?」
いかがでしょうって
「カリムには許嫁がいるんだが?」
「何人ですか?」
「何人って」
これで引かないとは
*インド:イスラム教徒のみ一夫多妻制は合法
⇒ 4人まで娶っていいと明言されており、正当な理由があれば5人以上でも問題はないとのこと。*
「6人だ。大富豪の娘から、世界で活躍するモデル。~~~、~~~、~~~、~~~と、お前とは身分が違う」
「そこに学生時代の友人、も含めることはできるのでは?」
「できるわけないだろう。そもそもお前のどこに彼女たちと渡り合うことのできる教養があるんだ」
「教養って何を指しているのですか?テーブルマナー?社交ダンス?それとも政治や経済の話ができることですか?それぐらいだったら、これからいくらでも学ぶことはできますし、元の世界では私はそれぐらいのことは習得していました」
はあ…?
「武器の話、貧困の話、それとも水道の話なんてどうです?インフラは元の世界でも重要でしたし。この世界でも応用できることは多くあると考えています。私、これでも座学の成績はそこそこ優秀ですよ」
「私、カリム・アルアジームの第七夫人になりますね」
※ここまでは背を向けて話している
「妄言はそれぐらいにしておけよ。NRCが男子校であることを忘れたのか?学友だなんて、メディアに露見したらゴシップの的だ。それはアジーム家の従者としても看過できる発言ではない」
「それぐらい、なんだって言うんですか」
※さっきまでの落ち着いた顔が豹変して、正面を向く
「私は!!カリムさんを救えるのであれば、なんだってします!!この身をどれだけ削ろうとも、潰そうとも、それを成し遂げるだけの意志があります!!あなたが!!やらないから!!」
※ジャミルにつかみかかっている
「あなたが、あなたさえ、あの人をちゃんと見ていれば……あなたがちゃんと手を掴んでいれば……あの人はカラカラに乾いた砂漠の中でも、一滴の水を飲んで生きながらえたかもしれないのに!!」
※息苦しそう。呂律も回りにくい中興奮して話している
「あなただけなんですよ……。私じゃ、だめなんです……」
※咳ゴホゴホなる
「私じゃ、あの人を救えないんですよ」
※泣いてる
ジャミルの反応は困惑。何を言っているのかよく分からない感じ
気管支やられてたら、寝転がる方がしんどいか?
ジャミ、掴まれているのでそのまま正面から抱き留めるような形にして背中さするか?
「とりあえず、寝ろ」
※転がされて余計に咳ゴホゴホなるので起き上がる
アレルギーなので炎症は起きない?多分起きない
「む、り、ごほっげほ、げほ……」
※ジャミ、正面から抱き留める形で背中をさすって寝さす
しばらくすると寝息が聞こえる。下手に動かすとまた咳して起きそうなのでジャミは数時間その状態のまま。……オンボロ寮に泊まる気なの?カリムの世話もあるので、しばらくしたら普通に寝かすかな。
キリがよさそうなので、今日はこの辺りまで。
お付き合いくださってありがとうございました!
配信切りますね