黄色のスカーフが視界の端に映る。それが何であるのかというのは理解しているつもりだったが、それに対してすぐに対応できるかと言われれば話は別だ。
「――ッ」
「かくれんぼ、飽きただろ」
戦闘中の矢後は饒舌だ。普段は用がなければ喋る事も少ないというのに、こういう時だけはよく口が回る。そんなことを言っていたのは確か頼城だったか。
まるで狩猟本能を刺激された獣のような顔をして、鎌を構え直している矢後が視界に入る。防げるか、いいや防がなければシミュレーターはこの一撃だけでダメージ蓄積値が上限に達したといって戦闘終了を告げるだろう。そんなつまらないことをさせてたまるかと言ってはアレだが、もう少し己の限界値を知りたかった。戦闘を続ける為にはこの一撃を凌がなければならない。
ではどうするか。簡単な話だ、槍で受け切ればいい。
この場に正義がいれば「そんな簡単に言うな」と言ったかもしれないが、それ以外に言えることはあっただろうか。自分には思いつかなかった。
振られた鎌の刃先を押し返すように槍を振って刃先を当ててみせて、予想しているよりも重たい衝撃が腕に伝わってくるのを感じながら、喰い破ろうとする矢後の目を見る。
「…ハ、いーかお」
「そう、だろうか…ッ」
「名前出てこねえけど戸上も俺と一緒だろ……ケモノ、だったかなんだか」
矢後は俺を獣と例えた。どういう意味での獣なのか、そもそも矢後の中の獣という解釈はどうなっているのか……それはわからない。後から聞いてみることにしよう。
「もーちょい…楽しませろよ、戸上ィ…!」
鎌を前に押し出して俺の身体を後ろに飛ばした矢後が笑う。弾き飛ばされた衝撃でシミュレーターの壁に背中を打ち付けたせいで、口の中からは少し血の味がする。切ったのかもしれない。
乾いた唇を舌で舐めて濡らして槍を構え直す。
さあ、次の一手はどうしようか。