うらひとさんへの web夏企画 お題は
【浴衣、帽子、重い】
#web夏企画_お題 #shindanmaker
------
「ふぅ……」
海沿いの小さな駅舎。じりじりと照り付ける日差しをカンカン帽が受け止める。それでも暑いけれど、海風が心地よい。
君がいなくなってから数年。気持ちの整理がつかずに、今年も夏祭りに合わせてこの駅で降りた。
「どうしても思い出すなあ」
浴衣を着て、夏祭りで君と過ごした夏の日。どちらからともなく、「ずっと一緒にいよう」と約束した。だけど、あの事故でいなくなってしまった。
別に、特別な関係になったわけでもないけれど、家族みたいなものだった。傍から見れば恋人と思われていそうだったけれど。
今後、恋人が出来ようが、この『代わり』にはなりえないだろう。
自分のルーツが出来た場所。
自分のルーツを作ってくれた人。
それがここ。
それが君。
だから、ここは還る場所。
今は、還る夏。
今年も君が待っていると思って、ここに来る。夏の日差しくらいに眩しい笑顔の君は、蜃気楼の向こうに行ってしまったのか、もうここでは見られない。
居なくなってしまった自分には、君に笑顔を取り戻す術などないのに。きっとお互いに後悔しているんだろう、またここに還ってきてしまうのだから。
「一言でも、話せたらなあ」
遠くから、君のことはみているのに。年々暑くなる夏に嫌気がさしても、それ以上に浮かない顔をしている。
神様。一度だけ話してもいいですか。せめて、必ずここに来ると約束させてください。
「……――?」
ホーム上でこちらを見た君の声は、特急電車の警笛でかき消された。汗か、涙か、どちらかは分からないけど、ホームに落ちたそれは染みを作った。
もう、すぐに乾ききってしまうだろう。きっと、それまでしか会えない。だから、言おう。
「また来るよ」