リクエスト
竹くくでサイダー
使う言葉 汗ばむ、夏祭り、友人
気付かないふり
うだるような暑さの水無月。
自然豊かなこの学園はこの季節になると蝉たちの大合唱に包まれる。
これは求婚のための鳴き声だと言っていたが、そんなロマンチックには一ミリも聞こえない。
どっちと言えば、もはや騒音の域である。
今日は学園は休み。
火薬委員会はやることがはっきり言ってないのだ。
誰もいないことをいい事に、上着を脱いで忍たま長屋の廊下に寝っ転がるのは五年い組久々知兵助。
普段は成績優秀文武両道と言われる彼をも廊下に寝ころばせるほどに暑い日だった。
部屋より廊下の方が風が通る。
おまけにちょうど日陰になっており、ひやりとした廊下は火照った体を冷やすのにちょうどよかった。
心頭滅却すれば火もまた涼し、なんていう言葉が存在するが、現実はそう上手くいかない。
気付けば自然と口から「あつい」という言葉が漏れてしまうのだ。
よく言えばこんな暑い日は川で水浴び日和だし、氷菓子が美味しいし、スイカをよーく冷やしてその後にみんなでスイカ割りをすればきっといい思い出にすることが出来る。
けど、誰もいない。
こんな暑い日に限って誰もいないのだ。
みんな委員会の仕事に行ってしまったため、兵助は一人廊下で溶けている。
何が寂しくて一人で川へなんて行けようか。
誰か一人でも予定が合うものがいれば川へだって、氷菓子を食いにだって、スイカ割り…は少し寂しいかもしれないが出来ないことはない。
こうも暑いと勉強する気も起きない。
豆腐を作ろうかと思ったが、食堂のおばちゃんが朝から何やら台所で忙しそうにしていて声をかけるのは気が引ける。
汗ばむ体をひっくり返して仰向けになると、兵助は弱々しく体を撫でる風に身を任せるよう目を閉じた。