──XX年X月末日、某州某市にて、火災事故が発生。
──焼け跡より成人男女の遺体が発見される。火災現場であったXX一家と連絡がつかないことから、XX夫妻のものとみられる。
──また、長男のXXと長女のXXについては、その行方を捜査する方針とのことで──
プツン、とよくある音を立てて古いブラウン管テレビが消える。耳鳴りにもよく似た甲高い音波だけが鳴り響く中で、テレビを消した男がそっと口を開いた。
「で、おれにこんなものを見せて、どうしようっていうんです?」
「あら、Anond? あなたは聡い人だから、このぐらい、わからないわけでもないわよね?」
「……はぁ。今も昔も、あなたには叶わないな。ありますよ、心当たり。でも、それをおれが言う義務がありますか?」
「あら、意外ね。拒否権があるとでも思っているのかしら」
「あー……」
男は何度か躊躇うようにかぶりを振り、それから諦めた様子で向かいに座る女の目をまっすぐ見つめた。
「できれば思い出したくないんですよ? これ」
そのまま男の口から諦念交じりの物語が紡がれ始める。それこそは男が初めて友人を喪った物語であり、男にとってはあらゆる悲劇の始まりの物語であった。
「無間地獄も阿鼻地獄。親殺しは地の底行き。存じ上げます通り、呪いを受ける体は罪人のものだ――」
これより語るは、世界を呪った魔女の話。
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夢と現実。希望と絶望、才能と無能の交差する街、ブロードウェイ。新進気鋭の「レーツェル劇団」も、この街を拠点に活動していた。
増設されたての劇場にて、ざわめく人影の中にひときわ際立つショッキングピンクの髪色をした青年が座っていた。
(妹もつれてきてやりたかったな)
ダンテ・カッシュ・ルッキ。彼もまたこの劇団に魅了されたファンのうち一人だった。
給料をはたいて訪れたこの日の講演は、以前ダンテが見逃したある演目の復活講演……の、千秋楽だった。
(まあ、また何か買って帰ってやろう)
少なくともパンフレットは買って行ってやろう――などと思っているうちに、客席の照明が落ちた。開演を告げるブザーが鳴り響き、スポットライトが赤い緞帳を照らす。幕が上がれば、その向こうは別世界だ。
「無間地獄も阿鼻地獄、親殺しは地の底行き。存じ上げます通り、魔女とは罪人、罪人とは魔女。今宵お見せしますは、悪魔に魂を売り払い、その力を手にした魔女の物語」
朗々と読み上げる男の声は主演を務める「無名」という名の役者のものだった。黒い衣装も相まって、ダンテの座る席からはピンスポットを受けて輝く金髪だけが目立って見える。