銀さんと沖田くんが土方さんについて話してる話。沖土。ゆるいノリでぐだぐだ会話してる話を書いていこうかな、と。
「……あ」
「……げ」
暇を持て余してふらふらと目的地もなく外に出てみると、喧騒の中に見知った顔を見かけた。丸い空色の瞳の中に引き攣った自分の顔が映っているのが見えて、坂田は内心あー、と呻く。声に出ていたかもしれないものの聞こえなかったらノーカンだろう、恐らくは。
仕事中(の割に片手には刀ではなくやる気の一切見えないアイマスクが握られているので別段仕事をする気もないのかもしれない)に見える沖田は珍しく一人で歩いていたようで、隣に見知った、あるいは見知ってしまったとも言える剣呑な顔は見つけられない。撒いたのかそもそも一緒に行動していなかったのかは興味がないので割とどうでもいいことだが、重要なのは沖田が今一人だということだ。
……坂田と今ここにいないもう一人、土方の仲の悪さに関しては互いの周りにいる人間ならば知っての通りのことだろうし、事実好き好んで顔を突き合わせたいとも会話をしたいとも思わない。その点で言えば沖田の方がある程度は話のノリも合うと言えるだろう。……が、しかし、だ。それなら沖田とはにこやかに顔を突き合わせて「今日も晴れて良かったですね」と談笑し合う仲かと言われればそれも否である。むしろ、沖田と二人きりで話をするというのはなるべくなら避けたい、というか出来ることなら見なかった気づかなかったことにして回れ右をしてしまいたい、というか。
「……」
「奇遇ですねィ、旦那。あんた今日も仕事ねェんですか」
そっと目を逸らして踵を返そうとした、ものの、その隙を作らせてくれるような相手ではないということはがしりと腕を掴まれた感覚で思い知った。嫌そうな顔をして逃げられれば追いかけたくなるのが性なのか、沖田はいっそ嫌味なほどにこりと微笑んで呼びかけてくる。
「……どーもね、沖田くん。いや仕事ねェんじゃねェから。こういうのはタイミングってものが重要な訳で、今は次の仕事への大事なインターバルを楽しんでる状態だから」
「それインターバル長すぎて老けません?」
「失礼なこと言うんじゃねーよ! 一月に一回は仕事入ってくるわ! つーかどう考えても絶賛サボり中なお前に言われたかねェな!」
俺は旦那と違って毎日仕事があるんでたまの息抜きがねェと干からびちまうんですよね、なんてけらけらと悪態をつく沖田に溜息を返しつつ、出来ることなら世間話をして穏便に別れるという道はないものかと思案する。……も、人の嫌がることをさせたら右に出るものはいない(あくまでも観測の範囲内で、だ。坂田自身性的嗜好がSであることは自覚しているものの、流石に女に首輪をつけて街中を練り歩くほど突き抜けてはいない)沖田相手だ、捕まった時点で終わりと言い換えても過言ではなかっただろう。
「旦那、見るからに暇ですよね? それならちょっと俺の話に付き合ってくだせェよ」
「ええー……普通に嫌だけど……」
「いや、拒否権とかないんで……」
「君は一回辞書で横暴の文字を引いた方がいいんじゃないかと思うんだよね銀さん」
問いかけ、またの名を断定。「まァおしるこの一つや二つ奢りますから」と言ってすたすたと歩き始める沖田に引っ張られながら再度溜息をついた。……初夏に入った今おしるこ奢られても地味にきついし別のものにしてくんねェかな、と些細な要望を抱いたものの聞き入れられるだろうか。
「……で、駄目押しに土方さんのストックしてあった煙草全部のフィルターにタバスコの粉を撒いてみたんですけど、そしたらあの人やたらと怒りまして。今朝からずっと機嫌悪ィわ話しかけても睨んでくるわなもんだったんで、仕方ねェからこうしてサボりにきたってな訳です」
「へえー……」
手渡された炭酸(どうせなら一番高い奴な、と沖田に注文をつけると可哀想なものを見るような目で差し出されたものだ。声を大にして言いたいが炭酸一本買えないほど困窮している訳ではない。ただ少しエンゲル係数が天元突破して久しいだけで)をちみちみと飲み干しつつ、沖田がつらつらと語る内容を話し半分で聞き流す。沖田としても別に真剣に聞いて欲しいという訳ではなく、ただ話したいだけのようで、あからさまに話を聞いていない坂田の態度に何を言うこともなかった。
……だって「へえ」と「ふうん」以外の何を言えるだろうか。沖田と土方のことを仕事上関係のある間柄だと認識しているとしてもここ最近の嫌がらせ遍歴を聞かされて顔を引き攣らせるだけだろうし、この二人が単なる事務的な関係ではないと知っている場合だって聞かされている内容は単なる痴話喧嘩のそれなのである。犬が食わないものをどうして人間が食えるというのか。いや、困窮に困窮を重ねれば人間ドッグフードだって食べられるものなのだが。
「……あのさあ沖田くん。俺君と土方くんがどういう関係なのか知ってるんだよね」
「はァ。ま、そりゃそうでしょうよ、だって俺が話したんですし」
「うん。聞きたくもねェし興味もねェってあれだけ言ったのに好き勝手にカミングアウトしてくれちゃったあれな。……でさ、銀さんも恋話大好きな女子高生じゃないから、知り合いの恋模様とか心底興味ねェっていうか、相手がお前らな時点でお経聞いてた方がマシって心境なんだよな。分かる?」
「ええ。嫌だろうなァ、俺だったら五秒で刀抜いてるなァ、って思いながら話してるんで分かってますよ」
「自分が嫌なことは人にしちゃいけませんってゴリラにでも習わなかったのかお前は」
ウチの方針は『敵の嫌がることは好き好んでやれ』なんで、と飲み干したコーラの缶を近くのゴミ箱に放り投げながら飄々と沖田は口にする。……ドSに道徳を説いたのが間違いだった。
「沖田くんさぁ、君はどうしてこう毎回毎回銀さんが一人の時狙って胃もたれする恋話してくるの? 何の嫌がらせなんだよこれは。ドSさ持て余してるんならそれこそどっかの副長さんにでも当たればいいだろうが」
「そうですねェ。暇だから、ってのもまァそれなりにありますけど……でも、主目的は嫌がらせしたいからじゃなく、あんたに胃もたれする話聞かせることなんで」
「……ほー、そりゃまたどういう心で?」
「決まってるでしょ。あの人が誰のものかっていうことをちゃんと思い知らせておこうかな、っていう心ですよ」
組んだ足の上に頬杖をついた沖田は、笑顔でさらりとそんな言葉を口にした。空色の瞳にじっと横目に見つめられ、坂田は数秒ぽかんと口を開いたまま言われた言葉を反芻する。……思い知らせる? 誰のものかについて? それはつまり、牽制、ということになる訳で。
「……やめろよもー今おっそろしいこと考えた、今おっそろしいこと頭に浮かんだよ!? どんな可能性を考えて牽制しにかかってるんだお前は! ないから! 銀さんには結野アナっていう心に決めた人がいるからさぁ!」
「それはあんたの心が勝手に決めてるだけじゃねェですか。……旦那、世の中にはね、絶対にありえねェ、ってことは存在してないんですよ。それこそ世界で一番気にくわない相手に恋をしたりすることだってあるんです。事前に危機感を抱くのは何もおかしな話じゃねェと思いますぜ」
「……お前が言うと説得力が凄ェな、おい」
世界で一番気にくわない、現在進行形で嫌がらせと悪態を繰り返している相手に恐ろしいほどの執着を抱えている(以前監禁計画についての話をされた時はそろそろ警察に突き出した方が沖田のためなのではと思ったほどだ。でもそもそも沖田が警察だった。世も末だ)沖田に言われてしまえば何の反論も出来ない。坂田の中では土方を好きになる可能性など皆無、どころかだったらゴリラの王女に嫁いだ方がマシだと思うレベルなのだが、それを言ってはいそうですかと受け入れる相手ではないだろう。
「言っておきますけど、俺はこれでもあんたのこと気に入ってるんですぜ。だから今のまま、なるべくいい関係性でいたいんです。……他の奴らはともかくとして、あんた殺すのは骨が折れそうだからなァ」
ぽつりと呟かれた言葉に口元を引き攣らせながら頭を抱える。……何が疲れるかって、沖田は何も一から十まで本心からの言葉を口にしているということだ。坂田を牽制しているということも、殺すには骨が折れると笑みを浮かべたことも、文字通り真面目に言っているのである。勘弁してもらいたい。
「……俺もお前とは本気で戦いたくねェわ」
「あァ、そうですか? そりゃ嬉しい限りですねェ」
「だってさー、お前と戦ったら気ィ抜けねーじゃん、絶対。一旦刀抜いたらどっちかが倒れるまでやりあう羽目になりそうだしな。……それこそ例えばの話、君のところの副長だったらさ、俺がお妙を人質にとって、刀納めねェとこいつを殺すって言ったら止まりそうじゃん。あいつゴリラの女に危害加えらんなそうだし。でも沖田くんはふつーにお妙無視して突っ込んできそうだから面倒臭い」
刀の柄に手をかけてもいない癖に、纏っている空気に少しの緊張感を滲ませている沖田を眺めつつ、坂田はその返答を待つ。沖田から返ってきたのは肯定でも否定でもなくゆるりと小さな笑みで、やっぱり末恐ろしいわこいつ、と内心で息をついた。……刀というものは背負わなければならないものが増えれば増えるほど重たくなるものだ。それが悪いということではなく、人が感情というものを持ち合わせている以上完全なる無というものは不可能なのである。
ただ、背負っているものを極限まで削り落としてしまえるのなら、その剣は当然軽く、研ぎ澄まされたものになるだろう。余分なものがない上に守るべきものがはっきりとしている。……沖田の剣はそれだ。この子供はまだ十八だというのに、自分の守りたいものについて迷いがない。沖田の中ではきっと、下手をすれば刀を持った瞬間から大事なものが決まりきっていたのだろう。なるほど、土方が諸手を挙げて自慢するだけのことはある。
「あ、おい総悟! お前また何油売ってやがる!」
会話が途切れたところで、不意に向こう側から声がした。沖田が振り向いた先に視線を投げかけると、目を釣り上げた土方が沖田の名前を呼んでいるのが見える。……土方を見つけた沖田の横顔を盗み見て、ずっとそういう顔してるんなら可愛げもあるんだろうにな、と内心で考える。土方は自分にばかり沖田の当たりがきついと思っているようだがそれは正しくはないのではないだろうか。多分、この子供は何だかんだと言って土方の前でも猫を被っている。
「それじゃ旦那、迎えが来たんで今日はこれぐらいで」
「……ウン、次回は一生なくていいよ」
小さく笑みを残した後、ぎゃあぎゃあとうるさく何か騒いでいる土方の元に近寄っていく沖田を眺め、この数十分間で癖になってしまった溜息をついた。……何というか、うちの子供たちがあいつみたいに過激じゃなくてよかったな、としか思えない。
「お前、あいつと何話してたんだよ」
「んー……強いて言うなら猥談、ですかね」
「真昼間からか!? あいつも未成年相手に何精神衛生上に悪い話してるんだよ」
……うっかり聞こえてしまった会話に内心で口を挟む。精神衛生上によろしくない影響を受けたのはどう考えても俺の方だ。
割と銀さんと沖田くんの間に距離がある…というかお互いに腹の探り合いしてそうなところが好きです…沖田くんは銀さんのこと四捨五入したら犯罪者だと思ってるし、銀さんもあいつやべーな、って思ってるけど結託することもある、みたいな距離感が二人とも珍しい気がするな、って。
一応ここで書き終わったんですけどもうちょっと時間あるのでだらだら壁打ちしてます。話してるうちにタイトル浮かべばいいな…と思いつつ…
沖田くんが土方さんに対してあくまでも死なない程度の嫌がらせしてるのが可愛いな、って読み返してるといつも思います。「死なない程度に跳ねてくれ」って言うし宇宙毒物劇物取扱検定(正式名称朧げですが)なんて物騒なもの取っても実際に使ったのは下剤だし…というか殺す絶好のチャンス以外の何物でもなかった監禁篇で「絆を試したかった」とかヒロくんに言わせてる時点で本気で殺す気ないんだろうな、と…複雑な感情抱えてるので一回も殺意を覚えなかった訳ではないと思うんですが、実行するには情を傾けすぎてる気がします。
なのに土方さんは割と「機会があったら殺られる」と思ってそうなところが面倒臭くて可愛いなー、って思います。まだ懐かれてないと思ってるので土方さん…
個人的に土方さんは根が鈍感でどうしようもなく鈍い、というよりはテンプレートで王道な感情には鋭いけどそこから外れると分からなくなるタイプだと思っているので、恋愛関係だとか特に沖田くんみたいな何回も屈折した感情には弱いんだろうな、と…多分沖田くんの「死ね土方」をそのまま「死ね土方」だと思ってるんですよね。いや沖田くんも死ね土方って思ってはいるんですがこの四文字の後に十万字くらいの面倒臭い感情が隠れていると思うので…(?)
沖田くんも土方さんも言葉足らずなところがあると思っているので、言わなきゃいけない言葉を言えない(あるいは言わない)で行くところまでいってすれ違って欲しいです。最後は沖田くんが胸ぐら掴んでブチ切れながら泣きつつ告白する感じの…ブチ切れ告白好きすぎて何回も書いちゃうんですが、余裕がなくなった瞬間に敬語も江戸弁もなくなって昔の話し方に戻る沖田くんに夢見てます。
沖田くんが敬語と敬称を使うのは仕事柄仕方ない相手以外は自分が認めた相手にしか使わない印象なので、土方さんのこともちゃんと認めてるんだな、と思いつつ、あくまでも意図的に使ってるってことは使うほどの余裕がなくなったらタメ口になるんだろうな、と…武州の頃の「土方」「沖田センパイ」呼びも最高に可愛いですよね…小さい沖田くんもポニテの土方さんもあの時からお互い容赦ない喧嘩(遊びとも言う)してるのがおきひじだなー、って(?)
時間的にキリがいいのでここら辺で終わりにしようと思います〜ありがとうございました☺️ちょっとまだタイトル浮かんでないので頑張って考えます…ww
カット
Latest / 83:42
カットモードOFF
10:25
ななし@04b13f
さらさらと物語が紡ぎ出されるのを見ていられるなんて不思議な気持ちです。いつも素敵な沖土ありがとうございます!!
13:45
コメントありがとうございます😊こうやって配信するといつもノリで書いてるんだな…っていうのがバレてちょっと恥ずかしいんですが、そう言っていただけると嬉しいです✨流れるように書け…てますかね?ww
75:10
ななし@ca3137
銀さんの「沖田は土方の前でも猫を被ってる」という言葉に確かに!!!!と大興奮してしまいました…!!
76:50
沖田くん、ドSコートとかラブチョリスとか見てると土方さんへの嫌がらせは手加減してそうなんですよね…意図的に猫被ってる瞬間があったら可愛いな、って☺️
チャットコメント
文字サイズ
向き
チャットコメント通知
お試し
初公開日: 2020年05月10日
最終更新日: 2020年05月10日
ブックマーク
スキ!
コメント
試しに配信してみます。覗くのもコメントも大歓迎です✨