エアスケブ
また30分前後でやります~
書き癖そのままなので読みにくいとは思いますがご了承ください
お題:Kスペで『はじめてのキス』
空を華麗に飛ぶ白い鳥が、森の奥で落ちていったのを見た。
「KID!!」
駆け寄ってみれば翼が折れた鳥は、大きな木の根に縋るよう倒れている。
急いで身体を仰向けに寝かせ、自分の膝に頭を乗せて気道を確保する。真っ白なはずの身体にいくつかの赤い花が点々と咲いているのは初めて見る光景だった。
「敵である私も助けるなんて、貴方はお人好しですね」
意識はある。けれどその声に覇気はない。
「喋るな、傷に障る」
自分のマントは意外に丈夫で引き裂くことはできず、しょうがないので脱いで最も深い傷であろう右足の太ももに巻き付けた。分厚い生地ではあまりしっかりとは結べない。
「ねぇ、スペイド」
「喋るなと」
「私は貴方をお慕いしています」
他に薄い布地がないか探していた腕が止まった。
「貴方は? 何とも思っていないただの男をこんなにも親切に助けるだけのお人好しですか?」
弱々しいはずの声に、なぜか答えなければならないと思うほどの芯があった。
「……お人好しなんて言われるほど出来た人間ではない」
「好きです、スペイド」
昨日まで殺し合いの場で相対していた敵の人間に、二度もこのような言葉をかけるなど相当頭に血が回っていないのだろう。
「はっ。死ぬかもしれないという時に冗談を言うとは、流石だな」
こんな時に限って、先程の戦いで疲弊した部下にポーションの類いを全て渡してきてしまった。しかし、ここを動くにはこの瀕死の身体を再度動かすことになる。
「冗談ではありません。死ぬかもしれないからこそ言っているのです。私は貴方の気持ちが知りたい」
「俺の気持ちなどどうでもいい」
自分の命が複数の傷口から流れ出ているというのに、狂った頭は無駄なことを吐き出させるようだ。
「よくありません。貴方は戦場であっても私を見つけると必ず剣の動きを止めてくださった。それを自惚れてはいけませんか」
その言葉の後ろには、最期に、と続いたような気がした。
最期だと思うのなら、俺と意味のない話をするのではなく命乞いでも何でもすればいいのに。誰か味方を呼ぶ魔法道具などは持っていないのだろうか。
彼の衣服の中、持ち物を探ろうとすると彼の腕に掴まれた。少しひんやりとした手だった。
「…俺は……どれだけ出来損ないだったとしても王子だ。国を背負って生きている」
魔法が使えるこの世界で、全く魔法を使うことができない無能な王子。
魔力は確かにあるはずなのに外へと出すことができない、だから剣を持った。そんな人間に
「気持ちなどという邪魔なものは必要ない。持つ必要すらない、俺はただこの国の為に戦場へ立つ、それだけだ」
「好きです、好きですよスペイド。私は貴方のその優しさにずっと心を奪われていました」
言葉とは魔法を紡ぐ為の呪文でもある。
不用意なことを言えば、魔力の扱いが下手な自分は何をしでかすかわからない。だから最低限のことだけを話して生きてきた、それを優しいだと?
「人を見る目は意外にないのだな、そんな見当違いなことを言うのはお前が初めてだ」
抱えているKIDの体温が僅かに、けれど確実に下がりだした。
自分も彼もこの状況を突破できる道具は持ち合わせていないと判断するべきか。どうする、どうすれば、この状況を、彼の運命に逆らえる。
「いいえ、貴方は優しい。その言葉を口にするのを躊躇っているのだって国の為でしょう?」
何を根拠に、そう返せば良かったのに思わず黙ってしまった。
こっちは必死に打開策を考えているというのに、彼が無意味なことばかり話しかけてくるから咄嗟に反応することができなかった。
「でも、私が聞いたって今後に何も支障はないじゃないですか。貴方の国のことです、そして私は私の国の王に謁見できる立場でもありません。このままなら」
そう、このままなら、このまま俺が何もできないままなら、きっとKIDはここで生涯を閉じてしまう。この鳥の翼がすべてもげてしまう。
死んでしまえばどんな言葉の魔法にかかったって意味はなさない。自分には治癒魔法は使えない。救命道具もない。敵国の兵である彼を城に運べる立場でもない。
彼のギリギリの蝋燭の灯りを守るのに、俺は何もできない。
「それでも、言葉にしてくださらないと言うのなら、行動で私に伝えてはくれませんか?」
「行動だと?」
「ええ」
そして、その生を閉じる準備だというように、KIDは静かに瞼を下ろした。
まさか…ここで、婚姻の儀でもある接吻をしてみろとでも言うのか
彼の行動の真意に気付いた瞬間、顔に身体中の熱が集まった。
心の中であっても、この感情に名をつけることは避けてきた。一国の王子が敵の一人に懸想するなどあってはならないことであるから。
でも
自分の膝の上に横たわる青白い顔を見つめる。
でも、これが最期であるならば、彼との接点がこれっきりであるならば、最期くらいは彼の願いを叶えてやることが同じく戦ってきた彼への誠意なのではないだろうか。彼への弔いに、この気持ちへの弔いに
「KID……」
顔を近づけると、口元にかかる息はかなり細かった。
がくんと頭に重みを感じて、兜の存在を思い出す。城の外では一度も外したこともなく、重いとも邪魔だとも思ったことのない兜が急に気になりだした。
頭から両手で外せば、カチャリと重たい音を響かせた。この身を守る兜はこんなに重かったのかと、初めて気付かされた。
人生で初めて触れた他人の唇は、その冷たい身体からは想像もできないほどに熱かった。
「ん!? ぅんんんーー!?」
思い切り頭を掴まれた。
軽く乗せたはずの唇が力づくで押さえ込まれて目を見開く。
「んんーー!!」
抗議しても力は抜けない。先程まで瀕死だった身体を容赦なく突っぱねてもピクリとも動かなかった。
何だ、これは
その時、ふっと身体から力が抜けて行くのを感じた。
そうか、尽きていたのは生命力じゃなくて魔力だったということか!
自分の身体から得体の知れない何かが、奴の身体に流れこんでいくのを感じ取る。それに比例するよう力の入り方が入れ替わっていく。
「はっ……」
やっと解放された時にはもう息が上がってしまっていた。
「ありがとうございました、スペイド」
「騙したな…」
「騙してなんてないですよ、事実私は貴方のことが好きでたまりません。冗談ではないとお伝えしたはずですが」
「違う! 魔力が尽きているのなら初めからそう言えば…!」
何もあんな茶番劇をせずとも、いくらでも魔力を供給できた。魔法使いの瀕死に魔力のことを忘れていたのは自分の落ち度だが、普段から魔力とは無縁な生活をしてきたのに咄嗟な判断などできるわけがない。
「まぁ魔力が尽きかけてたのは事実ですね、治癒魔法も魔力がないと使えないものですから」
だから自然の魔力が多い森に落っこちたというわけか。つまり、あのまま放っておいても助かったかもしれないのだ。
「魔力は急には回復しません、怪我で体力を持っていかれるのが早いか、魔力の回復が早いか五分五分だった、というところでしょうか」
平然と言いながら、KIDは立ち上がった。けれども魔力を持っていかれた俺は立ち上がることすらままならない。
「ふむ。さすがの貴方でも魔力が尽きると動けなくなるようですね、例外ではないと」
「……何が狙いだ?」
「というと?」
「俺一人殺すのにお前がわざわざ瀕死の危険を負ってまで餌になる必要はない、そもそも俺が助けないかもしれないからな」
まずい、非常にまずい。どうにか口論に持ち込みたいが、息が荒いままではいざという時何も対抗できない。
「餌ですか…」
(何かを考え込む
けれど、このぐらいは隙とは言えない。せめて逃げ出さなければ
ハートありがとうございます!可愛い、へへ
兜外すのいいよね、えへへ
19時回ってたの気付かなかった~
今回はここらへんで失礼します!見守ってくれた方ありがとうございました!!
今日中に完成させたいです!!
ありがとうございました!!
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エアスケブ(Kスペ)
初公開日: 2020年05月05日
最終更新日: 2020年05月05日
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お題:Kスペで『はじめてのキス』
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彼女の翼を捥ぐ話 第三十二話
堕天した天使とそれに付き添われている主人公のお話の三十一話目を書きます。
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