自室の扉が開く音がする。期待のためかその音はいつもより強調されているように感じた。振り返ると尚文が俯いて立っていた。厚手のコートに身をくるませ、チャックとトグルを合わせた簡単には脱げない服のはずなのに、開かないよう合わせの部分をぎゅうと握りしめている。尚文と呼ぶと面を上げこちらを伺った。冷気を入れないよう、首元には襟立てとそれを囲むようにファーのついたフードがついている。そこからちらりと赤い革製のものが覗いていた。
「準備できたか」
にこりと微笑むと尚文はこくりと頷きまた俯いてしまった。
いつもは口うるさい尚文が借りてきた猫のように静かになっている。とくに何も喋りもせず、自室を後にしオートロックがかかる音を確認する。秘め事に横槍を入れるようにやたら大きくがちゃりと聞こえた。
夜道を歩く