お題アリの掌編の作業をしようかと思ったんですけど、イマイチ興が乗らないのでシュレディンガーの監視員を付ければいいかなと(めちゃくちゃ)
というわけで
はいコピペどーん
加筆修正していきます
これフリガナ振れないから覚えておくかメモするかしないとダメだな?
今何文字かってわからんのだっけか…
んん……そろそろ詰まってきたな……
前段完成してたわ、今日はここまで! ありがとうございましたー
 ワルプルギスの夜だから工房へ来い。
 そんな因果関係の不明瞭な呼び出しを受けたのであれば即刻断るのが道理というものだが、「行った方が得ですよ。今回は。多分」などとおじいちゃんの知恵袋が言うものだから、俺は仕方なしに実家を抜け出し、夜間外出を決行した。
「いい夜ですねぇ。ヒトも少ないし」
 夜道を並んで歩きながら、おじいちゃんの知恵袋、もとい亡き我が祖父の忘れ形見という事になっているシャズがぽつりと零す。一歩進む度にふわりと揺れるボブカットの金髪の下、蕩けるような琥珀の瞳が弧を描いて細められた。紛うことなき美少年を連れての夜道は、善良ないち男子大学生にとっては非常に恐ろしい──主に職質的な意味で──のだが、時節柄もあってか電車はがら空き、駅前の通りにも人っ子一人見当たらない。
 胸を撫で下ろして吐くつもりだった安堵の息は、大きく吸った所でくしゃみへと変貌した。
「おや、花粉症ですか?」
 続け様に二発、三発と盛大にくしゃみを響かせた俺に、シャズが訊ねる。
「いや、多分鼻風邪かな。こないだから……っくし!」
「ふふ。お大事に」
 気の抜けたやりとりをしている内に、今宵の目的地へと到着する。
 都内某所の寂れたアパート、一階最奥の角部屋。外装から察するに、築三十年超のワンルームといった所だ――一見した限りでは。
 覗き穴もない玄関扉の脇に設置されているのはインターホンどころかただのチャイムだが、それすら碌な仕事をしないことを知っている俺は、直接扉をノックする。
 コンコン、と硬質な音。
ノックが出来た、ということは即ち入っても良いということだ。念の為シャズの方を窺えば、ニコリと笑って首肯された。
 そろり、と慎重にドアノブを捻る。カチャリと音を立てて開いた扉は見た目通り、何の変哲も無い重さで俺達を迎え入れる。だが、その先は最早手狭なワンルームではなかった。
 否、ワンルームと言えばワンルームなのだ。間仕切りのない大きな一部屋──その空間は、どう考えても外観より広い。隣二部屋をぶち抜きにしたくらいの広さと、建物の幅の一.五倍程の奥行がある。
 一歩足を踏み入れればそこに玄関先の土間は無く、足元は年季の入った、しかし高価そうな絨毯。壁伝いにずらりと並ぶ、中身に負けず劣らずの歴史を主張する背の高い本棚。応接用らしきこれまた年代物のローテーブルとソファの向こうには、アンティークの書斎机と揃いの椅子。
 およそ現代日本のボロアパートに有り得ない内装だが、それらをぼんやりと照らしているのは、今日に限っては電気照明でさえない。隅々に装飾の施された厳めしい書斎机の上では、何故か細い木の枝が、陶製の盆の中でパチパチと燃えていた。
 確か、空間を誤魔化している、と言っていた。同時に、本来あるべき空間との遮断と、人払いの結界も備えている、とも。
 この一室――正確には一室と半ば溶け合うように存在する空間こそが、我が師匠の工房だった。
 結界がある、実際の空間ではないと言われても、机の上で揺らめく小さな焚火には嫌でも目が行く。深皿のような盆の中で燃え盛るその灯りは辺りを煌々と照らしており、立ち上る煙も香を焚くなんて可愛いレベルではない。
「火災報知器とか大丈夫なのか、これ……?」
 ぽつりと零した疑問には、予想外にも端的な返答があった。
「問題ない」
「うわっ師匠」
 弦楽器のような声音を携え、こちらの死角、部屋の暗がりからぬっと現れた部屋の主に、俺は堪らず声を上げる。そんな様子を気にも留めず、師匠は淡々と言葉を繋いだ。
「結界は当然だが、それ以前にここの火災報知機はまともに機能していないからな」
「……いやそれは問題あるだろ」
 思わず突っ込んだ俺に一つ鼻を鳴らし、師匠はアンティーク調の椅子を無造作に引くと、遠慮のない様子で腰かけた。首元までを隠す長さの黒髪が、肩の上でさらりと揺れる。
 今日はローブもケープもロングコートも身に着けていないが、簡素なスラックスとカッターシャツは相変わらずの黒。いくら肌が生白いとは言え、灯りの届かぬ部屋の影間に溶け込むのに不都合は無いだろう。別に好きで溶け込んでいた訳ではないと思うが。
「こんばんは、ソワレ。今日は腹の内にお招きありがとう」
 家主の登場にも動じなかったシャズが、俺の陰からふわりと躍り出る。完璧な優等生の微笑みで一礼する少年に、しかし師匠は眉間の皺を深くして見せた。
「お前を入れたのは結果論だ。どうせ呼ばずとも護衛役として付いて来るだろう。こんなに派手な餓鬼を外に置いておいたら人避けの結界の意味が無くなる」
「それはどうも」
 慇懃無礼なまでのシャズの笑顔に、師匠は再び鼻を鳴らす。基本的にこの二人は仲が良くない。仲が悪いというのとは若干違う辺り、間に挟まれる身としては扱いに困る所だった。
 シャズはいつも、彼をソワレと呼ぶ。俺は彼を師匠と呼ぶが、そうでないときはヨルさんと呼ぶ。ある人は彼をノーチェと称し、またある人はナイトと言った。
 定型の名を捨て、夜の号を冠した漆黒の美丈夫。
 それが、俺の師匠である。
「そもそもマルはヴァルプルギスの夜がどういうものかご存じですか?」
 部屋の主はまあ座れと言ったきり机に齧り付いてしまったので、応接用のソファに恐る恐る腰を据えつつ、俺はシャズの問いに答える。
「いや、魔女達が集まって乱、……痴気騒ぎする、くらいしか」
 見た目は可憐な美少年のシャズに遠慮して、乱交、と言い掛けた言葉を軌道修正する。勿論それが儀式的な意味合いである事も、シャズが幼気な少年などではないことも承知の上だ。
 その他には某有名魔法少女アニメをはじめ、創作物に出てきた程度の知識しかない。そうシャズに告白すれば、「情けない」という師匠の有難いお言葉が、丸まったその背中越しに投げられた。
「『ハロウィンは仮装してお菓子を貰う日』と同程度の認識だぞ、それは」
「うっ」
 それは浅い。めちゃくちゃに浅い。
 ハロウィンほどの知名度であれば、俺も民俗学徒の端くれ、ケルトに端を発する冬至の祭り兼収穫祭であるとか、キリスト教と融合する際、及び新大陸に輸入された際に魔改造されたとか、その程度のことは諳んじる事が出来る。翻って、自分の認識がどれだけ浅いか理解出来ようというものだ。
  
「最も端的に言うなら『ハロウィンの逆』だ」
「ハロウィンの逆?」
 問い返せば、師匠はギギ、と音を立てて椅子を引いた。こちらに半身を向けて、
「ハロウィンが冬の始まりの祭りなら、勿論夏の始まりも祝わねばならない。ハロウィンが新年、寒期の始まりを祝うのに対して、べルティナあるいはケートハブンと呼ばれるのが暖期を祝う祭りだ。前者のサウィンが11月1日、後者は5月1日。ケルトや北欧ではよく祝われた節目の日だ」
 歌うように流暢な講釈を垂れ流しつつ、師匠は手元で銀色の塊を粘土のように揉み込んでいる。粘土のように、とは言えクレイシルバーではない。師匠の手中で炎をちかちかと反射しているそれは、常温の純銀塊である。では俺の師匠はそんな化け物じみた握力の持ち主なのかと言えば、そういう事でもないのだ。そもそも師匠が化け物じみているのは握力なんて可愛らしい部分ではない。
 物質の、温度変化を伴わない状態変化。錬金魔術の基礎であり、当該分野への素養を問う資金石ともされる技術だという。手遊び半分に練っているのは、造形への準備が半分、必要なものを練りこむ工程半分といった所だろう。もっとも俺にはそういった術を行使する回路が備わっていないので、全ては知識に基づく憶測に過ぎないが。
「前日は生者と死者の境が曖昧になる日だ。
「それで火を焚いてるのか」
「しかもこの匂い、白樺ですね」
 くんくんと鼻を鳴らして指摘するシャズ。
「ケルトのベルティナサバト時代から、五月祭当日のメイポールにも使われる母なる木。葉や樹液は薬として使われ、守護や浄化の魔術に適しているとされる――随分と本腰を入れましたね」 
「偶々だ。ストックがあったんでな」
 肩を竦める師匠の腹の内は分からない。
「由来は大体分かった……と、思う。でも、じゃあワルプルギスって言葉は何処から来たんだ?」
「11月1日は北欧・ケルト文化圏へのキリスト教の流入にあたり、万聖節に加工された。では5月1日はどうか。それが聖ワルプルガの日だ」
「おっ、ワルプルギスっぽい響き」
「聖ワルプルガという尼僧は、ゲルマン人への宣教の功績を買われて列聖された人物だ。彼女の墓所からは治癒の効能を持つ油が滲み出たともされている」
 師匠の練っている銀は既に、粘性の強い液体、あるいは緩いスライムと表現した方が適切だ。
 師匠は片手で器用に銀を保持したまま、部屋の片隅からオーブン板程の鉄板を持ち出して来た。
「型がねがあるのか」
「昔借金のカタにふんだくったものだがな。そこそこ腕の良い錬金術師だったから、効力は保証するぞ」
「お前も借金のカタかぁ……」
 他人事ではない境遇に、思わず無機物に共感してしまった。
 
 師匠の掌からとろりと溶け出したそれは、最早殆ど液体だった。炎を反射して輝く銀を、師匠はあまり慎重とは言えない手付きで型へと注ぎ込んでいく。妙に思い切りの良い動きをしている割には一滴も垂らしたりしないのは、大方術の方で制御をしているせいだろう。それも、おそろしく緻密な手法で、である。
 十ほどの窪みにそれぞれ銀を流し入れると、師匠は手中に残った銀を適当な器へと残さず注ぐ。気分の問題か、水気を切るように一つ手を振ると、師匠はそのまま無造作に指を鳴らした。
 パチンという響きに合わせ、寸前まで揺れていた液面が一切の動きを止めた。
 本来のプロセスとしては、何も指など鳴らす必要は無いのだという。大仰な魔方陣や呪文もそうだ。ただ、真に必要な手順を踏む上で、明確なスイッチがあった方が手っ取り早く正確な術の行使が行えるらしい。
 何事にも端境を作ってやった方がやり易い──師匠は以前、そんな風に言っていた。
 個体に戻った銀の小片を枠から取り出すと、師匠はこれまた部屋の隅の方から、
「ベルカナですか。エルダールーンとして司るのは生命力、再生、治癒、女神、白樺……治癒神はケルトのセクアナも北欧のエイルも女神ですし、白樺の浄化作用は重ねての効用。加えて素地は魔除けの銀で、精製は聖ワルプルガの祭日というのは、なんともはや分かりやすい」
「前夜である事も噛ませているぞ。死者と生者の境が曖昧であるのなら、向こうに行きかけているものを引き戻すのにも誤魔化しが利く」
「そんなめちゃくちゃな理論があるかよ……」
 ワルプルギスの夜の混乱に乗じた、誘拐紛いの火事場泥棒である。
「しかしセット売り通販顔負けの全部盛りですね。悪趣味です」
「要するに魔術なんてものはこじつけだ。これまで多くの人間が信仰してきたという歴史に基づく、文化という名の力、精神的な理。その強度が強いだけ効力も強くなる。……今回は、何せ相手が相手だからな」
「ふむ。まあこんな所か」
 ぼそりと呟くと
「持って行け」
「え、くれるのか?」
「風邪気味だとか抜かしていただろう。弱ったところに最近流行りのアレでも持ち込まれたら我々も困る。聞いたか? 犬やら猫やらにも感染の可能性があるそうだ」
 相手が相手、とはそういう事であったらしい。一方、引き合いに出されたシェズは不服げだ。
「生憎ですが、僕をそこらの犬畜生と一緒にしないで貰いたいですね。少なくとも、貴方と同程度には強いですよ」
「どうだか」「まあ、どうあれ俺は絶対に死なないが、病にかかれば普通に苦しい。伝染されるのは真っ平御免だ。余計なものを持ってくるんじゃないぞ」
「はぁ。ありがとうございます……?」
 だったら夜中に呼び出さないで欲しいのだが。
「土産に良い呪文を教えてやろう。この時期によく効く、とっておきだ」
「はい?」
 咄嗟に聞き返した先、にやりと笑う師匠に、自らの失策を悟る。
 人を食ったような笑みを浮かべて、師匠はそっと囁いた。
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47:07
ゆき@万年筆文芸部
凄い……推しの先生の原稿中の様子を見れる……最高です…………ワルプルギスの夜、勉強になります……
47:57
鈴久 育
閲覧?視聴?ありがとうございますー!
48:48
ゆき@万年筆文芸部
閲覧と視聴ですね!!(笑)自分がやってるの見られないので、すーさんがやってるのめちゃくちゃ面白いです!!!言葉がつむがれるの、感動!!!
50:40
鈴久 育
なんかこう、反応いただくまで見てくれてる方がいるかいないかわからないんですけど、見られてるかもしれないから作業しなきゃって気分になれていいですねこれww
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初公開日: 2020年04月28日
最終更新日: 2020年04月28日
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