「それ、オレだけでいいからな!」のアレの話
「ラハ!」
「ん、なんだ……よ……」
振り返った先には、いつもとは違う装いの冒険者が立っていた。ぽかんと開いた口を閉じるのも忘れて、まじまじと凝視してしまう。
「じゃあーん!」
彼女がその場でくるくると一回転する。丈が長めのスカートがふわりと浮き上がり、内側に隠れていた膝がフリル越しに顔を見せる。ものすごく可愛くて、つまりは──オレの好みどストライク。
「ね、どう? 似合う?」
可愛い。すげー似合う。そう言ってやれば喜ぶだろうに、とっさに口について出たのは全く違う言葉だった。
「──そ、それ! オレの前以外で着るの禁止な!」
「え、なんで!?」
「なんでも!」
質問の内容にかすりもしない答えに冒険者が目を丸くした。なんでなんで、と迫ってくる動きでスカートがまた空気に押し上げられる。柔らかそうな生足が再び目に入る。とてつもなく心臓に悪い。
禁止と口にしてしまったせいで、引くに引けなくなった。前言撤回して、「似合う」と褒め言葉をひとつ言うだけで楽になる。頭では分かっているのに、どうしてか言えないオレに苛立ちすら覚える。
葛藤で心がもみくちゃになっているうちに、冒険者の明るかった表情がみるみるうちにしおれていく。
「……似合って、ない?」
「ちが……そ、そうじゃねーって!」
「じゃあ、なんで?」
冒険者を腕の中に閉じ込めると、首元からいつもと違う匂いがした。香水もつけているようだ。
オレに可愛いと思ってもらおうと努力する姿がいじらしい。
「……そのカッコしてるあんた、オレ以外に見せたくねーから、ダメ」
「友達にね、ラハが好きそうな服教えてもらったんだあ」
「友達……って、オレの知ってるヤツ?」
「どうだろ、ここの調査に参加したことあったかなあ……」
彼女の口から出てきた名前は、よりにもよってミコッテの男の名前だった。サンシーカーらしくない名前だから、多分ムーンキーパーだ。サンシーカーじゃないだけマシだが、だからといって男なことには変わりない。
「……あんた、そのカッコ、そいつに見せたのか」
「へ? ううん、見せてないよ?」
「次からはオレに聞けよ!」
「はあい」
そろそろおしまい!