何にしようか悩むけれど思いつくまま打つ
外から聞こえてくる工事の音で目が覚める。冷たいフローリングから顔を挙げれば、廊下。なんとか自宅には帰って来たものの、そこで力尽きていつの間にか寝てしまっていたらしい。春用に出したせっかくのトレンチコートがもうしわくちゃだ。
どうせもう直ぐ春は終わってしまうのだから、諦めて今季の出番は終わりにしてクリーニングに出してしまおうか。ぼんやり考えていると、コツコツと廊下を歩く音がドアの向こうから聞こえてくる。その足音が止まると、部屋の中からインターホンが鳴った。
うちへの客ららしい。そう思うと同時に、鍵穴が回り、扉は開いた。
慌てて立ち上がったが、廊下に座り込んでいたところは見られてしまったようだ。
「やーっぱりな」
「何それ」
「はいはい、あとは全部俺がやっから、お前はまず靴を脱げ」
「あ」
履きっぱなしだったことにも気が付いていなかった。もうこうなれば取り繕う事も馬鹿らしいので、オレは素直に彼の指示に従うことにした。
じゃあっと、洗濯機に水が注ぎこまれる音、それからゴミ袋を取り出す音、締めっぱなしの窓を開ける音。
何もかもが平和で、うるさいと思ったはずの全ての音が急に心地よくなるのだから不思議だった。
「こら、靴を脱ぎながら寝るなー!」
「寝てないよ……」
「それがもう寝てるって言ってんの。もーちょっとだから、ほら」
「うん……」
おチビちゃんが悪いんだよ。オレを甘やかすから。
そう言ったら、きっとまたバカレンと頭をはたかれてしまうだろう。そういうやり取りもオレの幸せのひとつなのだと、彼は知らない。
『日常の音楽』
※※※
なんっも進まねぇ……
パソコンの前に座って早3時間。せっかく早起きをして朝ご飯を食べて、カフェラテとお菓子まで用意したというのに。
翔がもう1年ほど続けているファッション誌の連載企画の記事の締め切りはもう明後日に迫ってたが、第14回とまで打って、それから何か参考になるものは無いかとスマホを開いてSNSを見始めて、ファッションの通販サイトを巡回した、それから返しそびれていたメールなどを返信し、そうしていつの間にか時間が過ぎていた。
昔からそうだ。自分には集中力が無い。早乙女学園時代も、Sクラスといえど勉学の方の成績は音也とどっこいどっこいだった。日向先生に迷惑はかけたくないと思いなんとかトキヤに教えてもらいながらやっていた。そういえば、その時はいつも授業をサボっていたレンも一緒にやっていたっけ。あいつはサボるときはサボるけど、一度やり始めると集中力はすげぇんだよなぁ。そんなことを考えていると、通じ合ったようにスマホが震えて、画面にレンからの着信が写った。もしかして、運命?
「おチビ?オレだけど」
「おお、レン。マジで丁度いいとこにかけてくれた」
「ん?どうしたの?」
「お前いま暇か?」
「……」
「よし、その沈黙は暇なんだな」
「変な事頼むつもりなら切るよ」
「変な事じゃねーって。仕事のこと。ちょっと相談したいからさ。昼飯でも食いにいかねーか」
「オレもそのつもりで電話したからいいけど……」
「じゃあ決まり!俺がおごるからよ!あんま高いとこは勘弁だけど…あ、お洒落してきてくれ!あ、カジュアルめな方がいい…とか、あんま俺は言わねぇ方がいいのか…?」
「ん?何の話?」
どうせレンと飯を食えるなら、その後は街に出てレンの服を俺がコーディネートするのも楽しそうだ。それなら最初にレンが着てくる服は、俺の意見が無い方が面白いかもしれない。夏になったら、きっとみんな新しい服が欲しくなる。俺とレンじゃ選ぶ服の方向性が違うし、俺が一人で書き続けていては生まれなかった意外性が、読者の刺激にもなるかもしれない。
「おチビちゃん?」
「いや、なんかお前のこと考えてたらちょっと仕事進みそうだなって」
「まだ昼ご飯しか決まってないのに?」
「おう、やっぱお前すげーよ」
「なにそれ」
「お前はわかんなくていーの」
※※※
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休憩がてら書く
初公開日: 2020年04月28日
最終更新日: 2020年04月30日
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