シャイニング事務所のメンバー同士が組んで、お互いをディレクションする企画はとても好評で。
とうとうボクのソロライブが企画されることになった、ディレクションはなっつん。
彼はとても素直で、ボクのやりたいことをよく聞き進めるのを手伝ってくれた。
ボクもアイドルだから、好きなことを出来るとなれば。
あれこれと、どんどん欲張りになっていく。
…でも、その一方で。
本当に自分のやるべきことは、これでいいのかと。
変な不信感に、足を取られそうになることがある。
だって、ボクには償いきれない罪があって。
いまだに、それがたまに口を開けて真っ黒な闇を見せつけてくる。
仕事が楽しければ楽しいほど、充実していればしているほど。
ふとした時にソレは襲ってきて、でも楽しそうに企画の話をするなっつんに言えるわけもなく。
どこか引きつった笑みが増えていった。
ああ、だめだ。
もっと、もっと楽しまなきゃ。
もっと、明るく笑わなきゃ。
そう思うほど、仕事のスイッチが切れたあとの揺り戻しが酷い。
あとはライブの企画をつめるだけなのに…。
帰り道、家に向かう車の中でため息をつく。
マンションについても、車から出る気力が起きずに駐車場でとどまっていると。
ふいにスマホが鳴り出した。
マナーモードにするのを忘れるほど、集中力をかいていたらしい。
慌ててみると、ギクリとする名前。
取らないで放っておいても、いいことないのはわかってるから。
深呼吸をして、通話に切り替えた。
「おう」
ぶっきらぼうな彼の声に、なんだか安心する。
「ばんわ~、ランランから電話なんて珍しくない?」
極力『いつも通り』を装って喋る。
「あぁ?お前、おれにはそーいうのいらねーって言ってんだろ」
案の定、全部お見通しの彼は不機嫌そうに続ける。
「今、おまえんちの前にいる。何時に戻ってくんだよ」
ガサガサとビニール袋の音がするので、何か買ってきてるんだろう。
「うん、もう駐車場にいるから。すぐ行くね」
声が震えないように、必死に取り繕ってそれだけ言うと答えを待たずに通話を切った。
改めてスマホを見ると、ランランからのメッセ-ジが入っている。
「那月にきいた、これから行く」
参ったな、なっつんにもバレバレだったか。
思えば、彼も口には出さないけど聡い子だったっけ。
ボクが自分を許せなくても、こうやって手を差し伸べてくれる仲間がいる限り。
アイドルというキラキラの看板を背負って、走っていける。
寿嶺二の輪郭は、まだほころびていない。
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