アレン達一行は、リッピのスマホが感知した災厄の種がある北方の国を目指し、歩みを進めていた。北に進むにつれて、青々と茂っていた木々も華やかな色合いの花々も姿を失くし、辺り一面が白いものに覆われていく。
「むー………この雪はどうにかならないかしら…」
一歩一歩進む度に雪に足を取られ、体力が消耗していく。最初は喋る元気があったカナだったが、今では声に覇気が無くなっている。
「さすがのカナでもこの大自然さまの猛威には勝てないようだな」
カナの隣を並んで歩くゼファーはそんなカナを見てにやりと笑みを浮かべている。
「ゼファーはなんでそんなに元気なの?」
先程からモンスターと遭遇し、まだ戦闘では頼りないカナを守るため前衛で技を繰り出したり、前衛のサラが100%の力を発揮できるようにその場の状況で後衛に回り効果的な術を放ったりと、常に敵と仲間の様子を見てせわしなく動いている。そのようなことがあるにも関わらず、息ひとつ上がらず、疲れている様子すら見せず、いきいきとカナをからかうほどの元気を持ち合わせていることに疑問を思いカナはゼファーに尋ねた。
「なんでって、そりゃ…」
御使いだからな、とゼファーは思わず言いかけたがすぐに口をつぐんだ。 ‘‘御使い’’それは天界の兵である。人を護る力を得るためゼファーとアレンは何年もの間、つらく長い訓練をこなしてきた。そのため身体的能力は通常の人間達よりも優れているし、練り上げた魔力を翼へと形を変えその身に纏うことが出来る。しかし、人智を超えた、この力を、‘‘御使い’’の存在を、地上の人間に知られてはならない。ゼファーは言いかけた言葉を誤魔化すかのようにひとつ咳払いをした。
「そりゃ…鍛えているからな」
「そうよね。ゼファー、毎日腕立て伏せとか腹筋とかトレーニングやっているものね。私も筋トレ始めようかしら」
言い訳にするにはちょっと無理があったか…?と思ったゼファーだったが素直な性格のカナは疑いの様子すら見せずに信じたようだ。
カナは己の右上腕にふんっと声を発しながら力を込めたが、その場所にはこぶという程の筋肉の盛り上がりは無い。
とりあえず1時間経ったので中断します